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「検索回数ゼロ」は、需要ゼロではありません。
新しいサービスページや記事を作る前に、キーワードプランナー(Google広告に付いている、言葉ごとの検索回数を調べる無料ツール)で需要を調べる。数字が出てこなかったから、そのテーマはやめておく。
──この判断、僕も長くやってきましたし、今も基本は正しいと思っています。ただ、僕自身、キーワードプランナーには出てこないのに、実際には相談や問い合わせにつながるテーマを現場で何度も見てきました。
そして今、その理由がはっきりしてきています。お客さんが検索窓ではなく、AIに向かってその質問をするようになったからです。
2026年8月、この「見えない需要」を測る実務手順を海外の実務家が公開しました。先に結論を言うと、手順の中核になる測定ツールは日本ではまだ使えません。
だからこの記事では、報告の中身に加えて、ツール無しでできる日本のスモールビジネス向けの現実解を4つ、そして推定の数字を信じすぎないための注意点まで書きます。
検索需要とプロンプト需要は、別の需要だった


報告したのは、AIコード編集ツールで知られるCursor社のオーガニックグロース責任者、アダム・タンゲイさんです。元Webflowのマーケティング責任者でもある人で、Search Engine Landに2026年8月3日、「Keyword research meets prompt research」という記事を公開しました。中核の主張はこうです(原文は英語・訳は僕)。
お客さんがChatGPTやPerplexity、GoogleのAIモードを開いて、悩みを文章のまま打ち込むとき、その質問は、従来のGoogle検索に打ち込む短い言葉とはまるで別物になることが多い。
何が言いたいかというと、同じ人が同じ悩みを抱えていても、検索窓とAIでは使う言葉がまるで違うということです。
実際、マーケティングツール大手Semrushの調査では、通常の検索は平均4.2語なのに対して、ChatGPTへのプロンプト(AIに打ち込む質問文)は平均23語と報告されています。5倍以上の長さ。単語の組み合わせではなく、事情ごと文章で相談しているわけです。
タンゲイさんの手順は、テーマごとに「検索の回数」と「AIへの質問量の推定値」を並べて、4つに分類するというものです。検索は強いがAIでは聞かれないテーマ、その逆、両方強い、両方弱い。
記事の中では、検索では月におよそ5,000回なのに、AIへの質問の推定は約25万回という逆転テーマの実例も示されています。ただしこの数字は、匿名化されたトピック1件の推定値です。「AIの需要は検索の50倍ある」という一般法則ではないので、そこは割り引いて読んでください。
ただし、測定ツールは日本ではまだ使えない
タンゲイさんの手順は、Profound社の「Prompt Volumes」という機能が前提です。消費者パネルから集めた実際のAIとの会話データ、累計15億件超をもとに、テーマごとの質問量を推定するサービスです。ところが、公式に記載された対応国10カ国に、日本は入っていません。
つまりこれは海外で先行している話であって、日本はこれからです。ここで「じゃあ関係ない」と閉じるのはもったいない。ツールの上陸を待たなくても、プロンプト需要の当たりをつける方法はあります。
ツール無しでできる4つの現実解


海外のマーケティング会社Launchcodexが2026年5月7日に公開した記事が、ツール無しの推定方法を整理しています。日本のスモールビジネスがそのまま使える形に直して紹介します。
1. 手動プロンプト観測(月2時間)
お客さんが聞きそうな質問を5〜10本決めて、月に1回、ChatGPT・Perplexity・Geminiに実際に打ち込みます。自社の名前が出るか、どんな文脈で出るか、代わりにどの競合が出るかを記録する。
1回では何も分かりませんが、3〜4ヶ月続けると傾向が見えてきます。かかるのは月2時間だけです。
2. アクセス解析でAI経由の流入を分ける
アクセス解析ツールのGA4で、参照元にchat.openai.comやperplexity.aiなどを指定してフィルターを作ると、AI経由でホームページに来た人を分けて数えられます。推定ではなく、すでに来ている需要の実測です。
3. 問い合わせフォームに一問足す
