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ブランドには、形がありません。
最近は、小さなお店や会社でも「うちもブランディングをしないと」という声を、よく聞くようになりましたね。
ロゴを新しくする。色をそろえる。写真をおしゃれなものに入れ替える。どれも悪いことではありません。
ただ、それでお客さんの何が変わったのかは、なかなか見えにくいものです。
僕自身、マーケティングを学び始めたころ、何度学び直しても今ひとつ分からなかったのが、このブランドという言葉でした。シャネルもルイ・ヴィトンも高級ブランドだと誰もが知っているのに、ブランドそのものは、手に取ることができないからです。
答えから書きます。ブランドは、会社の中にはありません。お客さんの頭の中にあります。
そして、お客さんの頭の中に少しずつ積み上がっていく印象を、会社の資産として数える考え方が、ブランド・エクイティです。「ブランドエクイティー」と伸ばして書かれることもあります。
この記事では、ブランド・エクイティの意味と、この考え方を本にまとめたデービッド・アーカーさんが挙げる4つの要素を、小さな会社の目線で説明します。
あわせて、僕がこれまで400件以上のホームページの制作・支援に関わってきた中から、お客さんの頭の中の印象を作り直した2社の実例と、自分の会社で確かめるための5つの質問を紹介します。
ブランド・エクイティとは、お客さんの頭の中に積み上がる資産のこと


ブランドは、会社ではなくお客さんの頭の中にある
試しに、連想ゲームをしてみます。「マクドナルド」と聞いて、何が思い浮かぶでしょうか。
赤地に黄色のMの看板。ピエロのようなキャラクター。安い、早い。揚げたてのポテトの匂い。子どものころに連れて行ってもらった、日曜日のお昼。
人によって、出てくるものは少しずつ違うはずです。
ここで気づいてほしいのは、いま挙げたもののほとんどが、お店にも本社にも置いていない、ということです。看板はお店にあります。でも「安い」「早い」「日曜日のお昼」は、あなたの頭の中にしかありません。
ブランドは、名前やロゴそのもののことではありません。その名前に結びついて、お客さんの頭の中にたまっている印象の束のことです。
エクイティは「資産」。良い印象だけでなく、悪い印象もたまる
エクイティ(equity)は、ここでは「資産」という意味で使われています。
ブランドの研究で知られるデービッド・アーカーさんは、1991年に『Managing Brand Equity』という本を出しました。日本では『ブランド・エクイティ戦略』(ダイヤモンド社)という題で翻訳されています。
アーカーさんは、自身の解説記事「What Is Brand Equity?」の中で、ブランド・エクイティを、ブランドの名前やシンボルに結びついた「資産と負債の集まり」だと説明しています。
見落とせないのは、「負債」という言葉です。たまるのは、良い印象だけではありません。
この解説記事では、マイナスの例として、2015年に排ガスの数値を偽っていたとしてアメリカの環境保護庁から違反の通知を受けた、フォルクスワーゲンが挙げられています。
小さな会社でも同じです。「問い合わせたのに、返事が3日来なかった」「入りにくい雰囲気だった」。こういう印象も、お客さんの頭の中には残ります。
つまり、何もしていなくても、印象は毎日たまっているんです。ブランディングをするか、しないかは選べません。選べるのは、どんな印象をためていくか、だけです。
印象を聞いただけで名前が浮かぶなら、強いブランド
今度は、逆向きの連想ゲームです。
安定した走り。カイゼン。愛知県。カローラ。
ここまで並べると、多くの方の頭に「トヨタ」が浮かんだと思います。
印象だけで名前がすぐに浮かぶブランドは、強いブランドです。
名前から印象が出てくるだけでなく、印象から名前が出てくる。僕はブランドを、お客さんに「〇〇といえば、××」と言ってもらえる状態のことだと考えています。
アーカーさんが挙げる、ブランド・エクイティの4つの要素


では、頭の中の印象は、何でできているのでしょうか。アーカーさんは先ほどの解説記事で、ブランド・エクイティには4つの面がある、と書いています。
- ブランド認知(名前を知られていること)
- ブランド連想(名前から思い浮かぶこと)
- 知覚品質(品質がよさそうだと感じられていること)
- ブランド・ロイヤルティ(繰り返し選んでもらえること)
カッコの中は、僕が言葉を開いたものです。順番も、お客さんが出会う順に並べ替えました。
1つずつ、小さな会社に当てはめて見ていきます。
1. ブランド認知|名前を知られていなければ、印象の置き場所がない
