目に見える現象の奥に、構造と目的がある|売上の問題を3段でさかのぼる

目に見える現象の奥に構造と目的 売上の問題をさかのぼる

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売上の数字に、売上が落ちた理由は書いてありません。

最近は、Googleアナリティクスや予約システムの管理画面を開けば、ホームページを見に来た人の数も、予約の件数も、すぐに数字で確かめられるようになりましたね。

数字が見えるようになったぶん、数字が動くと、すぐに手を打ちたくなります。

問い合わせが減ったら広告を出す。予約が減ったらクーポンを配る。ホームページが古いせいだと考えて、作り直す。

どれも、目に見える数字に、目に見える打ち手で応えています。でも、その数字は、もっと奥で起きていることが表に出てきた「現象」にすぎません。

僕は、恩師にこう教わりました。

目に見えないことをどれだけ見えるか。

右見てわからなかったら左見て、前から後ろから見て、上から下から見て、見えないことを見えなければ、本質は分からない。

何が言いたいかというと、目に見えている問題だけに手を打っても、その問題を毎回生み出している仕組みには届かない、ということです。

この記事では、スモールビジネスの経営者の方が、目に見える現象から、それを生み出している仕組み(構造)、さらにその奥の目的まで、3段でさかのぼって考える方法を紹介します。競合のお店が広告を増やしてきたときの読み方、自分の売上やホームページの問題を目的までさかのぼる5つの手順、そして講座受講生のKOJIさんが、値段の悩みを目的までさかのぼって解いた例を、順に書いていきます。

僕はホームページを作る前の聞き取りで、経営者の方のこれまでの人生までさかのぼって話を聞きます。「そこまで聞くんですか」と驚かれることもありますが、それも、この3段のいちばん下にある目的を、はっきりさせるためです。

目次

目に見える現象の奥に、構造と目的がある

3つの段の中身を、言葉にしておく

まず、3つの段の中身を、僕の言葉で書いておきます。

現象・構造・目的の3段
  • 現象:目に見えて、数えられること。問い合わせの件数、売上、広告、ホームページのデザインなど。戦術は、この段に表れる
  • 構造:その現象を、毎回同じように生み出している仕組み。お客さんがどこで知り、何と比べ、いくらで買い、また来てくれるかという、人とお金の流れのこと。戦略は、この段にある
  • 目的:その会社が、何のためにその仕事をしているのか。誰を、何によって幸せにしたいのか

構造は、言いかえると、売上を生んでいる仕組みそのものです。目に見える数字は、この仕組みが動いた結果として出てきます。

イメージしやすいように、図にしてみました。

逆三角形の図。上から現象(戦術)、構造(戦略)、本質(目的)の3段。多くの人の目に見えるのは現象だけで、構造と目的は見えない

図の中で「本質」と書いているのは、いちばん下の目的のことです。多くの人の目に見えるのは、いちばん上の現象だけ。構造と目的は、見ようとしなければ見えません。

雨漏りのシミは、真上が原因とは限らない

家の天井に、雨漏りのシミができたとします。

シミは、目に見える現象です。シミの部分だけ塗り直せば、しばらくはきれいに見えます。でも次の大雨で、また同じところにシミが浮いてきます。

雨漏りは、シミの真上から水が入っているとは限らないそうです。屋根の別のところから入った水が、柱や梁をつたって流れ、離れたところにシミをつくることがある。この水の通り道が、構造にあたります。

そして、どこまで直すかは、「この家に、あと何年住むのか」で決まります。来年引っ越すなら、応急の手当てで足りるかもしれません。

この先20年住むつもりなら、屋根から直したほうがいい。何年住むのかが、目的です。

目的が決まらないと、どこまで深く直すかも決まりません。売上やホームページの問題も、同じです。

ホームページでは、デザインが現象の段にある

ホームページで言えば、デザインは現象の段にあります。見た瞬間に「きれい」「古い」と言えるからです。

一方で、誰に向けて、何を伝え、どう問い合わせにつなげるかという戦略は、ページを見ただけでは良し悪しが分かりません。だから、ホームページの話は、どうしてもデザインの話になりがちです。

