自社にとっての、戦略上のお客様とはいったい、どういう人なのか?

自社にとっての、戦略上のお客様とはいったい、どういう人なのか?

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事業において「誰を顧客とするか?」は戦略上、もっとも大事な命題です。

飲食店に置き換えると、誰が顧客かわからなければ、どんな料理を作って良いかわからないし、どんなサービスをすべきか、お店の雰囲気づくりも、価格設定も、広告の出し方も、もちろんホームページも、どうすれば良いか分かりません。

顧客からスタートしないと事業は成り立たないのです。

上記の記事では、顧客ターゲットの選定の仕方について、やや広い視点から書きましたが、顧客モデルを具体的に深めるには、以下、3つの質問に答えると見えてくると思います。

目次

顧客を深堀りする3つの質問

❶顧客は、どんな場面で「胸をかきむしるほどの痛み」を感じているか?

❷どんなことに、夜も眠れないほど悩み・不安を感じているか?

❸その「怒り・悩み・不安」をユーザーが感じる場面を五感を使って描写すると・・・?

※この3つの質問のベースは私のオリジナルではなく、神田昌典氏の手法を参考にしています。

特に①を、どれだけ具体的にイメージできるかで、顧客が抱える「問題」の本質を認識しやすくなります。

1.どんな場面で「胸をかきむしるほどの痛み」を感じているか?

飲食店など美味しいものを食べたい、という人の痛みに直結しない事業の場合は、考えるのが難しいかもしれません。

提供しているのは、人の痛みや悩みを解決する商品ではなく、満足や快楽だからです。

ですが、満足や快楽を求める背景には、その人にしか分からない痛みがあるかもしれません。

レストランに来るお客さんの「痛み」とは?

以前、店長を勤めていたイタリア料理店では「痛み」を持ったお客様がたくさん来てくれていました。

80代女性のどうしようもない胸の痛み

たとえば、いつも一人でいらっしゃる当時80代の女性。

その方は15年ほど前に、ご主人を病気で亡くされていました。

「マンハッタン」というウイスキーベースのカクテルを必ず注文するので「お好きなんですね」と声をかけると、「主人がいつも飲ませてくれたのよ」と話してくれたのです。

ご主人を亡くされてからずっと一人暮らしで、普段は人と会話する機会も少なく、来店されると私たちスタッフ相手に、ご主人との思い出話をよく聞かせてくれました。

そのご婦人は、マンハッタンを飲むことでご主人を偲んでおられたのです。

思い出が楽しいものであればあるほど、二度と返ってこない「痛み」もまた深いものがあるでしょう。

故人を偲び、人と共有することで、その「痛み」は束の間ではありますが、和らぐのです。

40代夫婦の人には決して言えない痛み

もうひとつ、事例としてご紹介します。

当時40代のご夫婦でした。

シャンパーニュが大好きな奥様と、無口なご主人で、子供さんはおられません。

ご主人は前菜以外、食べる料理が決まっていました。

週に一度はお越しいただいていたのですが、必ず、ペペロンチーノとミラノ風カツレツを召し上がるのです。

しかしある時から、ぱったりと来られなくなりました。

それから2年ほど経った頃、奥様だけがふらっと来て、ご主人とは離婚したのだと聞かされました。

そして驚いたことに、ご主人からは当時DVを受けていたそうです。

気分にムラがあって、優しい時は優しかったようですが、何か気に食わないことがあると、気が済むまで奥様にあたるんだとか。

そんな風には全く、見えなかったし、単純に仲の良いご夫婦だと思っていました。

奥様にとっては、レストランに来る時だけが唯一といって良いほど楽しい時間だったと言うのです。

思い返してみれば、時々、シャンパンを飲む奥様の顔がこわばって見えました。

非日常的なレストランの空間から、日常へ戻ることの恐怖がそうさせていたのかもしれません。

どうしても顧客の「痛み」が分からない場合

もし、ご自身の事業活動において、顧客が「胸をかきむしるほどの痛み」がどんなものなのかわからない時は、下記の記事をご覧になってみてください。

厳密には、戦略ターゲットではなく、マーケット全体が抱える「痛み」や「悩み」を把握する手法ですが参考になるかもしれません。

2.どんなことに、夜も眠れないほど悩み・不安を感じているか?

顧客の「痛み」が見えてくると、悩みや不安も連鎖して見えてきます。

この質問は、さらに具体的に顧客の立場に立つために、想像力を駆使して、深く掘り下げる質問です。

前述した80代女性のケースでいえば、ご主人を亡くされて、決して戻ってこない日常と分かっていても、あの時に戻りたいと思い悩むこともあれば、この先、誰にも看取られずに死ぬのだろうか、死んだらこの家はどうなるのだろうか・・・と不安を抱えることもあるでしょう。

40代夫婦の奥様のケースなら、この先もずっと、添い遂げるのだろうか、また機嫌が悪くなったらどうしよう、もし子供が出来たらどうなるんだろう・・・。

思い出に浸らなくては淋しすぎる「痛み」。

人の機嫌にいつも怯えなくてはいけない「痛み」。

マーケティングにおいて、顧客の立場に立つとは、その「痛み」を自分のことのように捉えることなのです。

その「怒り・悩み・不安」をユーザーが感じる場面を五感を使って描写すると・・・?

顧客の「痛み」を理解し、悩みや不安を自分の事のように感じてくると、顧客が共感する言葉がつかえるようになります。

顧客に響く、言葉が出てくるのです。

前述した40代の夫婦に対して、悔恨も込めて、今ならどんなサービスができたか、考えてみましょう。

「痛み」の焦点を合わせる

当時はご主人が家庭内で暴力をふるっていたことなんて知りもしなかったので、趣味の話など、奥様を置き去りにして会話をしてしまったことがありました。

というのは、奥様が言うには、いつも無口なご主人が、私と話をする時だけは楽しそうにすると聞いていたからです。

それは確かに、いくらか奥様の「痛み」を和らげることになったかもしれません。

ですが、もし、奥様の「痛み」をほんとうに理解していたなら、もっと奥様に話をふり、3人で会話するようにしたでしょう。

たとえDVを受けていても、奥様はご主人を心底、嫌ってるわけではなかったのです。

レストランで過ごす、穏やかな夫婦の時間を大切にしておられました。

痛みを理解してるからこそ、描ける言葉

当時は、来店を促すためメールも送っていました。

一部の常連様には、一通一通、内容を変えて送ったり、手紙を書いたりしました。

そのご夫婦には、ご主人が1980年代の洋楽がお好きだったので、ビートルズの話題に触れながら、旬の食材の知らせなどしていた記憶があります。

たとえば結びの文章はこんな感じでした。

「私もお話を聞いているうちにビートルズファンになってしまいました。またビートルズの事、色々教えてください!」

今なら、こんな風に結ぶでしょう。

「先日、ワインの試飲会に行ったら、奥様の好きそうな、香りが華やかで、優しい泡立ちのシャンパーニュを見つけました!お誕生日のお祝いにご馳走しますので、3人で乾杯しませんか?」

「痛み」を知ったからといって、ご夫婦の関係を改善できるとは思っていません。

ですが、奥様が「痛み」から解放される時間とその質は、もっとよくできたはずです。

その、言葉の使い方だけで。

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