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試着ボタンを押した人は、カートに入れる確率が約3倍。買い物客120万人ぶんの集計が、9月10日に出ました。
ただ、この数字を見て試着や3Dに手を出すのは、順番が違うと思っています。
香水、コスメ、食品、寝具、家具。ネットで売りにくい商品には、共通点があります。香りも、手ざわりも、大きさも、画面の向こうには届かないということです。
写真をきれいに撮っても、枚数を増やしても、「で、実際どうなの?」が残る。
この記事では、9月に出たバーチャル試着(画面の中で身につけて試せる機能)の集計と、返品に関する調査、そして商品ページを人に触ってもらって調べた研究を並べます。
そのうえで、僕がクライアントに提案している順番を書きます。結論を先に言うと、3Dや試着に手を出す前に、ほとんどのページには直る場所が残っています。
バーチャル試着の「カート3倍・購入50%増」は、何を測った数字か


2026年9月10日、バーチャル試着を提供する DRESSX が、自社のレポートを出しました。ファッション通販の買い物客120万人ぶん、216か国・83言語のデータです。
数字は3つです。
- 試着を使った人は、カートに入れる確率が約3倍
- 買うところまで進んだ割合が50%高い
- 見た商品ページの数が7倍
数字だけ見れば強い。ただ、この記事で強調したいのは読み方のほうです。
この比較は「導入前と導入後」ではない
レポート本文にこう書かれています。「this analysis compares shoppers who engaged with Virtual Try-On against those who did not(この分析は、バーチャル試着を使った買い物客と、使わなかった買い物客を比べている)」。
つまり、同じ店で機能を入れる前と後を比べたものではありません。
そもそも買う気が強い人ほど、試着ボタンを押します。その差を分けられていないので、「試着を入れたから3倍になった」とは読めない、というのが僕の見方です(ここは解釈です)。
さらに、これは試着機能を売っている会社が出した自社集計です。計測期間の記載もありません。
では、この数字は使えないのか。そうではありません。触れない商品を買うとき、人は「手元で確かめられる何か」を探している。この方向性は、次の調査とも噛み合います。
返品が3年続けて減っている。買う前の確認が重くなった
UX(使い勝手)の研究機関 Baymard Institute が、2026年8月4日に公開した調査があります。アメリカのオンライン買い物客1,083人に聞いたものです。
過去12か月に1つ以上返品した人は52%。ここまでは普通の数字ですが、推移が面白い。
複数回返品した人の割合は、2024年44% → 2025年34% → 2026年28%と下がり続けています。逆に、1年間で一度も返品しなかった人は26%から44%へ増えました。
調査を書いたアーニャ・メーアヴァルトさんは、理由を2つ並べて、どちらとも決めていません。買い間違いが減ったのか、それとも返品期限が厳しくなり手数料もかかるので、合わない物を諦めて持ち続けているだけなのか。
原因は決められない。それでも、買う側の体感は1つです。返しにくいなら、買う前に確かめたくなる。
商品ページに求められる仕事が、この3年で少し重くなった、と考えるほうが実態に近いはずです。
3Dや試着の前に、ほとんどのページで直る場所がある
ここで、同じ Baymard が2018年に出した調査を持ってきます。商品ページを実際に人に触ってもらい、どこで詰まるかを見たものです。
「この画像だと、どんな香りなのか、結局書いていない」
ハンドクリームのページを見ていた被験者の言葉が、そのまま記録されています。
Well it doesn’t really say that it’s a certain scent.
(この画像だと、どんな香りなのか、結局書いていない)
別の人は、切り取られすぎた商品写真を見てこう言いました。
They should caption some of these, because I have no idea what the hell that is.