アーカーさんは認知のことを、ほかの連想をつなぎとめる「錨(いかり)」だと説明しています。
僕は、タンスの引き出しのラベルで考えると分かりやすいと思っています。
引き出しに「靴下」とラベルが貼ってあれば、洗った靴下をそこにしまえますし、次に履くときも迷わず取り出せます。ラベルの無い引き出しは、何を入れたのかを、そのうち忘れてしまいます。
お客さんの頭の中でも、同じことが起きています。会社やお店の名前を覚えてもらえていなければ、良い評判を聞いても、しまっておく場所がありません。「だれかが、いい歯医者さんがあると言っていたけれど、どこだったかな」で終わってしまいます。
ただ、小さな会社が全国で名前を知られる必要はありません。お店に通える範囲に住んでいる人。同じ業界の人。来てほしいお客さんがいる狭い範囲の中で、名前を覚えてもらえれば十分です。
2. ブランド連想|名前を聞いて、何が思い浮かぶか
マクドナルドと聞いて思い浮かんだものが、ブランド連想です。アーカーさんは、連想には、そのブランドについての情報を伝える助けになる働きがある、と書いています。
名前は知っている。でも、何が得意な会社なのかは思い浮かばない。数千のサイトを見てきて、小さな会社にいちばん多いのは、この状態だと僕は感じています。
「駅前の美容室」「昔からある工務店」。場所や業種は浮かんでも、それだけでは選ぶ理由になりません。同じ業種のお店が、ほかにもあるからです。
連想の中に入っていてほしいのは、3つです。何が得意か。誰に向いているか。ほかとどこが違うか。
3. 知覚品質|頼む前に「よさそうだ」と感じてもらえるか
知覚品質は、実際の品質そのものではなく、お客さんが「感じている」品質のことです。アーカーさんの解説記事では、ブランド連想とあわせて説明されています。
小さな会社にとって、いちばん悩ましいのはここかもしれません。腕には自信がある。使ってもらえれば分かる。でも、初めてのお客さんは、頼む前にそれを確かめることができません。
だから、お客さんは手がかりを探します。お客様の声。これまでの仕事の写真。料金の書き方。説明のていねいさ。問い合わせへの返事の早さ。
品質が高いことと、頼む前にそれが伝わることは、別の仕事です。
4. ブランド・ロイヤルティ|また頼みたい、人にすすめたいと思ってもらえるか
ロイヤルティは、同じお客さんに繰り返し選んでもらえることです。アーカーさんは、お客さんのロイヤルティを、いちばん大事にされることの多い資産だと書いています。
小さな会社では、リピートと紹介がこれに当たります。「また頼みたい」「あの人にも教えたい」と思ってもらえているかどうかです。
僕は、勝てるホームページの条件の1つに、一度きりで終わらず、ファンになってもらえることを入れています。広告を止めても仕事が途切れない会社は、たいていここが強い会社です。
小さな会社は、選ばれる理由になる印象を1つ決めて積み上げる
印象はたくさんあっても、選ばれる理由になるものは少ない
マクドナルドの連想を、もう一度見てみます。看板、キャラクター、安い、早い、子どものころの思い出。
このうち、今日のお昼を「マクドナルドにしよう」と決める理由になるのは、どれでしょうか。多くの人にとっては「早い」か「安い」だと思います。キャラクターの顔を思い出してお昼を決める人は、あまりいません。
頭の中にある印象のすべてが、選ばれる理由になるわけではないんです。たくさんの印象の中に、お客さんがそれを理由に選んでいる、強い印象があります。
小さな会社が育てるのは、この1つです。あれもこれもと印象を増やすより、選ばれる理由になる印象を1つ決めて、それを繰り返し伝えていく。そのほうが、覚えてもらいやすくなります。
好きな子の頭の中を、自分でいっぱいにするのと同じ
ここまでの話を、僕が自分の言葉でつかめたのは、こう置き換えたときでした。
要は、好きな子の頭の中を、自分のことでいっぱいにするのと同じだ、と。
そう気づいて、妙に納得したのを覚えています。
クラスに、ライバルの男子が20人いるとします。その中で、どうすれば好きな子の印象に残れるでしょうか。
勉強でも運動でもかなわないなら、音楽でしょうか。それとも、話の面白さでしょうか。足の速い子がすでにいるクラスで、2番目に足が速くても、印象には残りません。
印象は、自分ひとりでは決まらないんです。まわりに誰がいるかで、残る印象は変わります。
仕事の話に戻します。クラスは、同じ地域や同じ業種の市場。ライバルの男子は、同業の会社。好きな子は、来てほしいお客さんです。
市場とライバルを見たうえで、自分の持っている特徴のうち、どれを突出させれば相手の頭の中に残れるのかを考える。それがマーケティングの仕事だと、僕は思っています。
「〇〇といえば」を、狭い範囲で取りにいく
