市場規模(マーケットサイズ)の考え方|大きい市場ほど小さな会社は勝ちにくい

小さな会社のための市場規模 勝てる市場の見つけ方

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市場は、大きいほど有利とは限りません。

最近は、ChatGPTやGemini、Claudeに「〇〇業界の市場規模は?」と聞けば、何千億円、何兆円という数字が数秒で返ってくるようになりましたね。

大きな数字を見ると、少し安心します。これだけのお金が動いているなら、うちの店にも少しは回ってくるだろう、と。

ところが、その数字は、スモールビジネスの売上の見通しにはほとんど役に立ちません。あなたの店が戦うのは、日本全体の市場ではないからです。戦うのは、お客さんが実際に来てくれる範囲の、小さな市場です。

ホームページの相談を受けていると、「アクセスは増えたけど、問い合わせは増えない」という声をよく聞きます。たくさんの人に見てもらおうとするうちに、気づけば大手と同じ場所で戦っている。そういうケースが少なくありません。

この記事では、自分が戦う市場の大きさを見積もるやり方と、大手と戦わずに済む「小さくても勝てる市場」の選び方を、東京・武蔵小金井の美容室HAMONさんの実例と一緒にまとめます。最後に、市場を選ぶ前に自分に問いかけたい5つの質問も置いておきます。

目次

市場規模(マーケットサイズ)は、その川に魚が何匹いるか

市場規模とは、そこで1年間に使われるお金の合計

ここで言う市場(しじょう)は、魚や野菜を売る「いちば」のことではありません。お客さんと商売が出会う場所全体のことです。

市場規模(マーケットサイズ)は、その場所で1年間にどれだけのお金が使われているかを表す数字です。人数や件数で数えることもありますが、考え方は同じです。

釣りにたとえると、分かりやすいと思います。その川に、どんな魚が、何匹くらい住んでいて、どんなエサを好むのか。釣り糸を垂らす前にこれを知っておくのが、市場を調べるということです。

マーケティングという言葉にも、マーケット(市場)がそのまま入っています。売り方を考えるより先に、市場を知る。そして、どの川で釣るかは、事業を始める前に決めておきたいことです。

100匹釣りたいのに、50匹しかいない川では届かない

市場の大きさを知る理由は、ひとつです。自分の目標が、その市場で届く数字かどうかを確かめるためです。

100匹釣りたいと思っても、その川に50匹しかいなければ、どれだけ腕のいい釣り人でも届きません。

高い竿を買い、食いつきのいいエサを用意し、狙った場所へきれいに仕掛けを投げる。そこまでしても、魚のいない川で釣り糸を垂らしているかぎり、1匹もかかりません。

僕自身、ここを間違えて2年ほど遠回りしました。ネットで稼ごうと決めた最初のころ、電子書籍を10作品出して、売上は月200円。生ハムの輸入販売は、利益率が10%以下で続けられませんでした。

どちらも、頑張り方の問題ではなく、選んだ川の問題でした。ホームページ制作に絞ってから、ようやく流れが変わりました。

自分が戦う市場の大きさは、4つの数字のかけ算で見積もれる

日本全体の数字より、お客さんが来てくれる範囲を見る

冒頭の、AIが返してくれる何兆円という数字は、日本全体の話です。

町の美容室や工務店、税理士事務所にとって大事なのは、お客さんが実際に通える範囲の市場です。オンラインで売る商売でも、「自分の店を選ぶかもしれない人」は、日本全体よりずっと少なくなります。

そこで、自分の市場は自分で見積もります。難しい計算は要りません。

見積もりの式は「人口×割合×回数×単価」

自分の市場の大きさを見積もる式

地域の人口 × お客さんになりそうな人の割合 × 1年に利用する回数 × 1回の単価 = 1年間の市場の大きさ

4つの数字は、次のように集めます。

  • 地域の人口は、市区町村のホームページや、政府統計の総合窓口(e-Stat)で調べられます。e-Statの「市区町村のすがた」というページでは、市区町村ごとの人口や世帯の数字を見られます
  • お客さんになりそうな人の割合は、最初は仮の数字でかまいません。いまのお客さんの年代や悩みを書き出すと、見当がつきます
  • 1年に利用する回数と1回の単価は、自分の店の実績や、ライバル店の料金表から置きます

