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誰も欲しがらないものを、いちばん簡単に作れる時代。
最近、AIでホームページを作ってみた、という話を本当によく聞くようになりましたね。ChatGPT、Gemini、Claude Code、Codex。やりたいことを文章で打ち込めば、それらしいページが数分で出てきます。
冒頭の一文は、レニー・ラチツキーさんが2026年9月29日に自身のニュースレター『Lenny’s Newsletter』で公開した記事「All of the Lenny & Friends Summit talks are now online!」の中で、見出しとして置いていた言葉です。主催したサミットの講演を、すべて公開したという知らせの記事でした。
原文はこうです。
It’s never been easier to build something nobody wants.
僕も9月21日に『AIで作る3Dホームページの教科書』を出したばかりです。作る手間が一気に軽くなったことは、身をもって感じています。だからこそ、この一文には手が止まりました。
作るのが簡単になったぶん、誰に向けたものかを決めないまま、ものすごい速さで公開できてしまう。
この記事では、サミットの登壇者たちの言葉を手がかりに、AIで作れる時代に、ホームページで差がつく3つの仕事を整理します。後半では、東京・新宿のYouTube制作会社で実際に起きたことと、作り始める前に決めておきたいことを、具体的に書きます。
作るのが簡単になるほど、手を動かす前と後の仕事が残る
レニーさんが挙げた3つのこと
見出しのすぐ後に、レニーさんはこう書いています。
As building gets easier, choosing the right thing to build, knowing what good looks like, and caring enough to fix it are becoming increasingly important for successful product teams.
作るのが簡単になるほど、うまくいく商品づくりのチームにとって、次の3つがますます大事になっている、という内容です。
- 何を作るかを、正しく選ぶこと
- 良いとはどういう状態かを、知っていること
- 直すところまで、気にかけること
何が言いたいかというと、この3つには「速く作ること」が1つも入っていないんです。どれも、手を動かす前と後の仕事なんですね。
「ダメなアイデアまで出せるようになった」
同じ節には、登壇者たちの言葉が並んでいました。その1つがこれです。
And now we can ship all our bad ideas, like congratulations to us.
How I AIのクレア・ヴォさんの言葉です。これでダメなアイデアまで全部世に出せるようになった、めでたいことだ、という皮肉まじりの一言です。
ホームページで言えば、誰に向けたページなのかを決めないまま、思いついたその日に公開できてしまう、ということです。
作るのが大変だった頃は、その手間そのものが、ブレーキの役目をしていました。いったん立ち止まって考える時間が、勝手に生まれていたわけです。そのブレーキが、いまは外れています。
ホームページに置き換えると、残る仕事は3つ


レニーさんの3つを、スモールビジネスのホームページに置き換えてみます。
1つ目:何を作るかを選ぶ=誰に何を言うかを、作る前に決める
ホームページは設計が9割。見た目より設計だと、僕は7年ほど前から言い続けてきました。ここで言う設計とは、作り始める前に、誰に何を言うかを決めておくことです。
ここを決めないまま作ると、デザインの良し悪しでしか判断できなくなります。「なんとなくおしゃれ」「なんとなく古い」。判断の手がかりが、それしか残らないんです。
僕は20代のころ、イタリア料理店で店長とソムリエをしていました。
ワインリストにどれだけ良い銘柄が並んでいても、お客さんの話を聞かずに1本は選べません。前菜に何を頼んだのか、今日は誰と来ているのか、重めが好きなのか軽めが好きなのか。そこを聞いて、ようやく1本に絞れます。
AIは、そのリストを一瞬で何十本でもそろえてくれます。でも、今夜のお客さんに合う1本を選ぶのは、話を聞いた人の仕事です。
2つ目:良い状態を知っている=「良い」かどうかを、お客さんの反応で決める
決済サービスStripeのケイティ・ディルさんは、こう話しています。
They’re not impressed if we animated something with Three.js and Blender in 30 minutes. They are impressed by us solving their problems and clever touches in the details that show we anticipated their needs.