小さな飲食店なら、こうです。その町で「魚とワインの店といえば?」と聞かれたときに、自分の店を思い浮かべてもらえたらいい。
全国で一番でなくてかまいません。「この町で」「駅の北口で」と範囲を狭くすれば、一番になれる場所は見つかります。ランチェスター戦略(小さな会社が大きな会社に勝つための考え方)でも、小さな会社は、狭い範囲で一番になることを先に考えます。
目指すのは、その一言を聞いたときに、ほかの店が思い浮かばないくらいの状態です。
最近は、ChatGPTやGemini、Perplexityに「〇〇市で、△△が得意なお店は?」と聞いて探す人も、僕のまわりで増えてきました。お手伝いしているお客さんの中にも、Googleの検索では上のほうにいないのに、AIに名前を出してもらって予約につながっているお店があります。
僕の現場の実感では、何が得意なお店なのかが一言で書いてあるホームページほど、AIにも名前を出してもらいやすくなっています。
決めた印象は、お客さんが目にするすべての場所でそろえます。ホームページの最初の画面。Googleビジネスプロフィール(Googleマップに出るお店の情報)。Instagramのプロフィール。名刺。お店の入り口。
ホームページでは「魚とワインの店」と言っているのに、Googleマップでは「居酒屋」、Instagramは日替わり定食の写真ばかり。これでは、お客さんの頭の中で、1つの印象にまとまりません。
印象は、同じことを同じ言葉で繰り返して、ようやく残ります。
選ばれる理由になる強みをどう見つけるかは、別の記事にまとめています。


お客さんの頭の中の印象を作り直した2社の実例
東京・武蔵小金井の美容室HAMONさん|「美容室」としか伝わっていなかった6年間
東京・武蔵小金井の美容室HAMONさんは、オーナーの中村さんが営む、3席だけのお店です。カットやパーマもしていますが、とくに得意なのは、ハイライトやブリーチを使ったデザインカラー。中村さんの技術を求めて、群馬から往復6時間かけて通うお客さんもいます。
ところが、リニューアル前のホームページは、開業のときに知り合いに頼んだものが途中で止まったままで、ハサミやくしが並んでいるくらいのものでした。中村さんは対談で、こう話しています。
1番は、見ても何の店かよくわかんない。美容室ってこと以外は何もわかんなかったんで、それに気づくのに6年かかったんで。
何が言いたいかというと、HAMONさんには、遠くから通い続けるお客さんがいました。先ほどの4つでいえば、ロイヤルティはとても高かったんです。
足りなかったのは、連想でした。初めてホームページを見た人の頭の中には「美容室」という言葉しか残らず、デザインカラーが得意なことも、どんな人に向いたお店なのかも、伝わっていませんでした。
直近の1年、ホームページからの予約はゼロでした。
リニューアルでは、中村さんが感覚で持っていたこだわりを、細かく聞き取るところから始めました。できあがった文章を、中村さんは「うわ、ちゃんと聞いてる」みたいな文章だった、と表現してくれました。
そのうえで、誰にでも向けたホームページをやめました。中村さんの言葉を借りると、色にこだわる人や困っている人は見てくれて、そうでない人は離れてもいい作りです。
リニューアルから2か月で、ホームページからの予約は14件になりました。すごいですよね。中村さんも対談で、新規が2か月で14というのは、お店にとって記録的な数字だと話しています。
新しく来たお客さんがいちばん口にしていたのは、「Googleで調べてホームページ行って、Instagram見て予約しました」という流れだったそうです。
ハサミとくしを、きれいな写真に取り替えただけだったら、「美容室」という印象のまま、予約もゼロのままだったと僕は思っています。
東京・武蔵小金井の美容室HAMONの中村さんとの対談は、動画でも見られます。
6つの事業を手がける新電工株式会社さん|長い付き合いのお客さんも知らなかった、ほかの事業
新電工株式会社さんは、創業60年の会社です。地中の送電線や配電線の工事に加えて、人材サービス、営業の支援、イベントの請負など、6つの事業を手がけています。お話を伺ったのは、代表取締役CEOの中川さんです。
最初にご相談をいただいたのは、2024年の8月でした。
当時のホームページは、中川さんが入社する前に、工事の部門が「会社として持っておこう」と作ったものでした。その後、中川さんが2020年に人材サービスの事業を立ち上げてから、事業は一気に広がります。ところがホームページは、その全体像を映せていませんでした。
中川さんが課題に挙げていたのは、会社の実態と、外からの見られ方に、大きな差があることです。「結局どんな会社なの?」と聞かれることも多かったそうです。
