食品スーパーのポジショニングに学ぶ、ビジネスの生存戦略

食品スーパーのポジショニングに学ぶ、ビジネスの生存戦略

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「スーパーのポジショニング戦略がおもしろいな…」

そう気づいたのは、休日に、家族で買い物に出かけたときのことでした。

僕が住んでいる東京八王子近隣には、いくつもの食品スーパーがあります。車を使って30分圏内に行けるとことに絞っても、約30店舗。系列店別のブランドでいうと9社。なぜ、面白いかというと、ブランドごとに売っているものやサービスの特徴、特色が違うんですよね。つまり、僕たち消費者から選ばれるためにターゲットを明確にし、独自の戦略を持っていることがわかってきました。

そこで、遊びがてら、各社のポジショニング戦略を以下のように5つに分類してみたんです。

  • 利便性強化型
  • 大容量・低価格型
  • 総菜強化型
  • 料理好き特化型
  • 地域特化型

ここからさらに「お菓子充実型」「試食充実型」など細分化することもできますし、他の地域だとまた違った分類の方が適しているかもしれません。また、この分類には、イオンなどの大手総合スーパーは含めておらず、中規模程度までのスーパーマーケットを対象にしています。

やはり、僕らのようなスモールビジネスに参考となるのは、力のある大手にシェアを奪われないために、どこで戦うかを決め、どんな価値を提供するのかを明確にすることが大事なのではないか、と考えるからです。そこで今回の記事では、食品スーパーのポジショニング戦略を分析し、それをフリーランスや個人ビジネスにどう応用できるかを考察してみました。

もしあなたが「どうやったら自分のビジネスが選ばれるのか?」「どんなポジショニングを円卓すれば生き残れるのか?」と悩んでいるなら、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

スーパーのポジショニング戦略:5つのタイプ

日本のスーパーマーケット

日本国内にスーパーマーケットは、約23,000店舗(2025年2月現在)あるそうです。でも、そのうち100店舗以上のスーパーはおよそ1割程度なんですよね。つまり、ほとんどが、100店舗以下のスーパーだということです。

そしてここ、東京八王子においても地元のスーパーをはじめ、地域のスーパーが林立し、それぞれがポジションを確立することで、競争に埋もれない工夫をしています。八王子において、僕が観察した中では、スーパーのポジショニングは大きく5つのタイプに分類できると考えました。

まずは、その5つのタイプについて、簡潔にまとめていきましょう。

1.利便性強化型

このタイプのスーパーは、一人暮らしや高齢世帯のために、小分けパックや個食対応の食材、総菜を充実させて、さらに自宅まで配送するサービスなどを導入することで、地域内の生活の利便性を支える工夫をしています。

ターゲットはもちろん、高齢世帯単身世帯。八王子には大学や短大が21校もあり学生の単身世帯も多い一方、古くから暮らしている世帯が高齢化してきています。そのため、地域一番のスーパーはこの路線に舵をきったものと思います。年々、配達エリアを拡張していることから、そうした需要が確かにあるのでしょう。

選ばれる軸をひとことでいうと「単身・高齢世帯」×「生活の利便性」

2.大容量・低価格型

このタイプのスーパーは、業務スーパーのように大容量で低価格にしたり、倉庫兼売り場にして、店舗スペースを有効活用することで、お得感を打ち出しています。コストコもある意味では、このタイプに近いといえるでしょう。業務スーパーは飲食店向けの大量販売をしながら、一般家庭にも「まとめ買いでお得」「プロ御用達の食材を家庭で」といった価値を提供しています。

ターゲットは、まとめ買いでコストを抑えたい家庭、小さな飲食店や業務用需要のある人になってきますね。また、業務スーパーもコストコも、普通のスーパーでは販売されていない調味料や海外の食品も取り揃えているので、のちほど分類する「料理好きのこだわり層」にもマッチしています。

選ばれる軸をひとことでいうと「まとめ買い」×「低価格」

3.総菜強化型

このタイプのスーパーは、忙しい共働き世帯や単身世帯に向けて、総菜コーナーの品数や質を拡充し、お手軽感を提供するポジショニング。店舗内で調理することで、もはや「スーパーの中にデパ地下がある」レベルの店舗も増えてきています。専門のパン屋を誘致して、コンビニで売られているようなパンではなく、店舗内で焼いた本格的なパンを販売するのもこのタイプ。実際、焼き魚ひとつとっても、家のグリルで焼くより美味しいレベルのスーパーがあります。

ただ、このタイプは、消費者ニーズの高まりがあると見えて、他のポジショニングを取るスーパーでも力を入れてきています。コンビニも力を入れている分野なので、競争は熾烈。今後は、テレビ取材やSNS映えするような総菜のメニュー開発や、もっと尖った訴求ができないと、総菜強化だけで勝ち抜くのは難しいかもしれません。

ターゲットは、料理をする時間がない人料理が苦手な人共働き世帯や子育て世代

選ばれる軸は「手軽さ」×「総菜の種類と質」

4.料理好き特化型

このタイプのスーパーは、他のスーパーにはない生鮮食材や、調味料、冷凍食品などを揃えて、料理好きに狙いを絞っています。私事で恐縮ですが、僕がよく行くスーパーもこのタイプ。僕は北海道函館に7年半くらしていて、八王子ではなかなか函館に売っているような生鮮食品を買うことができず不満だったのですが、このスーパーを知ってからは、それなりに満足できるようになりました。