問い合わせが来ないからと作り直して見た目を新しくしても、届ける相手と伝える中身が前と同じなら、半年後も同じ数字が並んでいることがあります。見た目を変えるのは、いちばん上の段を塗り直すことだからです。

戦略と戦術そのものの違いは、こちらの記事でくわしく書いています。

競合のお店が広告を増やしてきたら、3段で読んでみる

競合の広告は奥まで読む、という流れを示す図。「現象(広告が増えた)」「構造(見立てて確かめる)」「目的(相手の目的を読む)」が矢印でつながり、下の帯に「目的まで読むと、打ち手が変わる」とある。

この見方は、競合の動きを読むときにも使えます。

たとえば、近くの競合のお店が、急に広告を増やしてきたとします。チラシが入り、Instagramにも、Googleの検索結果にも、そのお店の広告が出てくるようになった。

広告は、相手の戦術の1つにすぎない

広告は、目に見える現象です。相手が選んだ戦術の1つにすぎません。

では、なぜ広告を増やしたのか。新しいメニューができたから。割引のチケットを出すから。

ここまで考えても、まだ戦術の段にいます。新しいメニューも割引も、目に見えるものだからです。

相手の戦略は、そのさらに奥の、目に見えないところにあります。

見立てを4つ立てて、ありそうなところから確かめる

奥にあるものは、いくつも考えられます。

  1. 新しいお客さんを、リピートにつなげる仕組みができた
  2. スタッフが育って、サービスに自信がついた
  3. お客さんを囲い込んで、お店を広げるつもりでいる
  4. 戦略はなく、売上が落ちて焦っている

あらゆる角度から見て、仮説(たぶんこうではないか、という見立て)を立てる。そのうえで、可能性の高そうなところから順に確かめていくと、相手の戦略が見えてきます。

確かめ方は、むずかしくありません。外から見えるものを、順に当たっていきます。

リピートの仕組み:相手のホームページやInstagramに、会員カードや次回予約の案内が増えていないか

スタッフの成長:Googleマップのクチコミに、スタッフの名前を挙げた声が増えていないか

お店を広げるつもり:求人が出ていないか。2店舗目の話が出ていないか

焦り:値下げや割引が、何度も続いていないか

なくした鍵を探すとき、家じゅうを端から探す人はいませんよね。最後に着ていた上着のポケット、いつも置く玄関の棚。

ありそうなところから順に見ていきます。見立てを確かめるのも、それと同じ順番です。

目的まで分かると、自分の打ち手も決まる

なぜ、相手はその戦略をとったのか。戦略のさらに奥には、目的があるはずです。

確かめた結果、広告を増やした背景に、リピートにつなげる仕組みができたことがあると分かったとします。そうすると、相手の目的は、一度来たお客さんを常連さんに育てることだと見えてきます。

ここまで分かると、自分の打ち手も決めやすくなります。

相手の目的が常連さんづくりなら、広告の量で張り合うより、自分のお店の常連さんとの関係を先に固めておくほうが守りになります。相手がただ焦っているだけなら、慌てて値下げで追いかけなくてもいいのかもしれません。

同じ「競合が広告を増やした」という現象でも、目的まで読むと、取るべき手がまるで違ってきます。

自分の売上やホームページの問題を、目的までさかのぼる5つの手順

競合を読むのと同じ見方を、今度は自分の会社に向けます。

ここからは、たとえば地域で犬のトリミングサロンを営んでいるお店を例に、5つの手順を見ていきます。

目的までさかのぼる5つの手順
  1. 目に見える現象を、事実と数字だけで書き出す
  2. 6つの方向から、原因の見立てを出す
  3. 見立てを「お客さんの流れ」の言葉に書き直す
  4. 可能性の高いものから、1つずつ確かめる
  5. 目的に照らして、打ち手を選び直す

1. 目に見える現象を、事実と数字だけで書き出す

最初は、起きていることを、事実と数字だけで1行に書きます。

原因が混ざった書き方:ホームページが古いせいで、新しいお客さんが減っている

事実だけの書き方:ホームページから入る新規の予約が、去年の9月は12件、今年の9月は5件

1つ目の書き方には、「ホームページが古いせい」という原因が、もう入っています。原因を決めてから書くと、このあとの手順で、ほかの見立てが出てこなくなります。

書き出したら、それが本当に困ったことなのかも確かめます。新規の予約が減っていても、常連さんの来店が増えて売上が保てているなら、急いで手を打つことではないかもしれません。問題として扱うかどうかを、ここで一度決めておきます。