同窓会で、20年ぶりに会った同級生から「まだ野球やってるの?」と聞かれたことはないでしょうか。こちらはとっくに別のことをしているのに、相手の頭の中の自分は、最後に会った日のままです。
人の頭の中の印象は、こちらが変わっても、勝手には書き換わりません。会社も同じです。事業が育っても、お客さんの頭の中の印象は、最後に見たときのままなんです。
リニューアルでは、6つの事業をばらばらに並べるのではなく、1つの流れとして読めるように整理しました。事業が増えるほど、何の会社なのか分からなくなっていくホームページを、僕はたくさん見てきました。どこまでを最初のページで見せて、どこから先をそれぞれの事業のページで伝えるか。ここは、かなり細かく決める必要があります。
公開後、ホームページからの問い合わせと応募は、確実に増えたそうです。ここでは件数よりも、中身の変化のほうを書いておきます。
- 取引先から「会社の規模感が伝わるようになった」「事業が体系的に整理されていて分かりやすい」と言われるようになった
- 新しいお客さんから「安心感がある」「信頼できる会社に見える」という声が増えた
- 以前からのお客さんに「こんなに色んな事業をやっていたんですね」と驚かれ、別の事業での相談や新しい案件につながることが増えた
- 採用では、会社の方向性を分かったうえで応募してくれる人が増え、応募者の質が一段上がった手応えがある
4つの要素に当てはめると、新しいお客さんの「信頼できる会社に見える」は知覚品質です。以前からのお客さんの驚きは、頭の中の連想に、ほかの事業が書き足された瞬間だと僕は見ています。
「結局どんな会社なの?」と聞かれることも減り、最初の打ち合わせがすんなり進むようになったそうです。
中川さんは、こう振り返っています。
ホームページはただの形じゃなくて、会社の未来をつくる”戦略ツール”だということ
ブランドに形が無いのと同じで、ホームページも、形を整えることが目的ではありません。お客さんの頭の中の印象を、いまの会社の姿に合わせ直すために使うものです。
新電工株式会社の中川さんとの対談は、動画でも見られます。
自分の会社のブランド・エクイティを確かめる5つの質問
ここからは、ご自分の会社やお店に当てはめて、確かめてみてください。紙とペンがあれば始められます。
- 会社名や屋号で、検索されているか
- お客さんに「うちを一言でいうと?」と聞いたら、何と返ってくるか
- 初めての人が、頼む前に「よさそうだ」と判断できる材料があるか
- 「また頼みたい」「人にすすめた」が、どのくらい起きているか
- 同業の3社と並べたとき、自分の会社だけの印象を1つ言えるか
1. 会社名や屋号で、検索されているか(ブランド認知)
名前を覚えてもらえているかどうかは、会社名や屋号で検索されているかで分かります。
Googleサーチコンソール(自分のホームページがどう検索されているかを見るための、Googleのツール)を入れている方は、「検索パフォーマンス」のレポートで「クエリ」のタブを開いてください。検索に使われた言葉が、一覧で出てきます。
そこに会社名や屋号が入っていれば、名前で探してくれている人がいる、ということです。入れていない方は、新しいお客さんに「うちのことは、どこで知りましたか」と聞くだけでもかまいません。
僕は、アクセスの数そのものより、名前で探してくれる人が増えているかどうかを大事にしています。別の言葉で検索して、たまたま見つけた人ではなく、あなたの会社を目指して来てくれた人だからです。
2. 「うちを一言でいうと?」と聞いたら、何と返ってくるか(ブランド連想)
付き合いの長いお客さんを3人選んで、「うちを知らない人に紹介するとしたら、一言で何と言いますか」と聞いてみてください。
聞く前に、自分が言ってほしい一言を、紙に書いておきます。たとえば学習塾なら、こうです。
言ってほしい一言:数学が苦手な中学生のための塾
返ってきた一言:駅前の塾/先生がやさしい塾/昔からある塾
ずれていても、がっかりする必要はありません。会社が見せたい姿と、お客さんの頭の中にある姿は、もともと別のものです。ブランド・エクイティは、お客さんの側から見た姿のほうを指しています。
返ってきた言葉の中に、自分では気づいていなかった強みが入っていることもあります。3人とも同じことを言ったなら、それがいま、いちばん強く残っている印象です。
3. 初めての人が、頼む前に「よさそうだ」と判断できる材料があるか(知覚品質)
自分のホームページを、初めて見る人のつもりで開きます。そして、次の5つがあるかどうかを確かめます。
- お客様の声(名前や、頼んだときの場面が具体的に入っているもの)
- これまでの仕事の実例と写真
- 料金の目安
- 頼んでから終わるまでの流れ
- 誰がやっているのかが分かる写真と紹介
