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2026年5月20日、WordPressが大型アップデート「7.0 Armstrong」を公式リリースしました。
中身を読んで、僕がいちばん最初に思ったのはこれです。
「ここ何年か、ぞろ屋がクライアントに『AIキーは1か所に集約しておきたい』『運用しながら賢くするホームページにしたい』と言ってきた話が、ようやく WordPress 本体の側で叶った」
ただ、もう一段深く読むと、今回のアップデートは「AIが使いやすくなりました」だけで通り過ぎていい話ではありません。PHP要件の引き上げ、Block APIの世代交代、目玉だった共同編集機能の延期。放置すれば、ある日サイトが真っ白になります。
同時に、ここで土台を整えた事業者だけが、半年後・1年後のAI検索の追い風を全部受け取れる、というのが僕の本音です。
このブログでは、WordPress 7.0「Armstrong」の中身を「事業者がいま判断するため」の角度で順に整理し、最後にぞろ屋クライアントの実例と、明日から自分のサイトを見直せるチェックリストを置きます。
WordPress 7.0「Armstrong」が公式にやったこと(事実)
まずは事実から押さえます。
リリース規模と背景
– リリース日:2026年5月20日(当初4月9日予定 → 約6週間延期)
– リリース名:Armstrong(2026年の最初のメジャーリリース)
– リリースリード:Matias Ventura 氏
– テックリード:Ella van Durpe・Mukesh Panchal・Sergey Biryukov の3氏
– コントリビューター:750人以上
– 処理されたCore Tracチケット:419件(うち新機能・拡張76件以上、バグ修正300件以上)
延期の理由は、目玉機能として開発が進んでいたリアルタイム共同編集(RTC)のアーキテクチャ安定性に懸念が出たため。結果として、RTCは7.0から外され7.1に持ち越しになりました(後述)。
公式が示した動作要件
– PHP:7.4以上(推奨は8.3以上)
– MySQL:8.0以上 / MariaDB:10.6以上 を推奨
– ブラウザ:モダンブラウザ前提
PHP 7.2・PHP 7.3 を使っているサイトは、WordPress 7.0の自動更新の対象から外れる。
これは公式アナウンスにある明確な線引きです。ここを後回しにしている事業者は、優先順位を上げてください。
今回の最大の事件:AIがWordPressに「住み込み」で入った
今回のアップデート、押さえるべきは正直この1点だけと言ってもいいです。
WordPressの管理画面に「設定 → Connectors」というメニューが追加され、OpenAI(ChatGPT)・Anthropic(Claude)・Google(Gemini)の3社のAPIキーを、本体側で一元管理できるようになった。
世界のホームページの4割が動いている土台に、AIが住み込みで入ってきた、ということです。
WP AI Client と Connectors API の中身
新しく入ったのは、大きく2つの仕組みです。
ひとつは「WP AI Client」。プロバイダに依存しない `wp_ai_client_prompt()` という関数1つで、テキスト・画像・音声・動画の生成リクエストを各AIプロバイダに送れる、PHP側の統一窓口です。
もうひとつは「Connectors API」。OpenAI・Anthropic・Googleの3社が公式プロバイダとして用意されており、「設定 → Connectors」から接続を有効化します。`wp_connectors_init` フックで第3者プロバイダの追加も可能です。
念のため書いておきますが、これは「AIが勝手に動く」機能ではありません。コネクターを有効にして、対応プラグインを入れて、初めて動きます。安全側に倒した設計です。
旧来の世界と、7.0以降の世界
これまでの「AI連携ホームページ」の構築は、ぞっとする仕事でした。
| 旧来(〜WordPress 6.x) | 7.0「Armstrong」以降 | |
|---|---|---|
| AIキーの管理場所 | プラグインごとにバラバラ | 「設定 → Connectors」1か所 |
| 同じChatGPTキーの登録 | 3〜4か所に同じものを書く | 1か所だけ |
| 機能を1つ追加する手間 | プラグイン1つ追加+キー登録 | コネクタ済みなら本体機能で対応可 |
| AI機能のかぶり | プラグイン同士で重複・干渉 | 統一窓口で整理される |
| 自社専用ワークフロー | 特注プラグイン開発が必要 | code-snippets レベルで組める |
「プラグイン同士のAI機能のかぶり」というやつは、地味にサイトを重くします。これからは本体に統一窓口があるので、プラグイン作者も「AI連携部分は本体に任せて、自分は使う側の機能に集中する」という設計に変わっていきます。