2. 6つの方向から、原因の見立てを出す

次に、原因の見立てを出します。ここで使うのが、冒頭の恩師の言葉です。

右から左から、前から後ろから、上から下から。経営の場面に置き換えると、次の6つの方向になります。

  • 右と左:自分のお店と、比べられている近くのお店
  • 前と後ろ:お客さんが予約する前(どこで知り、何を見て比べたか)と、予約した後(何を聞かれ、なぜ2回目が無かったか)
  • 上と下:世の中や業界の流れと、現場で起きていること

トリミングサロンなら、たとえばこんな見立てが並びます。

右と左:近くに新しいサロンができた。そのサロンは、ホームページから24時間予約できる

前:Googleマップのクチコミが、2年前から増えていない

後ろ:電話で「今日空いていますか」と聞かれて、断ることが増えた

上:予約は電話よりネットで済ませたい、という人が増えているのかもしれない

下:トリマーが1人辞めて、受けられる予約の枠が減った

1つの方向だけで考えると、見立ては1つか2つで止まります。6つの方向を順に回ると、自分では思いつかなかった原因が出てきます。

3. 見立てを「お客さんの流れ」の言葉に書き直す

ここが、構造の段に降りるところです。

並んだ見立ての多くは、まだ現象です。「新しいサロンができた」も「クチコミが増えていない」も、目に見える出来事だからです。

そこで1つずつ、「お客さんが、どこで知り、何と比べ、どこで決めているか」という流れの言葉に書き直します。

現象の言葉:近くに新しいサロンができた

流れの言葉:初めてのお客さんは、Googleマップで近くのサロンを並べて比べ、その場で予約できるお店を選んでいく。うちは電話でしか予約を受けていないので、比べる候補に残る前に外れている

こう書き直すと、問題は「新しいサロンができたこと」から、「お客さんが選ぶ流れの中で、うちが候補から外れている段階」に移ります。新しいサロンができたことは、変えられません。でも、予約の受け方なら、自分で変えられます。

構造の段に降りるとは、自分で変えられることまで、問題を言いかえることだと僕は考えています。

4. 可能性の高いものから、1つずつ確かめる

見立ては、確かめるまでは見立てのままです。

トリミングサロンなら、確かめ方はたとえばこうです。

  • Googleビジネスプロフィールの「パフォーマンス」で、お店のプロフィールが見られた数と、電話のボタンやホームページへのリンクが押された数を見比べる
  • 予約の電話を受けたら、1か月のあいだ「何を見てお電話くださいましたか」と聞いて、答えを数える
  • 断った電話の数を、1か月だけ記録する

プロフィールはよく見られているのに、電話のボタンがあまり押されていないなら、「比べられたうえで外れている」という見立てが強くなります。プロフィールそのものがあまり見られていないなら、外れているのはもっと手前、見つけてもらう段階です。

1つ気をつけたいのは、一度に全部を変えないことです。予約の受け方もクチコミの集め方もホームページも同時に変えると、何のおかげで数字が動いたのか分からなくなります。

5. 目的に照らして、打ち手を選び直す

最後に、いちばん下の目的まで降ります。

目的は、「誰を、何によって幸せにしたいのか」の形で書いておくと、打ち手を選ぶときに使えます。たとえばこのサロンの目的が、「近所の犬と飼い主さんに、10年、20年と通ってもらえるお店であること」だったとします。

そうすると、打ち手の選び方が変わります。

新規の予約を増やすだけなら、初回半額のクーポンも1つの手です。でも、値段で選んで来たお客さんは、もっと安いお店ができると、そちらへ移っていきがちです。

長く通ってもらうことが目的なら、ネット予約を入れて比べる候補に残り、来てくれたお客さんには、帰り際に次の予約をとってもらう。そちらのほうが、目的に合っています。

雨漏りの話で言えば、この家にあと20年住むと決めたから、屋根から直すということです。目的が、どの段まで手を入れるかを決めてくれます。

実例|講座受講生のKOJIさんは、値段より先にサービスの中身を見直した

値上げの前にさかのぼることを示す比較図。「現象の打ち手(値段だけ書き換える)」と「構造の打ち手(理由を説明できる中身)」を並べ、下の帯に「値段を支える中身から見直す」とある。

