開業の失敗談から学ぶ|成功の秘訣より、失敗した理由を集める

「成功の秘訣より 失敗の理由を集める」と書かれたサムネイル

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成功の秘訣は、聞いてもまねできません。

最近は、開業や起業の成功談が、YouTubeやSNSで毎日のように流れてきますね。脱サラして1年で黒字にしたお店、行列ができる個人店。見ていると、自分にもできそうな気がしてきます。

ただ、これから開業する人が先に集めるなら、成功の秘訣より、ほかの人が失敗した理由だと僕は考えています。

そう考えるようになったのは、僕自身に、2年間ほとんど失敗しかしていない時期があるからです。2017年、僕はレストランを開くつもりで、開業までの道のりを記録するブログを書き始めました。結論から書くと、そのレストランは開いていません。

この記事では、成功談をまねしても同じ結果にならない理由と、飲食店の開業の失敗を公的な調査の数字で見たときのこと、僕の失敗の記録から見えた「目標に届かない4つの理由」、そして開業の前に失敗した理由を集める4つの方法を書きます。

目次

成功の秘訣をまねしても、同じ結果になるとは限らない

「先に集めるのは、失敗した理由」という見出しの図解で、青い枠の「成功の要因 多くて見えにくい」(付せんがたくさん挟まった分厚いレシピ本と、その奥で湯気に隠れたコンロの火・厚い鍋・まな板の魚)から、緑の枠の「失敗の理由 少なくてはっきり」(ふちが少し焦げた目玉焼きのフライパンと、短い線が1本だけ書かれたメモを持ってうなずく男の子)へ矢印でつながっている。下の帯に「同じ場面で、別の道を選べる」。

成功の要因は、1つや2つではない

経営コンサルタントの石原明さんが、『トップ3%の会社だけが知っている儲かるしくみ』(中経の文庫)の中で、こんな話を書いています。

成功のために必要だった要素が10個あったとします。そのうち1つか2つだけを聞いて参考にしても、なかなかうまくいかない。10個を全部聞かないとだめだ、というものです。

何が言いたいかというと、成功談で語られるのは、たいてい10個のうちの目立つ1つか2つだ、ということです。

料理のレシピを思い浮かべると、分かりやすいと思います。人気店のレシピをそのとおりに作っても、同じ味にはなかなかなりません。

レシピには、材料と手順は書いてあります。でも、その店のコンロの火の強さや鍋の厚み、その日の魚の脂ののり方までは書いていないからです。

うまくいった本人にも、理由が全部見えているとは限らない

うまくいった理由は、意外と本人にもはっきりしていないことがあります。

たとえば、お店を開いた年に、たまたま近くに大きな会社ができて、昼の人通りが増えた。本人は「メニューを絞ったのがよかった」と話していても、実は人通りのほうが大きかった、ということも起こりえます。

本人が意識していない条件は、成功談には出てきません。聞く側からは、なおさら見えません。

「なぜ失敗したか」は、1行で書けることが多い

反対に、料理を焦がした人に理由を聞くと、「火が強すぎた」「目を離した」と、たいてい1行で返ってきます。

失敗した理由は、成功の要因よりずっと数が少なく、はっきりしています。そして、本人が大まじめにやって、それでもうまくいかなかった失敗ほど、聞く側の役に立ちます。

同じ場面に立ったとき、その人が選んだのとは別の道を選べばいいからです。他人の失敗談は、自分の選択肢を1つ減らしてくれます。聞いておくだけで、時間もお金も気力も、その分だけ使わずにすみます。

車を運転していて「事故多発」の看板を見ると、自然とブレーキに足が乗りますよね。あの看板は、運転のコツは教えてくれません。でも、ほかの人がどこでぶつかったかは教えてくれます。

他人の失敗談は、この看板に近いものです。

飲食店の開業で失敗する人は、数字で見るとどのくらいか

日本政策金融公庫の調査で、廃業がいちばん多かったのは「飲食店、宿泊業」

「飲食店は、開いても数年でほとんどがつぶれる」という話を、よく耳にします。ただ、僕が公的な調査の原文で確かめられたのは、次の数字です。

日本政策金融公庫の総合研究所が2021年12月21日に公表した「新規開業パネル調査」は、2016年に開業した3,517社を、5年間追いかけた調査です。対象は、日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資を受けて開業した企業で、不動産賃貸業は除かれています。

2020年の年末までに廃業した企業は、全体で8.9%でした。業種別に見ると、「飲食店、宿泊業」(563社)が14.7%で、いちばん高い割合です。次が「小売業」の13.2%でした。

