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ごぼうは、見た目でずいぶん損をしています。
最近、温かい煮ものがおいしい季節になってきましたね。
細くて、黒くて、みすぼらしい。ザ・根っこの野菜。それが、ごぼう(牛蒡)です。
2022年の春には、僕はこのごぼうを、ほとんど毎日のように食べていました。
はじめにお断りしておくと、これは健康法の記事ではありません。僕は医者でも、栄養の専門家でもないので、体のことは「僕の場合」の話にとどめます。
書きたいのは、見た目で損をしている良いものが、届け方ひとつで、毎日選ばれるものに変わる、という話です。
これは、僕がホームページの仕事でいつも考えていることと、根っこが同じです。中身はいいのに、外からは地味に見えて、比べてもらう前に素通りされてしまう。スモールビジネスの商品やサービスには、ごぼうのようなものがたくさんあります。
この記事では、我が家の「ごぼうのアグロドルチェ」の作り方を紹介したうえで、地味だけど良いものを、選ばれるものに変える伝え方について、僕の考えを書きます。
細くて黒い根っこの野菜を、毎日食べるようになった
ごぼうが自分にとってこんなに大事な食材になるとは、それまでの30数年、思ってもいませんでした。
僕にとってのごぼうは、きんぴらの小鉢で見かけるくらいの脇役だったんです。
それが2022年の春には、2日と空けずに食べるようになっていました。
食べ続けるうちに、僕の場合は、毎日の体の調子がいいと感じるようになりました。仕事のはかどり方も、前とは変わったと感じました。
ただ、これはあくまで僕ひとりの体感です。ごぼうだけのおかげなのかどうかも、僕には確かめようがありません。
食べものは医療の代わりにはなりませんし、体質によっては合わない人もいるはずです。体のことで気になるときは、自分だけで判断せず、お医者さんに相談してください。
あの見た目の野菜を、どうやって毎日の食卓に上げるか
問題は、あの細くて黒い野菜を、どうやって毎日の食卓に上げるかでした。
「あんなのばかり食べていられない」と思う人も多いと思います。僕自身は、体の調子を崩すほうがよほど困るので、食べないという選択肢はありませんでした。
それでも、毎日続けるなら、おいしく食べられるほうがいいに決まっています。
きんぴら、たたきごぼう、みそ汁、煮つけ。ごぼうの料理はいろいろありますが、僕がいちばん気に入ったのが、アグロドルチェでした。
ごぼうのアグロドルチェ|バルサミコ酢とはちみつで甘酸っぱく煮る
アグロドルチェは、イタリア語の「アグロ(酸っぱい)」と「ドルチェ(甘い)」を合わせた言葉です。
イタリアの辞書サイト「トレッカーニ」では、酸っぱさと甘さのあいだの味、そして、酢と砂糖で食べものを調理するやり方のこととして説明されています。日本でいえば、甘酢で煮た料理に近いイメージです。
我が家では、砂糖のかわりにはちみつを、酢にはバルサミコ酢を使い、そこにしょうゆを足しています。和食の献立にもなじむ、イタリアンの作り置きです。
作り方は、炒めて、煮て、冷ますだけ
- ごぼうを洗って、軽くゆでる
- にんにくを炒める
- ごぼう、しょうゆ、バルサミコ酢、はちみつ、レーズンを入れる
- 15分ほど煮て、冷ます
これだけで完成。分量は味を見ながら好みで調整してください。
当日より、翌日のほうが味が染みておいしいですよ。
作り置きにするときに気をつけたいこと
我が家では4〜5日くらいは持つので、多めに作っておいて、週の半分くらいはこれを食べていました。日持ちは季節や保存のしかたで変わるので、あくまで我が家の目安として読んでください。
もう1つ。はちみつを使うので、1歳未満の赤ちゃんには食べさせないでください。煮てあっても同じです。厚生労働省も「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」と呼びかけていて、原因の菌は「通常の加熱や調理では死にません」としています。
ごぼうは何も変わっていない。変わったのは、食べる人への届け方