(説明を付けるべきだ。これが何なのか、まるで分からない)
そして調査では、いちばん売れている商品の画像に説明の文字や図を添えていないサイトが52%ありました。これはサイトの割合であって、ユーザーの割合ではありません。
香りが伝わらないのは、写真の枚数でも画質でもない。画像に、言葉が添えられていないからです。
大きさも、同じ理由で伝わっていない
もうひとつ、よくあるのが大きさです。手のひらに乗せた写真が1枚あるだけで解決する場面を、僕は何度も見てきました。
一般的には「商品写真は多いほどよい」と言われます。実際は、枚数より並べる順番と、そこに添える言葉で決まります。20枚あっても、20枚とも同じ角度の無言の写真なら、判断材料は1枚ぶんです。
この話は、ポッドキャストの第72回「3Dホームページは売上につながる?研究からわかった使いどころ」でも話しています。
スモールビジネスがやる順番は、3つ


僕がクライアントに提案する順番は決まっています。安いものから順にやります。
1|画像に一言そえる(費用ゼロ)
「ベルガモットとムスク。夜、洗いたてのシャツに近い香り」
写真の下に1行。これだけで、読み手が想像できる幅が変わります。文章は長くしません。1枚につき1行で十分です。
2|比べられるものを1枚入れる(費用ゼロ)
手のひらに乗せた写真、ペットボトルと並べた写真、部屋に置いた写真。
「実物を見ないと大きさが分からない」という不安は、たいてい写真1枚で消えます。
3|そのうえで、体験を1つ置く
回して見られる。押すと中身が見える。歩いて回れる。3Dや試着の出番は、ここまで来てからです。
順番を逆にすると、きれいに動くだけのページになります。動きに目を奪われて、肝心の文章が読まれない。これは僕自身が3Dの試作で何度も通った失敗です。
「うちは商品が地味だから」という場合
よく言われます。ただ、地味な商品ほど、買う前の不安は具体的です。サイズ、におい、手入れの手間、どのくらい持つか。
その具体的な不安に、写真と一行で答えているページは、実はほとんどありません。派手さで勝つ必要はなく、答えている数で勝てます。
実際に変わったのは、問い合わせの中身だった
福岡県久留米市の丸よしさん(布団・ベビー用品のレンタル。井ノ口さん)は、ホームページの公開から9か月ほどで、問い合わせが体感で2〜3倍になりました。公開してすぐ動いたわけではなく、最初の1〜2か月は大きな変化がなく、3か月目あたりから増え始めています。
本人がいちばん実感していたのは、件数より中身の変化でした。「いくらですか?」と料金だけ聞かれていたのが、「この日程で借りられますか?」という具体的な相談に変わった。
愛媛県宇和島市のこもこもShopさん(海面養殖の魚の通販。福島さん)も同じです。公開から1か月あたりで、問い合わせの温度が変わりました。「3枚おろしはできますか?」「年末年始も営業していますか?」。買う前提の質問です。
どちらも、特別な機能を足したわけではありません。伝わっていなかったことを、伝わる形に置き直しただけです。
まとめ:順番を守れば、お金はほとんどかからない
- バーチャル試着の数字(カート約3倍・購入50%増)は、使った人と使わなかった人の比較。導入の効果そのものではない
- 返品の頻度は3年下がり、1年間まったく返品しなかった人は26%から44%へ。買う前の確認が重くなっている
- それでも、いちばん先に直すのは画像に添える一言。売れ筋の画像に説明が無いサイトは52%ある
丸よしさんの問い合わせが体感で2〜3倍になったのも、こもこもShopさんの質問が「いくらですか」から「この日程で借りられますか」に変わったのも、順番を守った結果です。
今日できることは、商品写真を1枚選んで、その下に1行書くこと。それだけで、明日から判断材料が1つ増えます。
自社の商品ページで何から直すか迷ったら、公式LINEから相談してください。ホームページの改善に使える無料のアプリも、LINEで配布しています。
出典
- DRESSX「AI Virtual Try-On Report 2026: Conversion, Returns & Fashion E-Commerce Insights」(2026-09-10)https://dressx.com/b2b/vto-report
- Baymard Institute「Ecommerce Quantitative UX: 3 High-Level Trends & Takeaways from 20+ Charts」アーニャ・メーアヴァルトさん(2026-08-04)https://baymard.com/blog/ecommerce-quantitative-ux-insights-2026
- Baymard Institute「Product Page UX: Include Descriptive Text or Graphics for Some Product Images」エドワード・スコットさん(2018-11-28)https://baymard.com/blog/product-images-descriptive-text