5つの手順を、実際の例で見てみます。

僕が開いている「AI×勝てるホームページ作成講座」の受講生、KOJIさんの話です。KOJIさんは会社員(情報システム部)として働きながら、副業でWeb制作をしています。

1人で回している副業も、立派なスモールビジネスです。値段の悩みは、業種を問わず同じ形で出てきます。

現象:単価は1件10万円ほど。毎日、依頼に応募していた

受講前のKOJIさんの制作単価は、1件およそ10万円でした。仕事は、ココナラの公開依頼(依頼する人が仕事の内容を出し、作り手を募集する仕組み)を毎日チェックして、自分から応募して取っていました。

KOJIさんは、制作のスキルも経験も、もともと十分にある方です。対談でも話しましたが、僕はKOJIさんの値段を見て「安くしすぎだな」と感じていました。

お客さんとは対等な立場なのだから、下請けのつもりで安い単価を引き受けてはいけない。対談では、そんな話もしています。

ここで、すぐ思いつく打ち手は値上げです。値段を書き換えるだけなら、今日にでもできます。

でも、それは現象の段の打ち手です。KOJIさん自身も、単価を上げたら依頼の件数が落ちるのではないかと、不安に感じていました。

構造:作業を代わりにやる人に見えていて、金額の理由を説明できなかった

KOJIさんが講座で取り組んだのは、値段より先に、サービスの中身と見せ方を見直すことでした。

ホームページを作る作業を代わりにやる人としてではなく、聞き取りから、誰に何を伝えるかの組み立て、提案までを含めて手伝える人だと伝わるように、ココナラのプロフィールとサービスのページを見直しました。案件を受けても、すぐには作り始めません。事業の中身、お客さんの悩み、競合との違い、強みを整理してから、ページの組み立てを考える流れに変えています。

KOJIさんは、対談でこう話しています。

一番大きかったのは、価格設定だけを先に変えたのではなくて、『なぜこの金額になるのか』っていう説明をできるサービス内容に見直したことです

つまり、KOJIさんが動かしたのは、値段という目に見える数字ではなく、その値段を支えているサービスの中身でした。

作業の代わりを頼む相手なら、比べられるのは値段だけです。比べられるところが値段しか無い。それが、単価が上がらない仕組みになっていました。

目的:お客さんがホームページで成し遂げたいことから、組み直した

では、その奥の目的は何だったのでしょうか。

お客さんがホームページを頼む目的は、ページを持つこと自体ではなく、その先の問い合わせや売上のはずです。KOJIさんは受講後、ホームページを「誰に向けて、何を伝えて、どんな行動につなげたいのか」という見方で考えるようになったそうです。

お客さんの目的からさかのぼって、自分のサービスを組み直した。だから、金額の理由を言葉で説明できるようになったのだと、僕は見ています。

結果:受注の件数はそのままで、単価は20〜30万円に

制作単価は、1件およそ10万円から、20〜30万円に上がりました。受注の件数は以前とほとんど変わらないまま、同じ件数で、売上は実質2〜3倍になっています。

心配していた問い合わせの数も、減りませんでした。仕事の取り方も変わっています。

以前と違うのは、ココナラの公開依頼に応募して受注していたのが、今はほとんどそれがなくなって。自分で取りに行かなくても、少し待っていればいただけるような状態にはなっております

すごいですよね。毎日応募に使っていた時間が、まるごと空いたわけです。

もし値段だけを先に書き換えていたら、KOJIさんが心配していたとおり、問い合わせは減っていたかもしれません。値段を支えるサービスの中身までさかのぼったから、上がった金額にお客さんが納得してくれたのだと思います。

ただし、KOJIさんは、もともと制作のスキルと長い経験を持っていた方です。講座を受ければ誰でも同じように単価が上がる、という話ではありません。

値上げの話は、ポッドキャストの第35回「値上げに抵抗がある人のための値上げスパイラルを作る仕組み」でも話しています。

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