こちらがThree.jsとBlender(どちらも3Dを作るためのツール)で、30分で何かを動かしてみせても、お客さんは感心しない。感心するのは、困りごとが解決していて、先回りしてくれたと分かる細部の工夫があるときだ、という内容です。
作り手は、どうしても作り手の目線で「良い」を決めてしまいます。動いた、速くできた、きれいにできた。でも、お客さんが見ているのは別のところです。自分の困りごとが片づくか。聞きたかったことに、先に答えてくれているか。
Google検索のロビー・スタインさんの言葉も、同じ方向を向いています。
If almost anything you can think of can get built, it’s more clear to me than ever that the actual true value of PM is around judging. It’s around taste. It’s around doing something extremely well.
思いつくものがほぼ何でも作れるなら、PM(商品づくりの責任者)の本当の価値は判断することにあると、これまで以上にはっきりしている。センスにある。何かをとびきりうまくやることにある、という内容です。
ホームページに置き換えるなら、公開した後に何が起きたら成功かを、先に決めておくことだと思っています。問い合わせの数なのか、問い合わせてくる人の顔ぶれなのか。そこが決まっていれば、良し悪しを見た目ではなく、お客さんの反応で判断できます。
3つ目:直すまで気にかける=公開した日を、仕事の始まりにする
Linearのカーリ・サーリネンさんは、こう言っています。
The output is not the product. Customers are not buying the lines of code.
出来上がったものが、商品なのではない。お客さんは、コードの行数を買っているわけではない。
ホームページも同じです。納品したページのファイルそのものが商品なのではありません。お客さんが手に入れたいのは、公開したあとに起きる変化のほうです。
だから、公開して終わりにはできません。どのページで読むのをやめられているのか。どんな言葉で問い合わせが来ているのか。それを見て、直す。
AIのおかげで、作る時間は短くなりました。そのぶん浮いた時間を、公開後に直すほうへ回せるかどうか。差がつくのは、そこだと思っています。
3Dホームページを「新しいだけ」で終わらせない
Everyのダン・シッパーさんは、こう問いかけています。
Is this useful or is it just new? It’s a big thing you need to differentiate.
これは役に立つのか、それともただ新しいだけなのか。そこを見分けることが大事だ、という問いです。
3Dのホームページは、まさにこの問いを向けられる分野だと思います。
3Dの一番の価値は「体験」
教科書を出したばかりなので、ここははっきり書いておきます。3Dの一番の価値は、体験です。
見た人がその世界に入り込んで、物語に吸い込まれる。気づいたら長く見ていた、ということが起きる。まだ使ったことのない商品やサービスの世界観に、先に浸ってもらえる。
お客さんがホームページの前で止まる理由を、僕は4つの壁(見ない・読まない・信じない・行動しない)で考えています。このうち、見ない壁と読まない壁をいちばん越えやすいのが3Dです。シナリオが良ければ、行動しない壁まで越えられます。
動くことと、役に立つことは別
ただし、ケイティ・ディルさんの言葉のとおり、30分で動かしたこと自体に、お客さんは感心しません。感心するのは、その体験が自分の困りごとに向けて作られている、と分かったときです。
誰の、どんな困りごとに向けた体験なのか。そこを先に決めてはじめて、3Dは「新しいだけのもの」から「役に立つもの」に変わります。
誰に何を言うかを先に決める。3Dでも、この順番は変わりません。
この話は、ポッドキャストの第72回「3Dホームページは売上につながる?研究からわかった使いどころ」でも話しています。
事例:動画のプロが、作る前に決めていたこと
東京・新宿に、株式会社ユチュブるという会社があります。YouTubeの企画・撮影・編集・運用までを一気通貫で手がける会社です。
代表の春名雄太さんは、3,500本以上の動画を作ってきたプロです(ぞろ屋の実績ではなく、春名さんご自身の実績です)。そのユチュブるさんのホームページのリニューアルを、ぞろ屋でお手伝いしました。
トップの最初の画面に置いたのは「売上」だった
春名さんの会社は、再生数ではなく売上を伸ばすことに重きを置いています。そこで、トップページの最初の画面には、この言葉を置きました。
「チャンネル登録数ではなく、売上が増えるYouTubeを。」