最初から正しい数字を出そうとしなくて大丈夫です。仮の数字で一度計算して、あとから確かめて直していけば十分です。

例:人口10万人の町で、ワイン好きの50代男性に来てほしいレストラン

ここからは、計算の流れをつかむための仮の数字です。

人口10万人の町で、ワインが好きな50代の男性に来てほしいレストランを開くとします。

  1. 町の人口は10万人。そのうち50代の男性が7%だとすると、7,000人
  2. そのうち、外でワインを楽しむ習慣がある人が10%だとすると、700人
  3. その700人が、1年に6回レストランでワインを飲むとすると、4,200回
  4. 1回の単価が8,000円なら、4,200回×8,000円で3,360万円

この町で、ワイン好きの50代男性がレストランで使うお金は、1年でおよそ3,360万円。これが、このお店が狙う市場の大きさの見当です。

ライバルがいれば、その市場を分け合うことになる

「目標に届かないときの打つ手」という見出しの図解。青い枠が3つ並び、「範囲を広げる」「狙うお客さんを見直す」「回数や単価を見直す」と書かれている。下の帯に「計算して初めて、無理だと気づける」。

次に、同じお客さんを狙う店を数えます。

1枚のピザを6人で分ければ、1人分は6分の1です。市場も同じで、ワインに力を入れている店がこの町に自分を含めて6軒あれば、単純に割って1軒あたり560万円です。

もしこの店が、このお客さんたちだけで年1,500万円の売上を目指しているなら、市場のおよそ45%を取らなければいけません。町のワイン好きの50代男性の、半分近くが自分の店に来る計算です。

さきほどの「100匹釣りたいのに、50匹しかいない川」が、まさにこの状態です。計算して初めて、無理な目標だと気づける。見積もりのいちばんの価値はここにあります。

無理だと分かったら、打つ手は3つあります。

  1. 範囲を広げる。隣の町も含めて人口30万人で考えると、市場はおよそ1億80万円。1,500万円は約15%になります
  2. 狙うお客さんを見直す。50代だけでなく40代も含める、男性だけでなく女性も含める、など
  3. 回数や単価を見直す。年に6回来たくなる理由を作る、1回の満足を上げて単価を上げる、など

目標から逆算すると「何割に選ばれればいいか」が見える

この考え方は、目標を立てるときにも使えます。

以前、地方都市で家づくりの相談窓口をしている会社の、ホームページの戦略づくりをお手伝いしました。代表の方は、目標の数字を市場の大きさから逆算していました。

店から通える範囲で1年間に建つ注文住宅は、約1,800棟

相談を月20組受けたいなら、1年で240組

240組 ÷ 1,800棟 = 約13.3%

つまり、店から通える範囲で家を建てる人の、7〜8組に1組が相談に来てくれれば、目標に届くということです。

目標を「月20組」とだけ書くより、「近くで家を建てる人の7〜8組に1組」と言い換えたほうが、届くかどうかの手ざわりがつかめます。

大きすぎる市場で、大手と同じ戦い方をしない

「大手と同じ場所で戦わない」という見出しの図解。左のオレンジの枠は「大きすぎる市場」「大手が先にいる」で大きな漁船が網を広げる湖、右の緑の枠は「すき間の市場」「小さくても勝てる」で釣り人が1人だけ魚を釣る小川が描かれている。下の帯に「頑張る前に、戦う場所を選ぶ」。

大きな市場には、たいてい大きな会社が先にいる

では、市場は大きければ大きいほどいいのか。そうではありません。

魚がたくさんいる大きな湖には、大きな漁船が先に網を広げています。竿1本で同じ湖に出ても、獲れる量では勝負になりません。

ランチェスター戦略(もとは戦争の戦力の法則から生まれた、強い側と弱い側それぞれの戦い方の考え方)では、弱い側が強い側と広い場所で正面からぶつかると、人数とお金の差がそのまま結果に出る、と考えます。だから弱い側は、地域やお客さんやテーマを絞った、狭い場所で戦います。

ホームページも同じです。検索される回数が多い大きな言葉ほど、大手が先に上位を取っていることが多い。大きな言葉だけで見つけてもらおうとするのは、大きな湖に竿1本で出ていくようなものです。

小さくても勝てる市場は「すき間」にある

スモールビジネスが狙いたいのは、ニッチと呼ばれる市場です。ニッチは日本語で「すき間」と訳されることが多い言葉で、大きな会社がわざわざ手を出さない、小さいけれど、はっきり求めている人がいる市場のことです。

町内の運動会を思い浮かべてみてください。同じ足の速さでも、オリンピックの100メートル走で1位になるのは無理です。でも、町内の運動会の「40代のお父さんの部」なら、1位を狙えるかもしれません。