「何でこのお店を知りましたか?」の選択肢に「ChatGPTなどのAI」を足す。コストはゼロで、これも実測です。僕は4つの中で、費用対効果はこれが最強だと思っています。
4. 検索回数から概算する
検索回数に業種ごとのAI利用率を掛けて、当たりをつける方法です。ただしこの利用率は記事の著者が計画用に置いた推定値で、実測ではありません。社内で優先順位を話すための目安に留めてください。
推定の数字を信じすぎない
ここまで書いておいて、ですが、プロンプト需要の数字はどれも推定です。作った本人のタンゲイさん自身が、プロンプトボリュームは「比較のための方向性データ」であって、絶対値に頼るべきではないと留保をつけています。
もう1つ、押さえておきたい実験があります。SparkToroのランド・フィッシュキンさんが2026年1月28日に公開したもので、600人が12種類の質問を計2,961回AIに実行したところ、同じブランドの組み合わせが返ってくる確率は100分の1未満でした。
AIの答えは、それくらい毎回揺れる。この実験はAIがブランドをすすめる答えの一貫性を調べたもので、「AIの計測すべてが無意味」という話ではありませんが、1回や2回試した結果で一喜一憂する意味はない、とは言えます。
需要は、数字になる前にお客さんの言葉に出る
キーワードプランナーだけを見て「需要がない」と判断するのは、固定電話の着信履歴だけを見て「最近、問い合わせが減ったなあ」と言っているようなものです。お客さんは問い合わせをやめたわけではなく、連絡の手段がLINEに移っただけ。着信履歴には、もうその動きは映りません。
僕のクライアントに、愛媛県宇和島市で海面養殖の魚を通販している、こもこもShopの福島さんがいます。ホームページを公開して最初の1〜2週間は特に動きがなく、Instagramと併用した1ヶ月目あたりから、問い合わせの中身が変わりはじめました。
「魚の3枚卸はできますか?」「年末年始も営業していますか」といった、買う前提の具体的な質問が増えたんです。企業理念のページを公開したあとは「考え方に共感しました」という指名買いが生まれて、価格競争から抜けました。
この「3枚卸はできますか?」という言葉、よく見てください。キーワードプランナーにはまず出てこない言葉です。でも、AIへの質問文とほとんど同じ形をしています。
「養殖の魚を3枚卸で送ってくれる通販はありますか」とAIに聞く人は、これから確実に増えていく。お客さんが実際に使った質問の言葉を記録しておくことが、ツールのいらない、最強のプロンプト需要調査です。
まとめ
- 検索の回数とAIへの質問量は、別の需要信号。キーワードプランナーに出ない=需要ゼロ、ではない(アダム・タンゲイさんの報告)
- 測定ツールは海外先行で、日本はまだ対象外。現実解は、手動観測・アクセス解析・フォームの一問・概算の4つ
- どの数字も推定。いちばん確かな一次データは、お客さんが実際に使った質問の言葉
福岡県久留米市で布団・ベビー用品レンタルを営む丸よしの井ノ口さんも、ホームページ公開後、問い合わせが「いくらですか?」から「いついつから使いたいのですが借りられますか?」へ変わっていきました。最初の1〜2ヶ月は変化がなく、3ヶ月目から増えはじめて、9ヶ月で問い合わせは体感で2〜3倍。
問い合わせの「言葉」が先に変わって、数字はあとから付いてくる。この順番は、どの業種でも同じです。
自分のお客さんがどんな言葉で探しているのか、そこから洗い出したい方へ。ターゲットと商品・サービスを入力すると、見込み客が検索する言葉を悩み・意図ベースで優先度付きに洗い出す無料ツールを配っています。公式LINEに登録して「キーワード」と送ってください。
出典
- Search Engine Land「Keyword research meets prompt research」アダム・タンゲイさん(2026年8月3日)
- Semrush調査(ChatGPTのプロンプト平均23語・通常検索平均4.2語)
- Profound「Prompt Volumes」機能ページ(対応国10カ国に日本の記載なし)
- Launchcodex「LLM search volume」(2026年5月7日)
- SparkToro「AIs are highly inconsistent when recommending brands」ランド・フィッシュキンさん(2026年1月28日)

