顧客ピラミッドの作成———『顧客起点マーケティング』西口一希著より

顧客ピラミッドの作成———『顧客起点マーケティング』西口一希著より

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マーケティングを理解、実践するうえで最良の書としてお勧めする『顧客起点マーケティング』(西口一希著)。

とても実践的な本なので、しっかり消化して、活かしたいと思っています。

下記では、売れる仕組みづくりをするために「アイデア」とはどう考えるべきなのか?解説しています。

良かったら、読んでみてください(#^.^#)

ところで、マーケティングの本質は徹底した「消費者目線」といったのは、USJをV字回復させた森岡毅氏でしたが、森岡氏はP&G出身。西口氏もまた、P&G出身です。

聞けば、P&Gの企業文化は「Consumer is Boss」(顧客こそがボスである)だと聞きます。

P&G出身のマーケターが活躍しているのは、本質をおさえているからかもしれません。

目次

顧客ピラミッド

顧客分析のフレームワークはかずあれど、これほどシンプルで、汎用性が高いのが5つのセグメントに分ける顧客ピラミッドです。

その商品やサービスの顧客全体を、以下のように分類します。

(C)Kazuki Nishiguchi, Shoeisha Co., Ltd 西口一希著「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社)

なぜ、顧客ピラミッドを作るのか?

この顧客ピラミッドの最も優れた点は、中長期での戦略議論が可能になることです。

たとえば、RFM分析というのがありますが、これは、

①直近でいつ買ったか?

②購買頻度

③購買金額

の3つで顧客セグメントを分類する方法ですが、ここに、見込み客の存在———顧客ピラミッドでいうところの「認知・未購買顧客」「未認知顧客」は含まれていません。

現在の顧客を知るには有効ですが、そこに集中するあまり「離反顧客」もまた、正確には捉えづらい分析になります。

著者の言葉を借りれば、

離反顧客をどうするか、認知しているが未購買の顧客をどう顧客化するか、未認知顧客の認知をどう上げるかといった、中長期の成長に欠かせない視点が欠けているのです。

売上・費用・利益を分析

この顧客ピラミッドから分析できることは多くありますが、まず「売上」「費用」「利益」の分析が優先です。

どのセグメントにコストをかければ、最も費用対効果が高いのか、判断するからです。

たとえば、パレートの法則というのがありますが、上位顧客20%が全売り上げの80%を生み出している、ということが分かったりします。飲食店において考えれば、20%の常連さん(ロイヤル顧客)がお店の売上の80%を支えている、ということがわかるのです。

じゃあロイヤル顧客に広告費・販管費の80%を割こう、という判断の可能ですし、ロイヤル顧客から得た利益を離反顧客に回すことで、顧客数を増やそうという判断も可能です。

いずれにしても、どのセグメントに投資するのか考える判断材料となります。

短・中・長、異なる時間軸で戦略を組む

そうすると、短期的にはどこに投資すれば最小の力で最大の成果が得られるか、みたいなことがわかってきます。

さらに中期的にはどのセグメントをターゲットとして、長期的には、いまどういう手を打っておくべきか、考えることができます。

顧客セグメントでいうと、下に行くほど長期的な時間軸で考える必要がありそうです。

セグメントごとにN1分析

具体的に、セグメントごとの戦略を組む際に欠かせないのが、N1分析です。

各セグメントの顧客の中から一人、代表的な人のことを徹底して知るのです。

そうすることで、なぜ、上位のセグメントに移動するのか、逆になぜ下位に移動してしまったのか。

理由を確かめることができます。

その理由がわかれば、下位のセグメントから上位に揚げる為にはどうすればいいのか

離反させないためにどんなフォローをしなければいけないのか

などが分かってきます。

特に、なぜ顧客化できたのか知ることは営業活動の中で重要でしょう。

プロダクトアイデアを創出する

各セグメントごとに一人の具体的な顧客を分析することで最終的に得たいのは「アイデア」です。

常連さんではない、一般の顧客が常連さんになるための壁がN1分析によって検討がついたら、アイデアを創出します。

もし、常連さんのN1分析で「自分だけのメニューがあるから」ということが分かったとします。

一般顧客には裏メニューを作って、こっそり渡してあげるのもいいかもしれませんし、サービスマンがヒアリングをして、そのお客さん独自のメニューを考えてあげるのもいいかもしれません。