走る力は同じでも、出る組を選ぶだけで結果は変わります。小さな会社に必要なのは、勝てる組を選ぶことです。

小さくても勝てる市場の4つの条件

ただし、小さければいいわけでもありません。魚が少なすぎる川や、狭すぎる釣り場を選べば、今度は目標に届かなくなります。

理想を言えば、ライバルが少なくて、そのわりに魚が多くて、自分の考えた仕掛けで笑っちゃうほど釣れる場所。それを探すのが市場選びです。僕は、次の4つを掛け合わせて考えています。

小さくても勝てる市場の4つの条件
  • 目標に届くだけのお客さんがいる(市場の大きさ)
  • これから減らない、できれば増えていく(伸びるかどうか)
  • 大手がわざわざ入ってこない、ライバルが強すぎない(ライバルの強さ)
  • 自分の得意なことが、そのまま選ばれる理由になる(自分との相性)

数字だけ見て選んでも、自分の得意が活きない市場では選ばれません。勝てる市場は、自分の強みと、お金が動いている市場が重なるところにあります。

武蔵小金井の美容室HAMONさん|「全員向け」をやめて、ホームページからの予約が2か月で14件に

美容室を探す人全員ではなく、髪の色にこだわる人に絞った

東京・武蔵小金井の美容室HAMONさんは、オーナーの中村さんが営む、席が3つのお店です。カットもパーマもしていますが、いちばんの得意は、ハイライトやブリーチを使ったデザインカラーです。

リニューアル前のホームページは、開業のときに知り合いに頼んだもので、途中で止まったままになっていました。中村さんは対談で、こう振り返っています。

見ても何の店かよくわかんない。美容室ってこと以外は何もわかんなかったんで、それに気づくのに6年かかったんで。

美容室は、お店の数もお客さんの数も多い、大きな市場です。中村さん自身、原宿や渋谷にはブリーチの上手な大きな美容室がたくさんある、と話していました。そうしたお店は工程が決まっていて、お弟子さんが担当することもあります。HAMONさんは席が3つなので、基本のデザインは中村さんが自分で塗ります。

ブリーチを頼みたい人が、原宿や渋谷の大きな美容室ではなく、武蔵小金井のHAMONさんを選ぶ理由は何か。ホームページでは、そこに答えることにしました。

HAMONさんのお客さんで多いのは、35歳から60歳前後の方です。白髪が出始めた方、白髪に悩んでいる方、そして60代で、これまでブリーチに挑戦する機会がなかった方。中村さんは、髪の状態や挑戦したい度合い、ふだんのお仕事まで聞きながら、新しいお客さんほどカウンセリングに時間をかけて色を決めていきます。

Googleの検索結果に出る題名にも、「デザインカラーにこだわる 武蔵小金井の美容室 HAMON」という言葉を入れました。武蔵小金井で美容室を探す人全員を取りにいくのではなく、武蔵小金井でデザインカラーの得意な店を探している人に、確実に見つけてもらうためです。

見に来る人の数は、減るかもしれません。そのかわり、来た人が予約まで進む割合は上がります。

中村さんは、出来上がったホームページについて、こう話してくれました。

他の美容室のやつとか、前のサロンもそうですけど、ターゲットが全員だったんで。男も女もおじいちゃんもおばあちゃんもみたいな。でもうちのやつは、色にこだわったり困ってる人は見てくれて、じゃない人は離脱してもいいような作りになってるのがすごい分かりやすくて、僕のやりたいことと似てるのでよかったです。

何が言いたいかというと、全員に向けたホームページは、誰のためのお店なのかが伝わらない、ということです。髪の色にこだわる人に向けて書けば、こだわらない人は離れていきます。でも、HAMONさんにとってはそれでいいんです。席は3つなのですから。

リニューアル後の2か月で起きたこと

リニューアルの前、直近1年でホームページから入った予約はゼロでした。それが、リニューアル後の2か月で14件になっています。

対談で中村さんは、新しいお客さんが2か月で14人というのは、お店として記録的な数字だと話してくれました。Googleでの閲覧数やクリック数も、毎月何百%という伸び方をしているそうです。

すごいですよね。

新しいお客さんがいちばん多く口にしていたのは、「Googleで調べてホームページ行って、Instagram見て予約しました」という流れだそうです。

もともとHAMONさんには、中村さんの技術を求めて、群馬から往復6時間かけて通うお客さんもいます。こだわりの強いお客さんにとって、距離はそれほど問題になりません。狙うお客さんを絞っても、来てくれる範囲は狭くならない。小さな市場は、狭い市場とは限らないんです。

もし「美容室ならどなたでも」という全員向けのホームページのままだったら、武蔵小金井のほかのたくさんの美容室と見分けがつかず、この14件は生まれていなかったと思います。