ここからは、料理の話を少し仕事の話に引き寄せてみます。
アグロドルチェにしたって、使っているのはあの細くて黒いごぼうです。別の野菜に変わったわけではありません。
変わったのは、僕が「今日も食べたい」と思える形で食卓に出てくるようになった、ただそれだけです。
何が言いたいかというと、良いものは、良いというだけでは選ばれないということです。受け取る側が「ほしい」と思える形になって、はじめて毎日選ばれるようになります。
人参を、水と塩だけで4〜5時間煮る料理人
この話で思い出すのが、あるレストランの一皿です。
水とほんの少しの塩だけで人参を4〜5時間煮て、スイーツのように甘いタルトに仕上げてありました。
人参は、どこにでもある野菜です。その人参が、お客さんの目の前に出された一瞬の驚きと喜びのために、仕上げられていました。
料理人はその一瞬のために、膨大な時間をかけて準備をします。何より、本当に楽しそうに生き生きと働く姿が、僕には美しく見えました。
盛り付けの美しさは、結果にすぎません。その奥に、食べる人の喜ぶ顔を願って積み上げた時間があるんです。
見えない手間は、伝わらなければ、ないのと同じ
僕がものを選ぶときの基準は、これです。
見えないところで膨大な時間をかけてきたことに対する価値を、どれだけ払いたいか
安くて便利なものにするか、高くて手間のかかるものにするか。僕はそれを、この問いで決めています。
ただ、これは買う側の話です。買う人が手間に価値を払いたくなるのは、その手間や背景、こだわりまで感じられたときです。
だから売る側は、受け取る人が価値を感じられるように、手間のかけ方と見せ方まで考える必要があります。
器でたとえてみます。100円ショップの器と、一つひとつ手で作られた器。遠くから見たら違いは分かりません。手に取って初めて、触り心地も模様もまるで違うと気づきます。
でも、お客さんがいつも近くで見てくれるとは限りません。手に取ってもらう前に、ほかのものと値段だけで比べられて終わってしまうこともあります。
地味だけど良いものを、選ばれるものに変える4つの伝え方

スモールビジネスの商品やサービスにも、ごぼうはたくさんあります。
何年も続けてきた下ごしらえ。お客さんから見えないところでやっている確認。ひとりひとりに合わせた、ていねいな対応。中身はいいのに、外から見ると地味で、ほかとの違いが伝わっていないものです。
僕がホームページでそうした良さを伝えるときに、大事にしていることを4つ書きます。
1. 見えない手間を、具体的に見せる
人参を4〜5時間煮る、と聞いた瞬間に、その一皿の見え方が変わります。かけた時間が、そのまま価値の説明になっているからです。
ホームページでも、「こだわっています」「ていねいに対応します」と書くだけでは、ほかの会社と同じ言葉に埋もれます。何に、どれくらいの時間と手間をかけているのかを、具体的に書くことが大切です。
例(架空の、町のクリーニング店の場合)
NG:ていねいな仕上げにこだわっています
OK:シャツは1枚ずつ、えりとそで口を手でアイロンがけしています。ボタンが欠けていたら、付け替えてからお返しします
2. お客さんの毎日の、どの場面で役に立つかを見せる
ごぼうだって、アグロドルチェにしてようやく我が家の毎日の食卓に並びました。
商品やサービスも同じ。「何ができるか」を並べるより、「お客さんの毎日の、どの場面で役に立つのか」が見えてこそ、自分ごととして届きます。
素材の説明が悪いわけではありません。そこに、お客さんの毎日の場面を1つ足すだけで、伝わり方が変わります。
例(架空の、地域のパン屋さんの場合)
NG:国産小麦100%の食パン
OK:国産小麦100%。朝、厚めに切ってトーストすると、耳までさっくり。忙しい朝でも、焼くだけで出せる食パンです
3. どんな人が、なぜ続けているのかを知ってもらう
ワインって、作り手やぶどうの品種、育った土地の物語を知って飲むと、同じ一杯でも感じ方がまったく違いますよね。
ホームページも同じです。どんな人が、どんな思いで、なぜこの仕事を続けているのか。そこを知って選んでくれるお客さんと、知らずに選ぶお客さんとでは、届く価値がまるで変わってきます。
だから僕はホームページを作るとき、事業のことだけを聞くことはしません。経営者の方がこれまでどんな道を歩いてきたのかまで、じっくり深く聞くようにしています。
4. 最後の一言まで、伝え方を考える
レストランで働いていたころ、僕はお客さんの帰り際や、ワインをお出ししたあとの一言を工夫していました。
たとえば帰り際に、「ありがとうございました、またお待ちしてます」で終わらせずに、「今度はシチリアのデザートワイン用意しておきますね」と声をかけるとか。ワインのコルクで手作りした箸置きをプレゼントするとか。
ほかの人が言わないこと、やらないことをするだけで、相手に残る印象は変わってくると思います。
ホームページなら、お問い合わせのあとに届くお礼のメールが、この帰り際の一言にあたります。決まりきった文面のまま送っていないか、一度見直してみてください。
この話は、ポッドキャストの第21回「ピーク・エンドの法則とは?印象を左右する伝え方のコツ」でも話しています。
伝え方を変えることと、盛ることは違う
ここで、ひとつ大事なことを伝えておきます。
ごぼうをアグロドルチェにしたのは、金箔を貼ったのとは違います。その良さを、食べる人に届く形にしただけです。
伝え方を変えることと、中身を大きく見せることは、まったく別のことです。
「僕の場合」と「誰にでも」を分けて書く
健康の話では、「これを食べたら治った」という言い方をよく見かけます。けれど、1人の体験だけでは、本当にその食べもののおかげなのかは分かりませんし、誰にでも同じことが起きるとも限りません。
だから、この記事では、ごぼうの効き目は書いていません。書いたのは、僕の体感と、我が家の作り方だけです。
ぞろ屋がお客さんの事例を紹介するときも、同じ決まりで書いています。
- 1社で起きたことを、どの会社にも起きることのように書かない
- 数字は、お客さん本人の言葉や記録で確かめられたものだけを使う
- 数字が無い事例は、問い合わせの中身や客層が「どう変わったか」で書く
僕は、信頼とは、言ったことを成すことだと考えています。言ったことより小さな結果しか出せなければ、その差は、そのまま信頼を削ってしまいます。
お客さんに信じてもらうための証拠の選び方は、こちらの記事にまとめています。