あとはそのプランを実際やってみて、検証し、改善していくPDCAサイクルを回していけばいい。

上記は、『顧客起点マーケティング』に書かれていることの簡単な一部ですが、これだけで小規模飲食店は売り上げを上げることができるのではないかと思います。

飲食店における顧客ピラミッド作りを考える

この本では、どちらかというと小売的な、販売に紐づいた事業を想定したマーケティングですので、飲食店におきかえてどう活用できるのか?それを考えてみたいと思います。

飲食店における顧客ピラミッド

『顧客起点マーケティング』(西口一希著)で提案されている顧客ピラミッドとは下記のようなものです。

(C)Kazuki Nishiguchi, Shoeisha Co., Ltd 西口一希著「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社)

飲食店では、これをどう活用するか、応用が求められます。

顧客選別する質問

まず、マーケットを包括的にとらえます。

飲食店において、顧客ピラミッドを分かりやすく置き換えると以下のようになります。

飲食店における顧客ピラミッド
  1. ロイヤル顧客・・・常連
  2. 一般顧客・・・時々利用してくれるお客さん
  3. 離反顧客・・・過去、来店したことはあるが今は利用していないお客さん
  4. 認知・未購買顧客・・・お店のことは知っていても来店経験のない人
  5. 未認知顧客・・・お店のことを知らない人

これはリサーチもできますが顧客リストがあればそこから導き出すことも可能です。

ネット調査

今は気軽にネット調査も可能です。

https://www.myvoice.co.jp/service/price.html

商圏を決めて、以下の質問をします。

  1. お店のことを知っているか?
  2. これまでに来店したことはあるか?
  3. どのくらいの頻度で来店しているか?

飲食店の場合は、半径2km圏内が主な商圏と言われますが、観光地にあればまた違いますし、その土地、環境によりその範囲は変わってきますきますが、お店の規模に対して、十分なマーケットを想定して調べると良いと思います。

分類

下記は、『顧客起点マーケティング』(西口一希著)からの引用ですが、質問に対し、下記のように分類するわけです。

(C)Kazuki Nishiguchi, Shoeisha Co., Ltd 西口一希著「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社)

「買った(使った)」を「来店した」に置き換えるのと、飲食店において、常連さんの来店ペース、一般のお客さんの来店ペースを定義する必要があります。

このように9つに分類することを9セグマップといいます。詳しくは下記の記事をご覧ください。

ロイヤル顧客とは顧客生涯価値(LTV)の高い顧客

自社にとって、ロイヤル顧客はどういう顧客のことをいうのか? もう少し詳しく、見ていきますね。

当然、業態、業種、それから会社によってもやや違いがあるでしょう。共通しているのはLTV(ライフタイムバリュー)生涯価値といわれるもので計れるということ。率直に言うと、その顧客が、生涯にわたってどのくらい収益を上げさせてくれるか、ということです。

病院や治療院のロイヤル顧客とは

「病院や治療院のロイヤル顧客とはどういう人を指すのでしょうか?」というご質問をよくいただきます。

確かにそうですよね、LTV(ライフタイムバリュー)生涯価値とはいえ、病気や不調が治ってしまえば、通わないわけです。生涯にわたってどれだけ収益を上げれるかと考えることは、顧客の不利益を助長させることになり、憚られます。

この場合、LTVというのは違った側面を持ちます。

患者さんに長く来続けてもらうことが価値ではなく、もう通う必要がないほどになっても「ここの病院(治療院)すごくいいよ!」と周りの人に勧めてくれたり、実際に患者さんを連れてきてくれたりしてくれる「口コミ」や「紹介」が価値になります。

ロイヤル顧客にするには育てる必要がある

顧客を育てるのは、簡単に言うと、自社のことを知らない顧客から、ロイヤル顧客へとなるように、情報発信することです。ホームページの存在意義は、そうした情報をコンテンツとして積み重ねられるところにこそ、あります。

その視点のないサイトがいかに多いことか。その為には、下記でも解説したように、ターゲット選定が必要になってきます。

ホームページで顧客を育てるプロセスと必要な情報

ホームページ上で、顧客を育てるプロセスと必要な情報をまとめたマップを作成してみました。

create by zoroya

お気づきかと思いますが「集客➡見込み客フォロー➡販売➡顧客化」という4ステップマーケティングの流れを汲んでいます。上記の必要なコンテンツを配置して、導線を考えれば、上顧客を育てるプロセスは出来てくるでしょう。

ただし、難しいのは、そのコンテンツの中身で、事業としての戦略に基づいていないとうまく回りません。

顧客リストとマーケットを比較

顧客リストがあるなら、マーケットと比較してみるのが良いと思います。

要は、対象エリアの人口を調べて、それを分母とするわけです。

ある商圏で200万人いるとして、そのうち常連さんが100人、一般顧客が300人、離反顧客が1000人とするなら、そのマーケットにおいてお店に来ていない人は1,998,600人いるということになります。