カーリ・サーリネンさんの「お客さんはコードの行数を買っているわけではない」と、同じ形をしています。春名さんのお客さんが買っているのは、動画の本数ではなく、その先の売上です。
どんな相手から問い合わせが来てほしいのかも、作り始める前に、戦略マップ(誰に・何を・どう伝えるかをまとめた設計図)で決めていました。
ヒアリングは、正直しつこかったと思います。春名さんには、こう言われました。
ここまでヒアリングするんだって驚きました。自分も動画を作る上でヒアリングはするんですけど、想像の何倍も細かくて、もう幼少期の頃から歴史を追っていくみたいな形で。
公開から2ヶ月経たずに、狙った相手から問い合わせが来た
リニューアルから2ヶ月経たないうちに、医療系の大きな協会から、ホームページ経由で問い合わせが入りました。対談を収録したその日の午前中に、その協会と打ち合わせをしてきたそうです。
しかも狙い通り、担当者レベルで、しかも女性。綺麗にはまりました。
すごいですよね。戦略マップに書いた相手が、そのまま問い合わせてきたわけです。対談の席で、僕も思わず「すごいな」と声が出ました。
以前は、営業メールや「とりあえず連絡してみよう」くらいの温度の問い合わせが多かったそうです。それが、「お願いしたい」という前提の問い合わせに変わりました。
もし作り始める前に「誰に」を決めていなかったら、狙った相手からこの問い合わせが来ることはなかったと思います。速く作ったからではなく、作る前に決めていたからです。
ちなみに、動画で売上を作っている春名さんご本人が、予算が限られているなら動画より先にホームページを整えたほうがいい、と対談で話しています。気になる方は春名さんとの対談動画もご覧ください。
作り始める前に、紙に書いておく5つのこと


AIで作り始める前に、次の5つを1行ずつ書いてみてください。どれも、作り終えてから決めたのでは遅いものです。
1. 見てほしい人を、1人だけ思い浮かべる
「お客さん全員」ではなく、具体的な1人です。どんな仕事をしていて、いま何に困っているのか。ユチュブるさんの場合は、問い合わせてほしい相手を「担当者レベルの女性」というところまで決めていました。
2. その人の困りごとを、その人の言葉で1行書く
自分たちが言いたいことではなく、その人が検索窓やAIに打ち込みそうな言葉で書きます。ここが書けると、ページの1行目が決まります。
3. 公開した後に、何が起きたら成功かを決める
問い合わせの数なのか、問い合わせてくる人の顔ぶれなのか、問い合わせの中身なのか。これが決まっていないと、公開後に「良かったのかどうか」を見た目で判断することになります。
4. 3Dや動きを入れるなら、誰のどの困りごとのための体験かを書く
1行で書けないなら、まだ入れる段階ではありません。書けたら、その1行が3Dのシナリオの出発点になります。
5. 公開日と一緒に、最初に見直す日を決めておく
公開日をカレンダーに入れるとき、見直す日も一緒に入れておきます。直すまで気にかける、を気合いではなく予定にしておくためです。
まとめ
- 作るのが簡単になるほど、何を作るかを選ぶこと、良い状態を知っていること、直すまで気にかけることが大事になる(レニー・ラチツキーさん・2026年9月29日)
- ホームページに置き換えると、誰に何を言うかを作る前に決める/「良い」かどうかをお客さんの反応で決める/公開した後に直し続ける、の3つ
- 3Dホームページも同じ。一番の価値は体験で、その体験を誰の困りごとに向けるかを先に決めてはじめて、役に立つものになる
東京・新宿のユチュブるさんでは、作る前に決めていた「担当者レベルの女性」という相手から、公開から2ヶ月経たないうちに、ホームページ経由の問い合わせが来ました。
本音を書いておくと、作る前に決めるのは、作るより面倒です。AIはその面倒を代わりに引き受けてはくれません。ただ、面倒なぶん、ほかの人が飛ばしやすい工程でもあります。差がつくのは、たぶんそこです。
まずは5つのうちの1つ目だけでも、今日、紙に書いてみてください。
お客さんがどこで迷い、何を知りたくて、どの順番で動くのか。そこを先回りして書き出したい方へ。お客さんが知ってから買うまでの気持ちと行動の流れを、一瞬で見える形にしてくれるAIを無料で配っています。公式LINEに登録して「cj」と送ってください。
出典
- Lenny’s Newsletter「All of the Lenny & Friends Summit talks are now online!」レニー・ラチツキーさん(2026年9月29日)https://www.lennysnewsletter.com/p/all-of-the-lenny-and-friends-summit
- 株式会社ユチュブる 代表 春名雄太さん 対談(https://youtu.be/6vzLwuWppX8)

