※この記事にはプロモーションが含まれています
『顧客起点マーケティング』(西口一希著)からは、マーケティングの本質、基礎、実践が学べます。かなり費用対効果の高い本だと思います。
マーケティングがどこからスタートするかというと、いうまでもなく、マーケット(市場)。マーケットとは、人の感情や、思考、行動が形作った経済市場。
だから、消費者の立場に立つ、お客さんのことを徹底して考える。
ということが、マーケティングの基礎となるのです。
N1分析は、架空の想定顧客ではなく、名前のある顧客個人について知ることを意味します。
N1分析とは?
お客さんの生活態度や習慣、興味関心、思考、購買行動から購買に関する認知や心理を理解する。それをN1分析といいます。
手順としては、時系列で知る必要があります。
- 認知・・・いつ、どのようなきっかけでお店を知ったのか?
- 購買行動・・・なぜ来店したのか?
- 頻度・・・なぜ、常連客となったのか?
そのお客さんが、お店を認知したきっかけ、来店したきっかけ、それから常連となったきっかけ。
それぞれのタイミング何があったのかを深く聞くことがN1分析です。
カスタマージャーニーの抽出
マーケターとして知りたいことは、顧客が認知から来店、常連化までどのような道筋を通ってきたのか?
ということです。
その流れ、道筋を、マーケテイング用語でカスタマージャーニーといいますが、これを抽出します。
認知
具体的に想定していきます。
まず認知したのは、何がきっかけだったのか。飲食店にとって、この問いは重要です。
どこに、経費をかければいいかわかるからです。たとえば、広告媒体なら、どの広告を出した時なのか。それとも、口コミであれば、どんなお客さんから口コミされるのか。看板なら、どんな部分に興味を持ってくれたのか。
お客さんの心理がわかれば、それをメンテナンス、拡大すればいい。
購買行動
次に、なぜ来店したのか?ということ。
友達との集まりで。美味しいと聞いたから。共感できるから。
来店に至るまではさまざまな動機があったでしょう。お客さん自身、気づかぬ動機があったかもしれません。
それをつかむのです。
頻度
なぜ、常連として通ってくれるようになったのか。
単純に美味しかったから、というのはもっともな理由ですが、それでヒアリングを止めてしまうと、いつまでたっても理解は深まりません。
サービスがよかったのか、周りに行く場所がないのか、落ち着くから。
など様々な意見が出てくると思います。
きっかけから「アイデア」を創る
それぞれのきっかけが、アイデアを創る大きなヒントとなります。
「アイデア」については、下記の記事でも解説しましたが、簡単にいうと「どんな便益と独自性を感じ取ったか?」ということ。
例えば、お店を認知したきっかけは、ある広告媒体だったとします。でも来店のきっかけは、たまたま友人に連れていかれた時の場合。お客さんは、どんな便益と独自性を感じ取ったでしょうか。
広告で見て行きたいなとは思いながらも、きっかけがなくて、そんな時、友人から誘われて来店につながった、とすれば、大きなきっかけは、友人の誘いであって、広告ではありません。
でも、広告も認知させる目的ならば、役割を果たしています。
意図的にこの状況を作れないか?
意図的に、こうした状況を作れないかと考えると、どんな方法があるでしょうか?
来店のきっかけは、広告+口コミ、という図式です。単純に広告を増やせば、機会は広がりますが、それはどこもやっていることで、独自性はありません。
ではたとえば、認知させるために人が集まるところに屋台を出して、無料でピザを配る、というのはどうでしょう?
