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競争戦略、という言葉はマイケル・ポーター氏が世界ではじめて提唱しました。
ポーター氏はハーバード大学経営大学院教授。
その論旨は、戦略の本質について書かれているから勉強するようにと恩師に言われ、学び始めました。
競争。
というたった一つの言葉だけで、ポーター氏は膨大な論文を書いています。
時に矛盾していると批判されることもありますが、同じ事象を正面から書いているか、裏側から書いているかという違いで、常に本質を語っている。
競争とは何か?
競争とは、誰かを打ちまかしたり、どんぐりの背比べしたりするようなものではありません。
それはレースであり、正しい競争は、独自の価値を生み出せるかどうかだといいます。
ナンバーワンを目指すのではなく、最高を目指すのでもなく、唯一無二のユニークな存在を目指す。
価値を創造すること。
それが正しい競争の在り方だと説いているのです。
戦略の中の競争
ポーター氏は戦略をどのように定義しているかというと、こうです。
競争にさらされた組織がどうすれば卓越した業績を実現できるのか、その方法を説明する。
そもそも競争がなければ、戦略は必要ではありません。
ただほとんどの場合、競争=最高を目指して切磋琢磨することと理解している為に、戦略は常に他者との争いの中にあり、血みどろの戦いとなってしまう。
競争戦略は戦争とは違う。
孫氏の言葉を借りれば、戦わずして勝つこと。
これが競争の本質だとポーター氏は言っているのだと思います。
最高なるものは存在しない
業界トップを目指す、最高を目指す。
勝利をあげるには敵を無力化するか、破壊するしかありません。
ビジネスは戦争と違い、相手を叩き潰さなくても勝利を得ることができます。
マーケットには様々なニーズがあり、満たすべきニーズは無数にあるからです。
ある人にとっての最高のレストランは、とにかく料理が美味しいことかもしれませんが、別の人によっては、料理が早く出てくる方が良い、ということもあるでしょう。
料理よりもサービスの心地よさに最高を求める人だっています。
だから、最高を追い求めるのはナンセンスだということです。
独自性を目指す競争
ポーター氏のいう戦略的競争は、最高を目指す競争ではなく、独自性を目指す競争です。
この競争では、価値がすべて。
生み出す価値の独自性と、それを生み出す方法がものをいう。
マクドナルドの藤田田さんが、「味」にこだわる料理業界の中で、「スピード」に価値を持たせたのがまさに正しい競争です。
藤田氏は、提供スピードだけではなく、マックシェイクは母乳を吸うスピードを演出することで爆発ヒットさせました。
最高を目指す競争が、ナンバーワンになることなら、独自性を目指す競争では収益を高めることに重きを置く。
前者はマーケットのシェア獲得重視だが、後者は利益重視。
前者は模倣による競争になり、後者はイノベーションによる競争になる。
独自性を目指す競争は、たった一人が勝者になるのではありません。
複数の勝者が、互いの栄光をたたえ合うことができます。
肝心なのは、利益を上げること
正しい競争戦略が目指すところは、利益を上げることに尽きます。
競争を狭く捉えすぎると、すぐに敵対関係を築いてしまいますが、競争の主眼はライバルを負かすことではなく、売り上げやシェアを奪うことでもなく、利益を上げることなのです。
利益をめぐる競争は、ライバルとの関係だけではなく、できるだけ安く買いたい顧客とも対立し、できるだけ高く売りたい仕入れ先とも対立します。
また、居酒屋とコンビニのように違う業態でも代替ニーズが発生すれば対立する。
それから今後参入してくるかもしれない企業とも競い合います。
これら5つの競争要因(既存の競合企業同士の競争、買い手の交渉力、サプライヤーの交渉力、代替品の脅威、新規参入者の脅威)が業界構造を決定するとポーター氏はまとめていて、それが有名な「ファイブ・フォース」というフレームワークです。
これが業界の収益性を決定するため、業界ごとに得られる収益は当然、変わってくるということです。
独自性を目指し、利益を上げる
飲食店においては、料理もサービスも雰囲気も、独自性があるかどうかが大事なのです。
正しい競争とは、独自性を目指す競争であり、求めるところはいたずらに売り上げをあげたり、シェアを奪うことではなく、シンプルに利益を上げること。
それに尽きる。
ただ、その利益は、業界によって、前後します。
ポーター氏はそうした中で、業界の収益性を決定づける<5つの競争要因>というフレームワークを説いてくれました。
これが結構難しいのですが、理解を深めていきたいと思います。
5つの競争要因
利益をめぐる競争には、5つの要因があります。
- 既存企業同士の競争
- サプライヤー(仕入れ)の交渉力
- 買い手(顧客)の交渉力
- 代替品や代替サービスの脅威
- 新規参入者の脅威
このフレームワークから分かることは、業界の収益性です。
どれだけの収益が取れるかということが、選択した業界によって、ある程度決まっているという事実なんです。
いま、業界で何が起きているのか?