東京・武蔵小金井の美容室HAMONの中村さんとの対談は、動画でも見られます。

市場を選ぶ前に確かめたい5つの問い

ここまでの話を、5つの問いにまとめます。新しく店を出すときだけでなく、新しいサービスを始めるときや、ホームページを作り直すときにも使えます。

市場を選ぶ前の5つの問い
  • お客さんになりそうな人は、本当にいるか
  • その人は、何人くらいいるか
  • 同じお客さんを狙うライバルは、誰がいるか
  • ライバルと分け合っても、目標に届くか
  • 10年後も、そのお客さんはいるか

1. お客さんになりそうな人は、本当にいるか

最初に確かめるのは、魚がいるかどうかです。

頭の中の「たぶんいるはず」のまま進めず、実際に確かめます。いまのお客さんの顔を思い浮かべる。町を歩いて、狙う人が集まっている場所を見る。ライバルのお店に、お客さんとして行ってみる。

Googleマップで「地域名+業種」を検索して、口コミにどんな人が書き込んでいるかを読むのも、手軽な確かめ方です。

2. その人は、何人くらいいるか

ここで、さきほどの「人口×割合×回数×単価」の式を使います。

数字は仮でかまいません。大事なのは、一度は自分の手で計算してみることです。1年間でいくらの市場なのかが分かると、目標の立て方が変わります。

3. 同じお客さんを狙うライバルは、誰がいるか

ライバルは、同じ業種の店だけとは限りません。ワイン好きの50代男性にとっては、ワインバーも、ワインを置いている居酒屋も、家で飲むためのワインの通販も、同じお金の使い道の候補です。

ライバルの店に行ったら、料金だけでなく、誰が接客しているかも見てきます。アルバイト中心なのか、経験の長い人が対応しているのか。そこに、自分の店だけが出せる強みのヒントがあります。

4. ライバルと分け合っても、目標に届くか

市場の大きさをライバルの数で割って、目標の売上と比べます。逆算するなら、目標の件数を市場の大きさで割って、何割の人に選ばれればいいかを出します。

半分近くを取らないと届かないなら、範囲を広げるか、狙うお客さんを見直すか、回数と単価を見直します。

5. 10年後も、そのお客さんはいるか

いま魚がいても、10年後もいるとは限りません。地域の人口が減ることもあれば、お客さんの好みが変わることもあります。

将来の人口の見通しを公表している市区町村もあります。いま狙っている年代が、10年後にどうなっているかを一度見ておくと、判断を誤りにくくなります。

HAMONの中村さんがリニューアルを決めたのも、集客に困っていたからではありませんでした。5年後、10年後を考えたときに、このままでは不安だと感じたことが、きっかけのひとつだったそうです。

魚がいるうちに、次の10年の川を選んでおく。これも、市場を考える大事な仕事です。

まとめ|どの市場で戦うかで、結果の8割は決まる

  • 市場規模(マーケットサイズ)は、日本全体の数字ではなく、お客さんが来てくれる範囲で見積もる。式は「人口×割合×回数×単価」
  • 大きすぎる市場では、大手と同じ戦い方になる。小さくても目標に届き、自分の得意が活きる市場を選ぶ
  • 選ぶ前に「いるか・何人か・ライバルは誰か・分け合っても届くか・10年後もいるか」の5つを確かめる

東京・武蔵小金井の美容室HAMONさんは、美容室を探す人全員ではなく、髪の色にこだわる人に向けてホームページを作り直しました。直近1年ゼロだったホームページからの予約は、リニューアル後の2か月で14件になっています。

今日やることは1つです。紙かスマホのメモに「人口×割合×回数×単価」と書いて、自分の店の数字を仮で入れてみてください。出てきた金額と、目標の売上を並べてみる。それだけで、いまの川で釣りを続けていいのかが見えてきます。

どの市場で戦うかで、結果の8割は決まる。僕はそう考えています。頑張る量を増やす前に、戦う場所を選ぶ。

本音を書いておくと、この見積もりは、ぴったりとは当たりません。仮の数字を4つ掛け合わせるので、大きくずれることもあります。それでも、一度も計算しないまま魚のいない川に竿を出し続けるより、ずっといい。ずれた分は、実際のお客さんの数字を見ながら直していけばいいんです。

どこで戦うかを決めるときは、ライバルと自分の位置を1枚の図にしてみると、空いている場所が見つけやすくなります。自分の店の情報と、ライバルのサービスのページのURLを入れるだけでその図を作ってくれる「ポジショニングマップ生成AI」を、無料でお渡ししています。公式LINEに登録して「マップ」と送ってください。

出典

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