ホームページは「公開して終わり」ではなく、「運用しながら賢くしていくもの」です。その前提に、ようやくWordPress本体が追いついた、というのが今回の本質です。
期待された共同編集(RTC)は7.1へ延期
事前情報では、Googleドキュメントのように複数人が同じ記事を同時編集できる「リアルタイム共同編集(RTC)」が、7.0の目玉とされていました。
ところが、RC3(2026年5月8日発表)でRTCは7.0から外され、7.1サイクルで再評価される予定になりました。
理由:アーキテクチャの安定性、サーバー負荷、未解決の同期バグ。「本番に投入するには、まだ早い」と判断された。
「WordPress 7.0で共同編集が来ます」とクライアントに説明していたWeb制作会社・運用代行会社は、訂正の連絡を入れた方がいいです。
ホームページの編集データはビジネスの生命線です。同期がズレた状態で書き込まれるとサイトが壊れる種類のリスクなので、面白そうだから入れちゃおうで出していい機能ではありません。延期の判断自体は、僕は評価しています。
運用が一段楽になる4つの改善
AIとRTC以外で、日々の運用に効いてくる改善を4つだけ取り上げます。
ビジュアルリビジョン
過去の編集履歴を、タイムラインスライダーで前後に動かしながら見比べられるようになりました。追加されたテキストは緑、削除されたテキストは赤、変更は黄色で色分けされ、ミニマップで長文の変更箇所も即座に特定できます。
「3日前のあの文章に戻してほしい」とクライアントから言われたとき、これまでリビジョン番号を1つずつ開いて比べていた手間が消えます。地味ですが、現場で一番効く改善のひとつ。
Notes機能(ブロック単位のコメント+メール通知)
各ブロックに付箋のようなコメントを残せるようになりました。@メンションを付けると、その人にメール通知が飛びます。
下書きのレビューがWordPress内だけで完結する、というのが運用上のメリットです。Slackで通知して、相手がURLを見失って、もう一度URL貼って……の往復から卒業できます。
Command Palette(コマンドパレット)
`⌘K`(Macは⌘、Windowsは `Ctrl + K`)で、管理画面の全機能を横断検索できるショートカットが追加されました。
VS Codeを触ったことがある人ならピンと来ます。「あの設定どこだっけ」を、メニューをたどらずに名前検索で一発で開ける機能で、管理画面の操作スピードが体感で1段階上がります。
フォントライブラリが独立ページに
Global Styles の深い階層にあったフォント管理が、「外観 → フォント」の独立ページに昇格しました。
特に大きいのは、ブロックテーマ限定だったフォントライブラリが、クラシックテーマでも使えるようになった点。クラシックテーマ運用のスモールビジネスでも、Webフォントの差し替えがUIから完結します。
サイトを壊さないための互換性チェック
ここからは、運用中のサイトを持っている事業者にとって、いちばん事故が起きやすい領域です。読み飛ばしたくなる章ですが、ここを甘く見ると後で泣きます。
PHP 7.4 必須(最優先)
PHP 7.4 が最低必須、推奨は8.3以上。これより古い環境では、自動更新の対象から外れます。
エックスサーバーをはじめとする日本の主要レンタルサーバーは、コントロールパネルからPHPバージョンを切り替えられます。本番反映前に、自分のサイトのPHPバージョンを必ず確認してください。これだけは絶対です。
Block API v3 への移行
新規プラグインの `block.json` は `apiVersion: 3` が必須化されました。古い apiVersion は段階的に警告→将来エラー化される見込みです。
自作ブロックや、開発が止まっているニッチなプラグインを使っているサイトは、ここで足を引っ張られる可能性があります。
DataViews によるカスタムカラム崩れリスク
投稿一覧画面が、React製の DataViews に置き換わる方向で動いています。`manage_posts_columns` フックでカスタムカラムを追加しているプラグインは、表示崩れ・カラムが反映されないリスクがあります。
Rank Math や ACF などの主要プラグインは7.0対応が進んでいますが、社内開発のカスタムプラグインがあるサイトは、ステージング環境での事前検証が必須です。
セキュリティ強化
新規ユーザー登録の画面で、デフォルトロールから「管理者」「編集者」が除外されました(`default_role_dropdown_excluded_roles` フィルターで調整可能)。不特定多数の登録を受け付けているサイトでは、セキュリティが1段上がります。
ぞろ屋からひと言だけ。これらの互換性対応に対応できないプラグインや、テーマ作者と連絡が取れない制作会社にお世話になっている場合、お付き合いを続けてもAI時代に勝てるホームページは作れません。そっと距離を置く判断も、必要になってきます。
AIO・GEO観点での「次の準備」