読むときに、気をつけておきたいことが2つあります。

  • 融資を受けて開業した企業だけの数字で、お金を借りずに始めたお店は入っていない
  • この5年には、新型コロナの時期が入っている。2020年の年末を調査の時点とした回で、新型コロナのマイナスの影響を受けた割合は、「飲食店、宿泊業」で97.5%だった

同じ調査には、続けている企業の中身が分かる数字もあります。5回の調査すべてで、もうけが出ているか(採算)を答えた888社のうち、2020年の年末の時点で「赤字基調」と答えたのは37.2%でした。こちらは業種を分けない数字です。

続いていることと、うまくいっていることは別です。廃業の割合だけを見て「意外と大丈夫そうだ」と考えるのも、早すぎます。

数字は「何割」を教えてくれても、「なぜ」は教えてくれない

この調査の概要からは、何割がやめたのかは分かります。でも、1軒1軒がなぜやめたのかまでは書かれていません。

開業してから後悔しないために本当に知りたいのは、その「なぜ」のほうです。そして理由は、やめた人や苦しんだ人に聞くしかありません。

もう1人、いちばん身近に、聞ける相手がいます。過去の自分です。

僕の開業奮闘記は、失敗の記録だった

2017年1月4日、「2年後には開業している」と書いた

レストランの開業までを記録するブログを始めたのは、2017年1月4日です。僕はその記録を「開業奮闘記」と呼んでいました。1本目の記事に書いたのは、お店はまだできていないこと。場所もコンセプトも、どんな人に来てほしいかも、店名さえも決まっていないこと。そして、2年後には開業している、ということでした。

当時の僕は会社員で、借金を返しながら、2年でレストランの資金を貯めるつもりでいました。

いま振り返ると、この1本目の記事には、もう失敗の理由が1つ書いてあります。どこで開くのか、誰に向けたお店なのか、名前さえ決まっていない。決まっているのは、期限だけでした。

2年でやって、やめたこと

開業の資金を早く貯めようと、この2年のあいだに、いろいろなことに手を出しました。

懸賞に20件応募した。当たったのは、QUOカード5,000円分だけ。

アフィリエイト(ブログで商品を紹介して、売れたら報酬をもらうしくみ)を4か月続けた。稼げたのは5,000円。

出張料理のサービスを始めた。日曜と祝日がまるごとつぶれるのに、収益にならず、やめた。

電子書籍を10作品出した。売上は月に200円。

生ハムの輸入販売を計画した。利益が売上の1割に届かない計算になり、始める前にやめた。

2年たっても、開業の資金は目標にまるで届かず、借金も減っていませんでした。本業(会社員としての仕事)の売上の目標にも、ほとんど届いていません。

2019年には、期限を「2021年に開業」と書き直して、その目標を毎日書いていました。それでも、その年の春の時点で、開業奮闘記に書いてきたことの9割以上は、まだ形になっていませんでした。

柳井正さんの本の題は『一勝九敗』

ユニクロの柳井正さんに、『一勝九敗』(新潮社)という題の本があります。題のとおりに読めば、10回のうち勝つのは1回です。題を見るだけで、少し救われる気がします。

ただ、9回の負けを、ただの負けで終わらせていたら、10回目もきっと同じ負け方をします。なぜ失敗したかを分かっていなければ、失敗から学んだことにはなりません。

そこで当時の僕は、恥をしのんで、自分の失敗の理由を書き出してみることにしました。

目標に届かなかった理由を、4つに分けて書き出す

勉強して、新しいことを試して、うまくいったりいかなかったり。それでも届かない。あと一歩のときもあれば、まるでかけ離れているときもある。

何が欠けているから、こうなるのか。当時の僕が書き出した理由は、4つでした。失敗の原因を分析する、と言うと難しく聞こえますが、やることは、書き出して分けるだけです。

これから開業する人にもそのまま当てはまると思うので、直し方と一緒に並べます。

1. 自分で決めた目標になっていなかった

どこかで、目標を他人事のように思っていたのだと思います。本業の売上の目標は特にそうで、会社から渡された数字を、自分で決めた数字だとは思えていませんでした。

でも、「自分で決めた数字じゃないから」と考えるのは、現実から目をそらしているだけです。

開業の目標でも、同じことが起きます。よそのお店の売上や、本で読んだ数字を、そのまま自分の目標にしていないか。

数字の横に「なぜ自分はこの数字なのか」を1行書いてみてください。書けなければ、その目標は、まだ自分の目標になっていません。

2. そもそも届かない目標を立てていた

会社の目標は、たいてい経営の計画から決まります。ここまで売上を上げないと、給料も上げられないし、会社を続けられない。その数字を、部署や人に分けたものが目標です。

それでも、無理なものは無理。そう言いたくなる気持ちは分かります。ただ、「無理だ」で止めてしまうのも、やはり現実から目をそらすことでした。

無理だと感じたら、どこが無理なのかを分けます。期限が短すぎるのか、額が大きすぎるのか、やり方が合っていないのか。分ければ、期限を延ばす、やり方を変える、という次の手が見えてきます。

