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マーケティングを理解、実践するうえで最良の書と出会えました。
マーケティングの基本がわかるだけでなく、具体的にどのようにすればその知識が活かせるのか。行動に落とし込み、実務として成果を上げるプロセスが親切丁寧に、そしてクールに書かれています。
西口一希著『顧客起点マーケティング~たった一人の分析から事業は成長する~』。
マーケティングを飾りではなく、本物の学問とするために
マーケティングの世界は、技術革新によって、日々、新しい技法や手法が開発されるようになりました。
そのスピードたるやすさまじく、追いかけるのは至難の業。最先端を走る一人は、神田昌典氏でしょう。極端な話、情報を「知っているかどうか?」それだけで成功するかどうか左右される。
ということまで、氏は言っていますが、それを追うべきか否か、ずいぶん迷いました。もちろん知っておいて損はないでしょう、でも、それができるかどうか、というのはまた別の話。
何事も、土台となる考えや方針があって、それなくして新しい技法や手法を実践しても持続しないことは分かり切っています。
基礎構築のないマーケティングは部分最適の連続から縮小均衡に
マーケティングという学問が、頭や書物の中に埋もれず、実践で結果を出すためには、まず行動しなければなりませんし、その手順や工程が正しくないといけません。
この著書の中では、はじめにやらなくてはならないことがはっきりと書かれており、それが基本であるといいます。
その基本とは、顧客を知ること。
著者の言葉を借りれば、
顧客が生活の中で何を考え、何を経験し、何を求め、何を感じているかを知ること
この基礎構築のないマーケティングは、全体から見れば限定的な影響に限られた部分最適になる。本質を外した部分最適の連続の果ては、縮小均衡に陥ります。
顧客からは逆に、遠ざかって行ってしまうということです。
マーケティングの基本から組み立てる顧客起点マーケティング
マーケティングの基本は、考えてみれば、学問的なことではありません。
お客さんは自分の生活を成り立たせてくれる大事な人たちです。その人たちに喜んでもらうにはどうしたらいいのか考えたり、感動してもらえるには、どうすればいいのか。
困っていることがあるなら役に立ちたいし、悩んでるなら力になりたい。
そういったモチベーションがベースにあると、「顧客を知る」というマーケティングの基本はそれを知識として知らずともごく当たり前の考え方になります。お客さんを知らなければ、喜ばせることも、感動させることも、役に立つことも、力になることも、できないからです。
たった一人を深堀する顧客起点マーケティング
西口氏が提唱するのは、その「顧客を知る」というマーケティングの基本をベースに、一人の名前を持つ具体的な顧客を徹底的に理解することから始まるマーケティングです。
ブランドとの初めての出会いから、これまでの経験に丁寧に耳を傾け、購買行動とその行動を左右する深層心理の関係を読み解きます。
飲食店でいえば、常連様はなぜ、常連様になったのか?
そのきっかけ、生活パターンや考え方、行動、選択の基準、どんなことが嬉しく感じて、どんなことに腹を立てているのか。
そうしてヒアリングを重ねる中で、一般のお客さんとは違う考えや行動様式、常連となるに至ったきっかけを理解できれば、まだ常連化していないお客さんに提示することで関係性を深めることができるかもしれません。
その深い理解と共感を通じて、ビジネスを成長させるアイデアを見つけて、商品開発をし、顧客とのコミュニケーションに活かしていく。
というのが、「顧客起点マーケティング」の概要です。
一人の顧客を大事にすることから、ビジネスの継続的成長を実現させるのが目的になります。
人の心を動かす「アイデア」
たった一人の顧客の意見を聞くことを「N1分析」といいます。
顧客起点マーケティングは、N1分析を徹底して行い、理解・共感することから有効な打ち手を導き出して、拡大展開し、対象とする顧客セグメントの人数や構成比の動きを見ることで、マーケティング投資の効果検証まで行います。
そのN1分析から導き出した、人の心を動かせる商品やサービスの魅力、訴求を「アイデア」とここでは呼んでいます。
アイデアとは単に、思い付きや発想、ひらめきではなく、たった一人の顧客を徹底的に知り、具体的なプロセスを踏んで誰もがその糸口をつかみ取ることができるものです。
マーケティングにおける「アイデア」
「アイデア」がどういったものでなければいけないか、ということは明確です。人の心を動かせるもの、人をひきつけることができるもの。
より具体的に定義すると、「アイデア」とは「独自性」と「便益」を兼ね備えたもの。
「独自性」とは、唯一無二、他にはない特徴を備えていること。
「便益」とは、顧客にとって都合がよく利益のあることです。
その2つを兼ね備えたのが、「アイデア」と呼ぶに値する。
4象限で表す「アイデア」
図で表すと下記のようになります。
独自性がなく、便益があるものは「コモディティ」といって、替わりがいくらでもある商品・サービスをいいます。マーケットにおいては、競合と同等であり、価格競争に陥りやすい。
差別化されておらず、競争力の低いセグメントです。
便益はないが独自性がある「ギミック」は、奇をてらっただけで、勝ったり時間を費やしたりする価値のない特徴を備えているもの。自己満足の商品・サービスに多いですね。
また、独自性もなく、便益もないのはもはや「資源破壊」。
開発コストも、時間も、コミュニケーションも、すべてが無駄になる最悪の提案となります。
プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデア
「アイデア」は独自性と便益を兼ね備えたものですが、マーケティング業務上、さらに深堀していくと、大きく2つに分けて考えられます。
それが、プロダクトアイデアと、コミュニケーションアイデアです。
プロダクトアイデアとは?