戦略としてはもちろん、離反顧客を一般顧客に、一般顧客を常連さんにランクアップさせるのも大事ですが、まだ来店していない大きなマーケットも同時に狙うのも長期的に見れば大事です。

お店の規模や商圏を分かって未知のマーケットがどれくらいあるかを知ると、広告を出したり、もう一度きてもらうにはどのレベルの料理を出すのか、サービスをしなくてはならないのかがわかってきます。

各セグメントに対する、戦略を明確にすることで、やるべきことがはっきりするのです。

それにより、削減されるコストや見込まれる集客、組織運営の改善など、メリットは数え切れません。

顧客ピラミッドで競合分析

顧客ピラミッドは競合分析にも活用できます。

飲食店では特に、お客様はいろいろな店に行きます。外食するところは常に決まっているという顧客はいないわけではありませんが、全体からすると少ない。

競合店の顧客ピラミッドを作成し、重なる顧客を可視化して分析すると、お客さんが他の飲食店とどのように併用しているのか分かります。

それが、オーバーラップ分析と呼ばれるものです。

(C)Kazuki Nishiguchi, Shoeisha Co., Ltd 西口一希著「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社)

オーバーラップ分析とは

競合店ではロイヤル顧客(常連)だが、自店では一般顧客でいる場合、それぞれどのように使い分けているのか、それはなぜか、N1分析すると、競合が選ばれる理由が分かります。

それをもとに、顧客を奪うための「アイデア」、奪われないための施策の先手を打てるのです。

また、両店とも離反した顧客層は、双方にとって顧客化が見込める層になります。

競合分析

(C)Kazuki Nishiguchi, Shoeisha Co., Ltd 西口一希著「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(翔泳社)

上記は、『顧客起点マーケティング』出店元の画像データをすこし編集したものです。

これをもとに、競合店Aと自店の顧客層を比較し、具体的に考えてみます。

競合店の強みを探る

分かりやすくするため、マーケットを1000人と考えると、実際に利益をあげさせてもらっている顧客の15%(ロイヤル+一般150人)は自店の顧客です。

対して競合は、8%(80人)。

一見、競合より優位にいるように見えます。しかし競合店は自店より規模が小さく、席数が半分だとするとそうも言ってられません。

維持するコストや人件費を考えると、規模が大きいほど集客できていないと存続できないからです。

そう考えたとき、競合店はロイヤル顧客(常連さん)をつけるのが自店より優れてるのではないかというのが見えてきます。

競合の一般顧客+ロイヤル顧客は80人。

ロイヤル顧客率は、30人÷80人=37.5%。

自店の場合は、50人÷150人=33.3%です。

競合の未認知顧客は700人と市場の70%が知らないのですから、認知を拡げる為の広告はあまり売っていないのでしょう。小規模店ならではの強みを活かして、宣伝コストをかけず、顧客一人一人に寄り添った運営をしているのかもしれません。

競合店の弱みを知る

上記のように競合店は、自店に比べ、市場にあまり認知されていません。

競合店は全く認知していない人がマーケットの70%をしめ、さらに知ってはいても来店に繋がっていない人が20%もいます。

集客がうまくいっていないばかりか、知ってはいても来店に繋がっていないお客さん(=見込み客)を来店させる仕組みも出来上がっていないと想定されるのです。

ということは、マーケットに対し広告コストを投資して、認知され、顧客化する仕組みがあれば、競合を圧倒できる

自店が競合店に打ち勝つ戦略として有効なのは、グレーで塗りつぶした顧客に狙いを定め、マーケティングプランを組むこと。

そういったことがわかってきます。

N1分析でさらに深める

自店のロイヤル顧客率を高めようと思えば、自店では一般顧客だが、競合店ではロイヤル顧客の人にインタビューすればアイデアがつかめるでしょう。

たとえば、自店には居心地の良さを求め、競合店にはちょっと美味しいものを食べたいときに行くとします。

なぜ使い分けているのかというと、自店の方は家族で来店しやすく、競合店は接待や少人数で訪れる時に使い勝手がいいから。

そういったことが分ると、接待や少人数で美味しいものを食べたいときに使ってもらえるように、メニューを組んだり、相手の弱みである広告に力を入れれば、競合店にとっての一般顧客や離反顧客も、自店のロイヤル顧客に移行できるかもしれません。

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