1年の目標を1か月ごとの数字に分けて、気合いでは届かない差を先に見つける方法は、こちらに書いています。

3. 届く人の考え方と動き方が、自分になかった

できる人は、できます。目標を大きく超えていく人もいます。

その差はどこにあるのか。当時の僕には、目標に届くための考え方が無く、動き方も伴っていませんでした。能力が追いついていなかった、と言ってもいいと思います。

ここで役に立ったのが、理由を「自分では変えられない理由」と「自分で変えられる理由」に分けることです。

自分では変えられない理由は、景気や天気、近くに競合のお店ができた、というようなものです。自分で変えられる理由は、調べ方が甘かった、決めるのを先送りした、というようなものです。

変えられない理由は、知っておけば備えられます。変えられる理由は、書き出せば次に直せます。どちらも、書き出すまでは見えません。

目に見える問題から原因をさかのぼって、打ち手を選び直す手順は、こちらで詳しく書いています。

4. 目標がぼんやりしていた

目標は、具体的なほど届きやすくなります。具体的にすると、何をどうすれば届くのか、道筋が立てやすくなるからです。

僕の「2年後に開業」は、まさにぼんやりした目標でした。期限はあっても、どこで、誰に向けて、どのくらいの広さのお店を開くのかが無い。期限しか決まっていない目標は、今日やることを教えてくれません。

ぼんやりした目標:いつか、自分のお店を開きたい。

具体的な目標:2年後の春に、カウンター8席のお店を、いま住んでいる街の駅から歩ける場所で開く。そのために毎月の貯金の額を決め、月に2軒、同じくらいの広さのお店の店主に話を聞く。

2つ目まで書けば、今月やることが決まります。

当時の僕は、数字がとにかく苦手でした。だから、目標を数字で書くところから練習し直しました。

開業の前に、失敗した理由を集める4つの方法

「失敗した理由を集める4つの方法」という見出しの図解で、1枚の大きな枠に「つまずいた話を聞きにいく」「自分との違いを書き添える」「小さな失敗を1行で残す」「紙の上で失敗しておく」の4つの項目がチェックの印つきで並んでいる。下の帯に「どれも、お金はほとんどかからない」。

ここからは、これから開業や起業をする人、個人事業主として始めたばかりの人が、すぐにできることです。どれも、お金はほとんどかかりません。

1. 同じ業種で、やめた人やつまずいた人に話を聞く

聞くのは、何をしてうまくいったかより、どこでつまずいたかです。大まじめにやって、それでもうまくいかなかった話ほど、役に立ちます。

たとえば、こんなふうに聞いてみてください。

  • 開業してから、いちばん後悔していることは何ですか
  • 開業の前に知っていたら、やらなかったことは何ですか
  • 思っていたより、お金や時間がかかったのはどこですか