結構すごいインパクトです。
広告媒体にかけるコストとみれば、安いものかもしれません。同時に、口コミも生まれます。見た目もはなやかに目立てば、SNSなどでも広がるかもしれません。
要は、お客さんにとって、便益があって、なおかつ独自性があれば最高だということです。
顧客セグメントごとにN1分析
こうしたアイデアを生み出すために、顧客ピラミッドの各セグメントごとに考えていくわけです。
顧客ピラミッドで考える戦略としては、おのずと以下のようになります。
- 常連は、超常連に。
- 一般ユーザーは、常連に。
- 離れかけた顧客は、また来てもらえるように。
- 一度も来たことがない人には、来てもらえるように。
- 知らない人には知ってもらえるように。
各セグメントごとの戦略自体は、シンプルですが、各段階でどのような施策をするのか。
それを、各セグメントごとにN1分析をして「アイデア」を創り出し、費用対効果を高めていくのがマーケターの務め。ここからコンセプトを立案し、トライ&エラーを繰り返しながら、洗練させていくのが顧客起点マーケティングです。
飲食店では、どのように活用できるか?
飲食店の場合、常連、一般顧客、離反顧客、お店を知ってるが来店したことのない顧客、お店を知らない顧客。
以上5つに分けます。勝てる仕組みづくりとは、下記のように、それぞれのセグメントごとにどうすれば上位顧客に移行していけるかを組み立てることです。
マーケティングプラン
手あたり次第、各セグメントごとのマーケティングプランを組んでしまうと効率が悪く、機会損失の恐れもあります。それを避けるために、ターゲットとする顧客層を選定します。
飲食店は各お店によって強みも弱みも違いますが、近視眼的な目で見ると、どうしても目の前のお客さんを常連化する施策に奔走しがちです。
顧客セグメントでいうと、一般顧客をいかに常連化させるか?
しかし経営全般を見渡した時、急務なのは離反顧客を離反しないように食い止めること、だったりします。また、マーケットでの認知が低い場合には、集客から見直さなくてはいけないかもしれません。
どの顧客層をターゲットとするかについては、事業全体を見渡し、お店の強み弱みを含めて、どこに経営資源を集中させるかをよーく考えます。
5W1Hで企画する
どの顧客層をターゲットとするかが決まれば、5W1Hで企画することを西口氏はすすめています。
例として、一般顧客から常連化させる戦略を考えてみます。そのために常連のセグメントの中から、一人えらんでインタビューします。
聞きたいことは、次の3つ。
- 認知・・・いつ、どのようなきっかけでお店を知ったのか?
- 購買行動・・・なぜ来店したのか?
- 頻度・・・なぜ、常連客となったのか?
これを深く行うことで、一般顧客から常連化させるヒントが見えてくる。
常連客の思考、生活様式、行動パターン
常連客のひとり、54才の男性(仮に田中さん)をインタビューします。
そこで、見えてきたことは下記のようなことだったとしましょう。
- 認知:お店を知ったきっかけは、田中さんの奥さんの仲の良い友人との会話で出てきたのがはじまりだった。
- 認知→購買行動:こんなレストランがあるということで、田中さんに伝わり、今度の結婚記念日に予約してみようとなった。
- 購買行動:奥さんの友人からは、すごいパスタ料理があると聞いていた。話によると、北海道の海産物を使ったトマトソース「ペスカトーレ」だが、その豪華さが非常識なくらいだという。
- 頻度:実際に来店してみると、噂通りの豪華さだった。しかしそれよりも田中さんが驚いたのはスタッフのサービスで、20代の若いスタッフが礼儀正しく、はきはきと話し、歴史の話にもついてくることだった。
- 頻度:結婚記念日ということは伝えていなかったのに、スタッフが田中さん夫婦のさりげない会話の中から察して、デザートにはサプライズでデザート盛り合わせが出てきた。なんと「祝!結婚30年」というプレート付きで。
以上のインタビューから、一般顧客を常連化するにはどうするか、5W1Hで考えていくわけです。
WHAT
WHATは、そのお店でしか食べられない料理や、得られないサービス、体験のことで、著書では「アイデア」と呼ばれるものです。
ここでは常連客のインタビューからはっきりとわかったことがあります。
常連化となったきっかけは、北海道の海産物を使った「スパゲッティ、ペスカトーレ」という名物料理。
ではなく、スタッフの質の高いサービスでした。
なぜなら、そのお客様は名物料理を食べたいから常連化したのではなく、歴史の話にもついてくる若いスタッフや、伝えてもいない結婚記念日のサプライズサービスに感動したから、常連となったのです。こうした人間力は、コモディティ化(ほかにいくらでも代替となるものがあること)しづらく、独自性を生みやすい。
常連化させるための、独自性と便益を両立させるアイデア(=WHAT)は、質の高いサービスに決まりました。
WHO
一般顧客を常連化するための施策ですから、ターゲットは、一般顧客です。
これまでの流れから、なぜ常連化していないかを考えると、質の高いサービスを提供できていない、もしくは提供する機会がなかったといえます。
ただ名物料理目当てで来店したとか。
では、常連化するためにはいつ(WHEN)、どこで(WHERE)、どのように(HOW)「アイデア」を届けたらいいのか?