業界の現状を知る最も有効な手立てとして、5つの競争要因は活用できます。
まずは、それぞれの競争要因をまとめてみますね。
既存企業同士の競争
既存企業同士の競争は激しければ激しいほど、収益性は低下します。
値下げ競争に陥りがちになるだけでなく、宣伝合戦、新製品の投入、サービスの充実など、コストがかさんで価値が散逸する。
値下げするということは、言い換えると、業界の生み出した価値を買い手に流してしまうことです。
サプライヤーの交渉力
サプライヤー(仕入れ業者)の立場からすれば、できるだけ高く販売したいと考えます。
メーカーであれば、一生懸命作った製品を安く売ることは、自分たちの価値を下げてしまう。
強力なサプライヤーは高い価格を請求したり、有利な条件を要求したりすることで、業界の収益性を下げる。
買い手の交渉力
買い手(個客)としては当然、安くで買いたいと思うのが人情です。
強力な買い手は、値下げ圧力をかけたり、製品・サービスの向上を求めたりすることで、価値の取り分を増やそうとする。
代替品や代替サービスの脅威
業界の製品と同じニーズを異なる方法で満たす製品・サービスが現れることも多々あります。
飲食店にとってのコンビニがそれです。
こうした代替品や代替サービスは、業界の収益性に上限をつくる。
新規参入者の脅威
マーケットに新たに入り込んでくる新規参入者は、新たな生産能力や価値をもたらそうとシェアを奪いに来ます。
そのため、参入障壁が高くない場合、価格に上限をつくらせてしまう。
また、顧客をつなぎとめるために、コストをかけることも求められる。
飲食業界を事例として、5つの競争要因で分析する
飲食業界を上記を参考に分析してみます。
既存企業同士の競争
飲食店の市場規模は、2017年のデータで14 兆 1,581 億円。
それに対し、国内の飲食店は67万店。
ということは、1店舗あたり2,113万の年間売上です。
こう考えると、年収1千万を稼ごうと思っても難しいですね。
サプライヤー(仕入れ)の交渉力
デフレで食材も底値まで落ちました。
しかし今は、徐々に上がり始めています。
これは冷静に考えると、本来の価値を取り戻しつつあると思いますが、低価格で仕入れて原価設定している飲食店には頭の痛い問題。
今後は資源不足などでますます上り傾向でしょう。
買い手(顧客)の交渉力
飲食店の過度な値下げ競争は未だ、収束していません。
飲食店の仕事は複雑多岐にわたり、たいへんな仕事にも関わらず、平均賃金は低いと言われます。
顧客にとっても安くて当たり前、一定のサービスも当たり前と考えています。
価格を上げるととたんにお客さんが入らない、この無言の圧力は相当なものがあるように思います。
代替品や代替サービスの脅威
飲食店の外食産業に対して、中食産業が数年前からブームになっています。
飲酒運転や労働環境、高齢社会化など外部要因を考えるとますます、飲食店の立場は危ぶまれてきます。
コンビニも脅威となって久しい。
新規参入者の脅威
飲食店というのは、開業しやすく、独立しやすい業態です。
しかし、持続するのはとても難しい。
3年内に半分が閉店するという事実を知って、新規参入するかどうか。
これまでは安易に出店しても、今後は慎重になるのではないかと予測してますが、新規参入しやすいという点では常にリスクです。
結論
ざっくり、分析してみましたが、飲食業界は極めて厳しい競争環境であることが分かります。
儲からない。
ただ、ポーター氏は、こうした競争にさらされる中で、どうすれば卓越した業績を実現できるのか、それを説明するのが戦略なんだと説いています。
卓越した業績。
そこを目指さない限り、成功はありませんね。
競争優位とは?
マーケティングを志す人ならマイケル・ポーターという学者をご存知だと思います。
競争戦略について、先だっても書きましたが、その概念を世界に発表し、戦略を語るときに欠かせない存在となりました。
ポーター氏をなぜ学ぶのかというと、100年持続する事業を作りたいからです。
100年続けるには、勝ち続けなくてはなりません。そういうと、相手を打ち負かすという意味に捉えられますが、勝ち続ける意味はもっと深い。
戦わずして勝てるように環境を作るのです。
正しい競争は、勝敗を競い合うのではなく、独自性を磨き自社ならではのマーケットを築くこと。
ポーター氏はそのように考えています。
では、どうすればいいのか?