対象顧客に対して、商品やサービスそのものに独自の機能や特徴があり、かつ具体的な便益があること。
というのが、プロダクトアイデアです。
理想的なのは、独自性そのものが便益であること。
これは最強のプロダクトアイデアとなります。
例として、iPhoneが登場時において携帯電話に音楽プレイヤーのiPod機能が備わり、さらにインターネットにもつながる唯一の携帯電話であったことが挙げられます。
また、確固たる独自性が便益を支えている場合も有効です。
たとえば、冷凍状態のものを揚げるだけでプロ顔負けの唐揚げが作れる商品があったとします。
人手不足の飲食店ではその使いやすさ自体が便益ですが、数ある類似商品の中でも「プロ顔負けの本格的な品質」に仕上げられる独自性があればその独自性が便益を支えていることになります。
コミュニケーションアイデア
「プロダクトアイデア」を対象顧客に伝え、購買行動を起こしてもらうためのコミュニケーション自体の「アイデア」。
広告やイベント、キャンペーンの仕組みなどにおける既視感のない独自性があるかどうかということが「アイデア」になります。
この場合、コミュニケーションの便益とは、たとえば広告なら、それに接することで対象顧客が「楽しい」「面白い」「心地よい」と感じられることが便益そのものになります。要は人の気をひいたり、話題になったりするコミュニケーションのあり方を考えるわけです。
ただし、コミュニケーションアイデアによって、話題になってもその便益がプロダクト自体の便益と結びついていないと機能しない。
と著者は述べています。
プロダクトアイデアなくして、コミュニケーションアイデアはなし
いくらコミュニケーションアイデアが独自性と便益で優れていても、プロダクトアイデアが弱いと、事業成長にインパクトを与えることはできません。
良くて、一時の売上を確保するにとどまり、持続発展しない。
テレビの取材を受けて、2週間くらいはお客さんがひっきりなしに来ても、1か月後は元通りになるラーメン屋さんと一緒ですね。
らーめんが美味しいか、それがどこでも食べられない独自のものか、というプロダクト自体の魅力がなければ続かないのです。
だから、プロダクトアイデアがまず独自性と便益に優れていないとだめだ、ということになります。
相対価値ではなく、独自性を求める
らーめん屋さんは、非常に競争の激しい飲食店です。
各店が独自色を打ち出しても、すぐに真似されたり、便益の点ではなかなか差別化は難しいのでコモディティ化してしまいます。
そのためでしょう、相対価値で勝負するお店が多いように思います。
価格や、どんぐりの背比べのような微妙なこだわりを訴えるだけでは、戦略として不十分だということです。
かといって、じゃあどうすればプロダクトアイデアを高めればいいかというと、難しい。
だからラーメン屋さんの閉店率は非常に高いといわれます。
3年もつお店は半分もないのです。
まとめ
改めて、マーケティングを理解、実践するうえで最良の書と出会えたことに感謝です。
下記の記事でも、この本の中で紹介されている秀逸な概念を解説していますので、ぜひ読んでみてください。本の内容をそのまま書き写すのではなく、自分事に置き換えて解釈した結果を書いているので、特にスモールビジネスをされている方にはご参考になるかと思います。