1つも無い、という項目から足していきます。
腕のよさは、頼んだあとにしか分かりません。頼む前に見えるのは、その手がかりだけです。
4. 「また頼みたい」「人にすすめた」が、どのくらい起きているか(ブランド・ロイヤルティ)
この1年のお客さんを書き出して、2回目以上の方と、紹介で来た方に印を付けます。
印が多いなら、ロイヤルティは高い、ということです。HAMONさんが、宣伝をほとんどしなくても6年続いてきたのは、ここが高かったからだと僕は見ています。
ただ、ロイヤルティだけに頼っていると、新しい人には何も伝わらないままになります。中村さんも対談で、いま来てくれているお客さんに甘えていた部分があった、と話していました。
印が少ないなら、新しいお客さんを集める前に、一度頼んでくれた方との関係を見直すほうが先です。
5. 同業の3社と並べたとき、自分の会社だけの印象を1つ言えるか
最後は、ライバルとの比較です。同じ地域の同業の会社を3つ選んで、それぞれのホームページの最初の画面に書いてある言葉を、紙に書き写します。
その横に、自分の会社の言葉を並べます。
4社とも「地域密着」「安心・ていねい」「お気軽にご相談ください」と似た言葉が並んでいたら、お客さんの頭の中では、4社の区別がついていません。
クラスの話を思い出してください。足の速い子がすでに3人いるクラスで、「僕も足が速い」と言っても、印象には残りません。3社が言っていなくて、自分の会社なら言えることを、1つ探します。
まとめ|ブランドは、お客さんの頭の中で育つ
- ブランドは会社の中ではなく、お客さんの頭の中にある。そこに積み上がった印象を資産として数えるのが、ブランド・エクイティ。良い印象も悪い印象もたまる
- デービッド・アーカーさんが挙げる要素は、ブランド認知・ブランド連想・知覚品質・ブランド・ロイヤルティの4つ
- 小さな会社は、ライバルと比べたうえで、選ばれる理由になる印象を1つ決め、狭い範囲で「〇〇といえば」を取りにいく
東京・武蔵小金井の美容室HAMONさんは、直近の1年はゼロだったホームページからの予約が、リニューアルから2か月で14件になりました。新電工株式会社さんは、「結局どんな会社なの?」と聞かれることが減り、以前からのお客さんから、別の事業の相談が来るようになっています。
今日やることは1つです。付き合いの長いお客さんに、「うちを一言でいうと?」と聞いてみてください。
返ってきた言葉が、いまのあなたの会社のブランドです。
ここは正直に書いておきます。頭の中の印象は、ロゴを1つ変えても、広告を1回出しても、すぐには変わりません。同じことを、同じ言葉で、何年も言い続ける必要があります。
中村さんは、自分のホームページが「美容室」としか伝えていなかったことに気づくまでに、6年かかったと話していました。僕も、ブランドという言葉が自分の中で分かるまでに、ずいぶん時間がかかりました。
それでも、お客さんの頭の中に「〇〇といえば、あの店」が一度できあがれば、値引きや広告では、ライバルにも簡単には取り返せないものになります。
5つ目の質問で、ライバルと自分の会社を並べて比べるときは、図にすると早いです。自分の会社の情報と、ライバルのサービスのURLを入れるだけで、ライバルとの違いを1枚の図にしてくれる「ポジショニングマップ生成AI」を、無料でお渡ししています。公式LINEに登録して「マップ」と送ってください。
出典
- デービッド・アーカーさん「What Is Brand Equity?」(Prophetのサイト内「Aaker on Brands」。ページのデータ上の公開日は2013年9月4日、最終更新日は2022年6月2日。2026年10月11日に内容を確認。https://prophet.com/2013/09/156-what-is-brand-equity-and-why-is-it-valuable/)
- デービッド・A・アーカーさん著、陶山計介さんほか訳『ブランド・エクイティ戦略 競争優位をつくりだす名前、シンボル、スローガン』(ダイヤモンド社、1994年1月。原題は Managing Brand Equity。書誌は国立国会図書館サーチで確認)
- Google Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート(検索結果): 概要と基本設定」(https://support.google.com/webmasters/answer/7576553?hl=ja)
- 美容室HAMON オーナー 中村さんとの対談(https://youtu.be/lqLKAVArNC0)
- 新電工株式会社 代表取締役CEO 中川さんとの対談(https://youtu.be/DL3tf9gGDIs)