5つの競争要因で業界分析をして、その中で「競争優位」をもつことがひとつ。
競争優位をもつ企業
『[エッセンシャル版]マイケル・ポーターの競争戦略』(ジョアン・マグレッタ著・櫻井祐子訳/早川書房)の中で、ポーター氏が考える競争優位をもつ企業とはどんなものか、端的に書かれています。
真の競争優位をもつ企業は、競合他社に比べて低いコストで事業を運営しているか、高い価格を課しているか、その両方だ。
これは、何を意味するかというと、競合他社よりも仕入れや人件費、生産コストを低く運営する能力があるか?
競合他社よりも高値で販売できる能力があるか?を問われるということです。
相対的コスト
ポーターの戦略の目的は、卓越した業績を実現すること=収益をあげること。
これに尽きます。
相対的コストとは、競合他社と比較して仕入れや人件費、生産コストを低く運営できるかどうか。
競合他社よりそれが低ければ、勝つということです。
相対的価格
逆に、競合他社よりも高く販売する能力があれば、勝てる。
相対的価格とはそういうことで、それを実現するのに必要なのが独自性、価値を生み出すことであり、相手を打ち負かすことではないんですね。
相対的コストと相対的価格を自社に有利なように変えて、プラスの価値を生み出したとき、戦略では定義上、競争優位を生み出したことになる。
飲食店であれば、他店よりも仕入れが強く、生産能力も高いこと。
さらに他店よりも独自の価値を生み出し提供価格を高く設定できること。
上のいずれか、あるいは双方できれば、競争優位を生み出したといえます。
バリューチェーン
具体的に、どうやって競争優位を生み出していくのか?
それを判断するために必要なフレームワークがあります。
バリューチェーン(価値創造)です。
固い言い方で説明すると、
企業が製品を設計、生産、販売、配送、サポートするために追行する活動の集合。
飲食店であれば、食材を仕入れて、下ごしらえして、料理して、提供して、サービスしてと、価値創造に関わる一連の流れのことです。
バリューチェーンってどういう意味?
バリューチェーンをそのまま訳すと、「価値の連鎖」。
でも、それでは、わかりませんよね。
飲食店で考えると、食材を仕入れてきて、仕込んで、料理して、お客さんに提供して、一方で広告や宣伝活動、マーケティングをして、接客サービスをしてと、利益を生み出す一連の流れを分解して考えるフレームワークのことなんです。
競争優位を実現する
バリューチェーンというフレームワークを使って、事業活動を考えることがなぜ良いのかというと、競争優位を実現させる手がかりになるからです。
分解した各活動において、
①他社と比較したときのコストはどうか?
②生み出している価値はどうか?
を詳細に検討すると、自社の強み、弱み、だけでなく、他社の強み、弱みも見えてきます。
飲食店におけるバリューチェーン
飲食店で考えてみましょう。
具体的には、下記を分析します。
- 仕入れは他店より強いのか?弱いのか?
- 仕込みの生産性、オペレーションは他店と比べてどうなのか?
- 料理の価値は他店よりも高いのか?
- マーケティング活動は他店より高度か?
- サービスは他店よりも優れているか?
競争優位は、こうして他店と相対的に比較したとき、その活動の違いから生じる利益の差をいいます。
2つの活動の違い
競争優位を実現する活動には、2つのパターンがあるとポーター氏は説明しています。
ひとつは、他店と同じ活動を、より優れて行う方法。
もうひとつは、他店と異なる独自の活動を行う方法。
どちらが良いと思いますか?
他店と同じ活動を、より優れて行う方法
この方法を、ポーター氏は勧めていません。
なぜなら、正しい競争戦略ではないからです。
その競争は最高を目指すことに終始し、過当な価格競争やサービス合戦、宣伝活動により業界内の収益を小さくする恐れがあります。
維持するのも大変ですし、持続性がありません。
飲食店がひしめく界隈で、価格を安くすることで集客するお店がいくつも現れたら、大変なことになりますよね。
他店と異なる独自の活動を行う方法
では、他店とは異なる活動を行うとどうなるか?
他店とは異なるニーズを満たすことで他店と争うことなく、お客さんを共有することも可能です。
もし、そのマーケットにおいて自店のみが提供できる料理やサービスなら、価格の基準値をあげられるかもしれません。
他店に提供できないもので、お金を出してもお客さんが魅力に感じるものなら、価格は天井知らず。
それを、他店よりも低コストで提供できるなら、勝ったも同然です。
独自性を目指すことで、誰にも邪魔されず、争いもせず、悠然と運営出来たら最高ですよね。
業務効果
そう考えてくると、たとえば、接客サービスをよくするとか、ロスをなくすとか、人件費を削減するとか、少しでも美味しい料理を出すとか、その程度ではだめだと分かります。
独自性ではなく、みんながやっている当たりまえの改善です。
こうした活動を業務効果と呼んでますが、それは戦略とは違うし、過当競争に巻き込まれることは必至。
改善や現状把握としては大事でも、事業を存続、発展させるにはやはり、戦略が必要になってくるのです。