成功談は、聞かなくても向こうから流れてきます。失敗談は、こちらから聞きにいかないと集まりません。

2. 聞いた失敗談には、その人と自分の違いを書き添える

失敗談も、そのまま自分に当てはめると、成功談と同じ落とし穴にはまります。

聞いた話の横に、その人と自分で同じところと違うところを書き添えます。開いた場所、使えたお金、開いた時期、手伝ってくれる人の数。

条件が自分に近い失敗ほど、自分にとって大事な「事故多発」の看板です。

3. 自分の小さな失敗を、その日のうちに1行で残す

他人の失敗談と同じくらい役に立つのが、自分の失敗の記録です。大きな失敗をしてからでは遅いので、小さなうちに書いておきます。

失敗の記録に書く5つのこと
  • 日付
  • やったこと
  • 結果(できるだけ数字で)
  • なぜそうなったか(1行で)
  • 次に変えること

僕の出張料理なら、こうなります。やったことは、出張料理のサービス。結果は、日曜と祝日がまるごとつぶれて、収益にならなかった。

理由は、かかる時間に対して、入ってくるお金が少なすぎたこと。次に変えることは、手を広げずに1つに絞ることです。

書くのは夜でかまいません。僕が自分との約束として続けてきたことの1つにも、夜の日誌があります。

4. お金をかける前に、紙の上で失敗しておく

生ハムの輸入販売は、計算してみたら利益が売上の1割に届かず、始める前にやめました。2年間の失敗の中で、お金をかける前にやめられた数少ない失敗です。

お店を借りる前に、1か月に入ってくるお金と出ていくお金を、紙に書き出してみてください。家賃、材料、人を雇うなら給料、そして自分の生活費。

そのうえで、お客さんが思っていた半分しか来なかったら、何か月もつかを計算します。

紙の上の失敗は、何度しても、お金がかかりません。お店を借りてからの失敗は、1回ごとに、家賃と時間が出ていきます。

開業届や青色申告など、個人事業主として始めるときの手続きは、こちらにまとめています。

失敗の数は、続けた人にしか貯まらない

失敗しながらも、続けてきたことがある

2年間、失敗ばかりでしたが、1つだけ、胸を張れることがありました。失敗しながらも、やめずに続けてきたことがあったんです。

開業奮闘記が、その1つ。もう1つが、トイレ掃除です。会社員のころから、出勤したらトイレを掃除する。これを10年以上続けてきました。

誰かにほめられるわけでもないことを、続けられた。その事実が、「自分は、やると決めたことはできる」という自信になりました。

やると決めたことを続けられるなら、あとは、何をやるかを正しく選べばいい。正しく選ぶための近道が、何をすれば失敗するかを知ることでした。

当時の僕は、半分開き直って、こう考えていました。自分はいま、成功するために、たくさんの失敗の実験をしている。失敗した理由を集めている最中なんだ、と。

成功曲線は、最初の低いところが長い

この考え方を支えてくれたのが、石原明さんの「成功曲線」です。石原さんのポッドキャスト番組『経営のヒント』を通勤中に聞いていて、知った考え方でした。

正しいやり方で続けていれば、最初はなかなか成果が出なくても、ある時点から急に伸びていく。多くの人は、思い描いていた伸び方と現実の差を見て、低いところで「もうだめだ」とやめてしまう。

僕の最初の2年は、まさにその低いところでした。目に見える成果は、ほとんどありません。それでも、悲観はしていませんでした。

結局、レストランは開いていません。ただ、レストランの資金を貯めるつもりで始めたホームページ制作が、いまの僕の仕事になりました。

ココナラのWeb制作では、約20,000件の中でランキング全国1位を200回以上いただき、これまでに400件以上のホームページの制作と支援に関わってきました。

ホームページの相談でも、失敗の話はたくさん聞きます。200万円かけて作ったのに更新ができない、制作会社もつぶれてしまった。そんな相談を、これまでに何十件も受けてきました。

その失敗の理由を知っているから、作る前に何を決めておけばいいかが分かります。失敗した理由を集めることは、いまも僕の仕事の一部です。

まとめ|成功の秘訣より、失敗した理由を集める

  • 成功の要因は1つや2つではない。成功談をそのまままねしても、同じ結果になるとは限らない
  • 失敗した理由は1行で書けることが多い。他人の失敗談は、自分の選択肢を1つ減らしてくれる
  • 目標に届かない理由は、「自分で決めていない目標」「届かない目標」「考え方と動き方の不足」「ぼんやりした目標」の4つに分けて書き出す

日本政策金融公庫の融資を受けて2016年に開業した企業のうち、「飲食店、宿泊業」では14.7%が、2020年の年末までに廃業していました。その1軒1軒の理由は、数字の中にはありません。

今日やることは1つです。最近うまくいかなかったことを1つ選んで、「なぜそうなったか」を1行で書いてみてください。

自分の失敗を書き出すのは、気持ちのいい作業ではありません。2年分の失敗を並べたときの僕は、自分にあきれていました。

それでも、失敗した理由は、集めた人の手元にしか残りません。9回の負けに理由をつけておけば、10回目は、少しだけ違う負け方ができます。そうやって負け方を変え続けた先に、1回の勝ちがあるのだと、僕は思っています。

開業したあと、飲食店がお客さんに見つけてもらう方法は、こちらに書いています。

出典

  • 日本政策金融公庫 総合研究所「『新規開業パネル調査』〜アンケート結果の概要〜」(2021年12月21日)https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/panel_211221.pdf
  • 石原明『トップ3%の会社だけが知っている儲かるしくみ』(中経出版・中経の文庫、2012年)
  • 柳井正『一勝九敗』(新潮社、2003年)
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