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個人事業主が法人化するにあたり、経営者としてあらゆるリスクを考えながら、リサーチしてきた結果をご紹介します。
税務上の細かな額や法律がうんぬんよりも、経営者としてどのような考えを持ち、なおかつ経営者自身の人生を考えたとき何を優先すべきか、リアルな経営判断を軸に、書きとどめました。
これから法人化を考えている方、本質的な経営をされたい方に、ご参考になると思います。
一般的な法人化のメリット、デメリットについては、こちらをご参考ください。
個人事業主から法人化する場合の最大のメリット
法人化するにあたり、経営者自身にとっての最大のメリット。
それは、税負担を大幅に下げられることでしょう。
一定以上の所得があれば、個人事業主よりも税負担が軽くなる
所得が増えてくると、税負担が大きくなるのが、所得税です。
分岐点となるのは、個人事業主として経営者自身の課税所得(売上-仕入れ-経費-控除)が700万円を超えたあたりからでしょう。
※課税所得であることにご注意ください。
理由は、3つ。
- 所得税は収入が上がるごとに税率が上がる累進課税であること。
- 法人化すると、経営者の所得は「給与所得」になること。
- 課税所得が低くなると、住民税も安くなる。
■所得税
所得税は下記のように、収入が上がるごとに税率が上がります。
たとえば「課税所得」が700万円なら、
7,000,000円×0.23 – 636,000円= 974,000円
という計算になります。
■給与所得控除
給与所得には、下記の通り所得金額に応じて「控除」が受けられます。
給与所得控除額 | |
~1,625,000円 | 550,000円 |
---|---|
1,625,001円~1,800,000円 | 収入金額×40%‐100,000円 |
1,800,001円~3,600,000円 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円~6,600,000円 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円~8,500,000円 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円~ | 1,950,000円 |
考え方としては、給与所得を受ける人の「経費」として一定額定められているのが、給与所得控除。
個人事業主としての所得からは引かれない分、この控除額は大きい。
給与所得が700万の場合、
7,000,000円×0.1 + 1,100,000円= 1,800,000円
180万も控除されるわけです。
■住民税
所得税の控除額と、住民税の控除額はじゃっかん異なるため、所得税の課税所得とイコールではありません。
控除の税率が違ったり、計算方法も少し違います。
ですが、住民税の課税所得額とは近い数字になり、誤差数万円なので、ざっくりシミュレーションして、法人化を検討する際には十分でしょう。
顧問税理士からは
所得税の課税所得×10%+5000円
で計算すればおよその額はわかると教えてもらいました。
個人事業主で課税所得700万の場合に、法人化した際の試算
個人事業主(独身)として課税所得が700万であれば…
青色申告控除65万、基礎控除48万、生命保険・IDECOなど20万、社会保険80万
として、控除前の所得は913万くらいになるでしょうか。
法人化して、913万の給与所得にすると…
913万-(給与所得控除195万、基礎控除48万、生命保険・IDECOなど20万、社会保険130万)=520万
課税所得は、520万。そうすると、所得税は612,500円。
さらに、住民税の負担も軽くなります。
非常にざっくりとですが、表にまとめてみました。
個人事業主 | 法人 | |
所得金額 | 9130000 | 9130000 |
基礎控除 | 480000 | 480000 |
青色申告控除 | 650000 | × |
給与所得控除 | × | 1950000 |
生命保険・IDECOなど | 200000 | 200000 |
社会保険(※) | 800000 | 1300000 |
課税所得 | 7000000 | 5200000 |
所得税 | 974000 | 612500 |
住民税 | 705000 | 525000 |
所得税+住民税 | 1679000 | 1137500 |
(※個人事業主の場合=国民健康保険+国民年金、法人の場合=社会保険+厚生年金基金)
個人事業主よりも、法人化した方が税負担が
1,679,000円-1,137,500円=541,500円
軽くなるわけです。
注意点:社会保険料は割高になる
ただし、社会保険料は想像以上に割高になることを覚えておいてください。
上記で、社会保険料としていたのは、
- 個人事業主の場合=国民健康保険+国民年金
- 法人の場合=社会保険+厚生年金基金
法人化すると、この社会保険料がバカ高くなります。
詳細はお調べいただくとして、先ほどの事例通り控除前の所得が913万とすると、
個人事業主 | 法人 | |
社会保険 | 約800000円 | 約1300000円 |
これらは自己負担となります。差は、約50万円。
冒頭で、
分岐点となるのは、個人事業主として経営者自身の課税所得(売上-仕入れ-経費-控除)が700万円を超えたあたりからでしょう。
と説明したのはこれが理由です。
個人事業主よりも、法人化した方が税負担が約54万円軽くなっても、差し引くとプラス4万円…。
課税所得が700万円くらいで、じゃっかんプラスに転じるケースが多くなるので、ここが経営視点で言うと個人の損益分岐点かな、と考えたわけです。
とはいえ、法人で社会保険・厚生年金基金に加入すると保障が手厚くなるので、長期で見ると法人化のメリットは大きい。
法人の方が社会保障が手厚い
社会保険・厚生年金基金に加入すると保障が手厚くなる理由を簡潔にまとめると、
- 社会保険の加入により扶養家族全員に健康保険が適用される
- 厚生年金基金は、国民年金よりも老後にもらえる額が多い
この2点。
厚生年金の受給額は、生年月日や加入期間などによって、受給額を算出するために使用する税率が異なるため、受給額は異なりますが、厚生労働省年金局の「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、
国民年金は平均月額56,049円に対して、厚生年金は平均月額146,162円
となっています。
そもそももらえるのか?という不安はさておき、国内で事業をする以上、この程度のリスクは許容しておいた方が良いのかなと思っております。
まとめ
個人事業主として経営者自身の課税所得(売上-仕入れ-経費-控除)が700万円を超えたあたりから、法人化した方が手残り額は多くなります。
それだけではありません。
扶養家族がいて、奥さんが働いている場合、あるいは奥さんを従業員として雇う場合は、世帯所得で見ると、さらに資金を残すことができます。
業種業態によりますが、当社のようなWEB事業を中心としている事業なら、コンパクトな家族経営がもっとも、手元に資金を残しやすく、守りに強い経営となると考えています。
なお、一般的な法人化に際してのメリット・デメリットは、下記にまとめましたのでご参考ください。