常連化する深層心理は何なのか(WHY)をもとに組み立てていきます。
WHEN
常連化する大きなチャンスは、インタビューからはっきりとわかっています。
そう、記念日などのイベントです。
結婚記念日だけでなく、誕生日や合格祝い、快気祝いなんかも含めるべきでしょう。
WHERE
飲食店の場合、店舗を持っている為、どこで、という概念は浅く捉えられがちですが、認知~常連化までの押さえておきたいポイントとして、お店の情報がどこで伝わったのか、ということです。
たとえば、田中さんへのインタビューからわかったことは、田中さん自身がお店の情報とはじめて接触したのは、奥さんとの会話なので、田中さんの自宅です。
どんな時にお店の情報と接触するか、というのは大事だと思います。情報の接触頻度にもよるでしょう。いずれにせよ、どこかレストランを予約しようと思ったときにそこに情報があるというのはとても有利です。
HOW
ここで、どのように「アイデア」を届けるべきかが問われます。
たとえば、自宅にお店の情報がいつでも置いてある状態を作れたらどうでしょう?
記念日などの機会があれば、選ばれやすくなるかもしれません。そのためには、他のお店の情報と一緒にされてはたまりません。ただのチラシではだめです。
何をしなくちゃいけないかと考えたら、お客さんが取っておきたいと思えるようにしておかなくてはいけないのです。小冊子にするとか、割引チケットをつけるとか、製本するとか、工夫する。
WHY
ここまでで、ある程度の流れは作れました。
最終関門は、常連化する意思決定を左右している心理の働きと、その心理を形成しているインサイトを確かめること。田中さんの場合、常連化を決定づけたのは、質の高いサービスでした。
具体的には、若いスタッフが歴史の話にもついてきた驚き。それから、伝えてもいない記念日のサプライズサービス。料理が美味しいのはもちろんですが、スタッフのサービスの質に感動して、常連となっています。
そうしたサービスは、事前に認知しておらず、期待もしていませんでした。
もし、それが事前にわかっていて、期待通りのサービスだったら、効果は半減するでしょう。そのため、具体的にどんなサービスをするかというのはある程度ブラックボックス化しないといけません。
常連化するためのマーケティングプラン
以上を踏まえて、策定したマーケティングプランは下記のとおりです。
- 目的:一般顧客を常連化する。
- 手段:期待値を超えるサプライズサービスを届ける。
- 手順:お店の情報を小冊子化して、捨てられない情報源を作り、記念日サービスのことなども盛り込んでおく。ただし、伝えすぎない。その資料を一般顧客あてに郵送でおくる。もしくは、来店した一般顧客に手渡す。一方で、スタッフの人間力を高める教育をする。そうして来店してくれたら、お客さんの期待値を超えるサービスをするため全身集中する。
実際にはもっと詳細に細部を詰めていかなくてはなりませんが、このような流れでマーケティングプランを作成し、PDCAを回していけば、常連化は促進されるでしょう。
まとめ
たった1人の顧客を知るN1分析から、飲食店において一般顧客を常連化するマーケティングプランを簡単に考えてみました。やや机上の空論的なところはありますが、『顧客起点マーケティング』(西口一希著)で紹介されている実践的なマーケティングノウハウからは、得れることがたくさんあります。
マーケターにとっては、必読書ですね。