たとえば、北海道では寒くなると「ラムしゃぶ」が我が家の定番でした。生のラム肉や北海道でしか見かけなかったラムしゃぶのたれも手に入ります。さらにカモ肉や馬刺しを始め、肉や魚の種類が豊富で、普通のスーパーでは手に入らないものが売っているので、料理好きの心をつかんでいます。

ターゲットは、料理好きな人、高品質・希少な食材に価値を感じる人、普通のスーパーでは満足できない人などのこだわり層になります。

選ばれる軸は「料理好き」×「他では売ってない食材」

5.地域特化型

このタイプは、昔ながらのスーパーで、地域密着型の商売を続けているのが特徴。決して目新しさや特色はないが、地元の人にとって「いつもの安心できるスーパー」として機能しています。どこに何があるのか目をつむっていてもわかる人にはわかる、比較的年齢層高めの消費者が多いスーパーです。

ここ数年でも、閉店したお店もあり、トレンドとしては下降傾向にありますが、八王子は地元愛が強いですし、地域コミュニティとして機能しているスーパーもまだまだあると考えています。

ターゲットは、長年住んでいる地元の人や顔なじみの店員がいることに安心感を持つ人、大手よりも地元にお金を落としたい人。

選ばれる軸は「地元コミュニティ」×「安心感」

スーパーのポジショニングマップを視覚化してみる

スーパーのポジショニング戦略を5つに分類しましたが、それぞれがどのような住み分けをしているのでしょうか?

より視覚化するために、座標軸でまとめてみました。

価格 × 品揃え / 価格 × 希少性

価格 × 品揃え / 価格 × 希少性で示したスーパーマーケットの座標軸

上の座標軸は「価格×品揃え」「価格×希少性」を判断軸と捉え、どのようにポジショニングしているかを示しています。

価格が高いスーパーは、特別な価値を提供し、こだわり層をターゲットに。価格が安いスーパーは、コストパフォーマンスを重視し、節約志向の消費者に向けた戦略を取る。品揃えが多いスーパーは、選択肢の幅を強みにし、幅広いニーズに対応。品揃えが少ないスーパーは、特定のターゲット層に最適化された商品ラインナップを展開する。

これが「価格×品揃え」で見たときの住み分けですが、「希少性」という視点で見ると、少し様相がかわります。希少性が高いスーパーは、他にはない価値を提供することで、価格を高く設定できますが、希少性が低いスーパーは、日常の買い物需要に応じるため、価格競争に巻き込まれやすい

このように座標軸にしてみると、どこに経営資源やリソースを集中すべきかが明確に見えてきます。ポジショニング戦略の目的は、マーケットを分割して、出来る限り価格競争を避けながら、それぞれの強みを活かしたポジショニングを確立すること。

つまり、どこで戦うか、という指標となるわけですね。

利便性×品揃え / 総菜レベル×品揃え

利便性×品揃え / 総菜レベル×品揃えで示したスーパーマーケットの座標軸

この座標軸では、スーパーの利便性と、総菜レベルに品揃えの豊富さという横軸を掛け算した時の座標軸を分析しています。

たとえば、「利便性強化型」スーパーは、手軽さを求める層に向けて宅配や時短商品を提供し、一方で「料理好き向け」スーパーは、こだわりの食材を揃えているが、利便性はそこまで高くしないで済む戦略を取ることができる。

また、総菜の種類や質、という軸で考えると、「総菜強化型」スーパーは、コンビニやデパ地下を超えるクオリティを目指し、即食ニーズに対応すべきですし、一方で、「大容量・低価格スーパー」は総菜にはそこまで力を入れず、まとめ買いのコストパフォーマンスを重視すればいい。

こうして、各社がそれぞれのポジショニングを明確にしていく先に、共存共栄があり、僕たち消費者にとっても、その時々のニーズや好みに応じた選択がしやすくなるわけですね。

まとめ

ポジショニング戦略

ここまで見てきたように、近隣のスーパーを観察するだけでも、それぞれが「どの市場で、どんな顧客に、どんな価値を提供するのか?」を明確にしていることがわかります。詳細はお伝えしませんが、実は、このようにポジショニングを明確にしていけていないスーパーは、衰退しているのが現実です。

日本はすでに少子高齢化社会に突入して、時代の変化は凄まじいものがあります。りんごひとつとっても、1個100円が当たり前だったのに、いまでは250円しますから、ものの値段だけでもずいぶん変わりました。そうした中で生き残るために、どんなポジショニング戦略をとるのか。僕らのようなスモールビジネスにおいても、どこで戦うのか、誰をお客さんにして、どんな価値を明確にするのか、ということが、戦略上、極めて重要です。

ただ単純に「いいサービスを提供すれば売れる」わけではなく「誰にとって、どんな価値があるのか?」きちんとポジショニングの軸を定めることで、競争を避けながら選ばれる存在になれるのです。

今回のスーパーのポジショニング戦略をヒントに、自分のビジネスもどこで戦うのかを見直してみると、新しい発見があるかもしれません。参考になれば幸いです。

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