全員に好かれなくていい
どれだけ伝え方を工夫しても、ごぼうが苦手な人はやっぱり苦手なんですよね。それでいいんです。
僕は自分のことを、イタリアのバルベーラというワインに似ていると思っています。果実味は豊かだけれど、酸味があって、少し好みが分かれる。好きな人はめちゃくちゃ好きで、合わない人には合わない。でも、長く愛されるワインです。
スモールビジネスは、全員に選ばれなくても大丈夫です。地味な良さを、盛らずにそのまま伝えれば、その良さを感じてくれる人に、長く選ばれるようになる、と僕は考えています。
好き嫌いで選ばれる話は、こちらの記事にも書いています。

地味な良さは、伝え方で選ばれ方が変わる
- アグロドルチェにしても、ごぼうはごぼうのまま。変えたのは、毎日食べたくなる届け方です
- 見えない手間は、伝わらなければないのと同じ。かける手間、使う場面、背景、最後の一言まで、届け方を考え抜く
- 伝え方を変えることと、話を盛ることは別物。「僕の場合」と「誰にでも」を分けて書くほうが、合う人に長く選ばれます
僕はホームページ制作だけでなく、ふるさと納税の商品企画もやってきました。約34万点の中で最高7位になった商品は、いまも年間2,000〜2,500万円ほどの売上が続いています。これはホームページではなく、商品企画の実績です。
ホームページでも商品企画でも、僕がやっていることは同じです。良いものの良さが、受け取る人にちゃんと届く形を探すことです。
まずは、ご自分の商品やサービスの中から、「中身はいいのに、見た目で損をしている」と思うものを1つ選んでみてください。そして、そこにかけている手間を3つ、紙に書き出してみてください。
自分では当たり前になりすぎて、手間だと思っていないことほど、書き出すのは難しいものです。ごぼうを毎日の一皿にするのにも、僕はいくつもの食べ方を試しました。伝え方も、一度で決まるものではありません。それでも、良いものを良いまま届けたいなら、ここだけは省けないところだと思っています。
体調と仕事の向き合い方については、こちらの記事に書いています。

出典
- Treccani「agrodolce」(イタリア語の辞書。語の成り立ち「agro」と「dolce」・味の説明・酢と砂糖で調理するやり方)https://www.treccani.it/vocabolario/agrodolce/ (2026年10月21日に確認)
- 厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html (2026年10月21日に確認)