ぞろ屋では AIO(Google AI Overviewへの最適化)と GEO(ChatGPT・Perplexity・Claudeなどの生成AIに引用される対策)を、明確に分けて発信しています。混同するとブランド毀損なので、ここは厳密に。
WordPress 7.0そのものは、AIOにもGEOにも直接効くアップデートではありません。
ただし、「次の準備」として大きな意味を持ちます。AIOもGEOも、根っこは「サイトの中身を生成AIに正しく読んでもらう」ことで、構造化データ・OGP・FAQスキーマ・LocalBusinessスキーマなどサイト裏側の作り込みが効きます。
WordPress 7.0で「AIの差し込み口」が標準化されたことで、
– ページ保存のたびに、AIにFAQ自動生成させてスキーマに組み込む
– 投稿のサマリーをAIに作らせて構造化データに自動反映
– お客様の声をAIで分類して、関連記事の推薦データに使う
こうした「サイトの自動賢化ループ」が、特注プラグインなしでコア機能だけで組めるようになります。
GEO対策をすでに走らせている事業者にとっては、武器が1つ増えたと考えていいです。
京都・ヤマト産業の現場で起きていること(実装パターン)
抽象論で終わりたくないので、実際にやっているクライアントの話を書きます。
京都にヤマト産業さんという、シロアリ駆除専門の会社があります。社長の中岡さんは2代目で、現場で何十年もシロアリと向き合ってきた人。3年以上、一緒にホームページを育ててきました。
WordPress 7.0が来たからといって、ヤマト産業さんの運用が劇的に変わることは、たぶんありません。理由は、ここで効いている本体が「設計」だからです。
| ぞろ屋が積んできたこと | ヤマト産業での実装 |
|---|---|
| 一次情報の量 | 床下に潜って撮ってきた豊富な一次写真 |
| 当事者の経験 | 現場で出会った虫の判別話、見立ての具体例 |
| 人間中心のQ&A | 現場でよくある質問に答える充実したQA |
| 信頼性の可視化 | 顔出しインタビューあり・スタッフ全員紹介 |
| 構造の単純さ | スマホで重くない・3クリック以内で重要ページに着く |
| ローカル整備 | Google Business Profileに同じ情報が整っている |
結果として、
– 月の相談件数:2〜3件 → 月50〜60件
– 成約率:ほぼ100%
になりました。何か特別な「AI対策」をしたわけではありません。WordPress 7.0のAIコンセントが後から差し込まれたとしても、この数字はあまり動かないと思います。効いている本体は配線ではなく、設計の方だから。
ココナラのWeb制作で全国1位を200回以上いただき、400件のホームページに関わってきましたけど、ツールが変わるたびに右往左往している会社で伸びている会社を、僕は一社も見たことがありません。
アップデート前のチェックリスト10項目
最後に、自分のサイトを WordPress 7.0 に上げる前に、明日から確認できる10項目を置きます。
サーバー・環境層
– PHPバージョンが 7.4 以上か(推奨 8.3 以上)
– MySQL 8.0以上 または MariaDB 10.6以上 で動いているか
– バックアップが直近1週間以内に取れているか
– ステージング環境を1つ持っているか
プラグイン・ブロック層
– 自作・カスタムブロックの `apiVersion` を `3` に揃えてあるか
– 投稿一覧にカスタムカラムを追加するプラグインを使っていないか(使っていたら表示崩れリスクあり)
– AI関連プラグインを2つ以上使っている場合、APIキーの登録場所を確認したか
運用層
– 「設定 → Connectors」を社内で誰がどう使うかを決めているか
– ビジュアルリビジョン・Notes・Command Palette の使い方を社内共有する段取りがあるか
– 本番反映の作業は、深夜帯ではなく営業時間内に行う段取りになっているか
10項目のうち、8つ以上が「はい」になっていたら、リリース直後を避けて1〜2週間様子見してから本番反映、で問題ないです。3つ以下なら、まず環境とバックアップを整えるところからです。
まとめ
WordPress 7.0「Armstrong」で、事業者が押さえるべきポイントを3行に集約します。
1. AIがWordPressの標準機能になった:OpenAI・Anthropic・Google が「設定 → Connectors」で一元管理。AI連携ホームページのベースが本体側で標準化された
2. 期待された共同編集(RTC)は7.1へ延期:クライアントへの説明訂正が必要なケースあり
3. 動作環境の前提が上がった:PHP 7.4必須、Block API v3、DataViews対応など、ステージングでの事前検証が事故防止の鍵
WordPress 7.0が用意したのは「AIを乗せやすい配電盤」までです。そこに何を流すかは、経営者本人の頭の中にしかない素材(一次情報・うちは何屋か)次第。配電盤が新しくなるたびに振り回されている会社で伸びている会社を、僕は見たことがありません。
このアップデートは、ホームページの基礎体力を整える、いい区切りのタイミングとして使ってください。

