飲食店のブランディング|選ばれる店になる2つの条件と始め方

「飲食店が選ばれる ブランディング 2つの条件」と書かれた水色の背景のサムネイル。左上に道標、右下に折りたたみ椅子に座る男性のイラスト。

※この記事にはプロモーションが含まれています

おいしいのに、なぜか思い出してもらえないお店があります。

今は行くお店を決める前に、Googleマップでクチコミを調べたり、Instagramで料理の写真を見たりするのが当たり前になりました。少し検索すれば近くの店がいくらでも出てくるので、お客さんには選び放題なわけです。

そんな中で、料理が美味しい、接客がいい、雰囲気がいい、手ごろな値段。これだけ揃っていても選ばれる理由にはなりません。近所のお店だって、同じように努力しているからです。

僕はいまホームページの制作をしていますが、もともとはソムリエで、イタリア料理店の店長をやっていました。これまで400件以上のホームページ制作や支援に関わってきて感じるのは、選ばれる店とそうでない店の差は、料理や商品の腕前だけでは決まらないということです。

そこで今回は、飲食店のブランディングをシンプルに整理しつつ、選ばれる店になる2つの条件と、今日からできる4つの手順をお話しします。後半では、業種は違いますが京都のシロアリ駆除業者ヤマト産業さんの実例も紹介します。美容室や整体院、工務店のように、地域でお客さんを迎えるお店のブランディングにも、そのまま役立つ内容です。

目次

飲食店のブランディングとは、ある場面で真っ先に思い出してもらうこと

ロゴや内装を整えることだけが、ブランディングではない

ブランディングと聞くと、ロゴを作り直す、内装をおしゃれにする、制服をそろえる、といった見た目の整え方を思い浮かべるかもしれません。

どれも大事ですが、それは手段の一部です。

僕が考えるブランディングは、「〇〇なら、あの店」と、ほかのお店と区別して覚えてもらうこと。覚えてもらう中身は2つあります。そのお店に行く理由と、ほかのお店ではなく、そこを選ぶ理由です。

たとえば知り合いに「このあたりで、仕事帰りにワインを1杯だけ飲むならどこ?」と聞かれたとき、お客さんの口から店の名前がすっと出てくるかどうか。名前が出てくるなら、そのお店のブランディングはうまくいっています。

飲食店のブランディングは、ある場面で、お客さんに真っ先に思い出してもらえる状態を作ること。そう言い換えてもいいと思います。

お客さんの頭の中に積み上がっていく印象を、資産として考える方法は、こちらの記事でくわしく書いています。

選ぶカードを多く持つ人と、少ない人がいる

お客さんによって、飲食店を選ぶカード(選択肢)をたくさん持っている人と、少ない人がいます。

食への関心が高く外食にお金をかけられる人は自然とカードが増えますし、外食の回数が少なかったり決まったお店にしか行かない人はカードが少なくなります。

カードが少ない人にはその数枚に入れるかがすべてですし、カードが多い人には何枚もの中から1枚を選んでもらえるかの勝負になります。

どちらにしても、選ばれる決め手は、ほかのお店と比べてどれだけ好かれているかです。マーケティングではこれをプレファレンス(ほかと比べたときの、お店の好かれやすさ)と呼びますが、プレファレンスを高めることが、そのまま選ばれる店につながります。

「行きたい」と思った瞬間に、最初に浮かぶお店になる

スマートフォンのホーム画面を思い浮かべてみてください。毎日開くアプリは1ページ目に並び、たまにしか使わないアプリは、何度か画面を横にずらした先のフォルダの中にあります。

何かを開こうとしたとき、最初に目に入るのは1ページ目のアプリです。フォルダの奥のアプリは、入っていることすら忘れられています。

お店も同じです。お客さんが「なにか美味しいもの食べに行きたいな」と思った瞬間に、頭に最初に浮かぶかどうか。このことを第一想起(そのジャンルで、お客さんが最初に思い浮かべるお店や商品のこと)と呼びます。

選ばれる店とは、「行きたい」と思った瞬間に、最初に思い出してもらえる店のことです。

選ばれる店になる2つの条件

では、どうすれば最初に思い出してもらえるのか。僕は、選ばれる店になるには、2つの条件があると考えています。

選ばれる店になる2つの条件
  1. 人の本能に刺さるものがあること
  2. お客さんに、お店を忘れさせないこと

条件1|人の本能に刺さるものがあること

疲れた帰り道に、ふと「なにか美味しいもの食べたいな」と思う。そのとき頭に浮かぶのは、理屈ではありません。本能に近いものです。

同じお客さんでも、石窯で焼いたピッツァの匂いを、無性にかぎたくなる日があります。らーめんの湯気に顔をつっこんで、思い切りすすりたくなる日もあります。旨いマグロが食べたいけれど、今月は予算が厳しいから回転寿司で我慢しようか、と考える日もある。

その日の体調や気分で、食べたいものは変わります。結局のところ、選ぶ瞬間に動いているのは、頭で比べた点数より、体が先に欲しがる感覚なんですね。

だから、お店の側が持っておきたいのは、「こだわりの」「厳選した」という言葉ではありません。匂い、音、湯気、焼き目のように、思い出しただけで食べたくなるものです。看板の一皿を、どんな日のどんな空腹と結びつけて覚えてもらうか、と言い換えてもかまいません。

条件2|お客さんに、お店を忘れさせないこと

どれだけ本能に刺さる一皿があっても、思い出してもらえなければ選ばれません。

一度来てくれたお客さんだって、時間がたてばお店のことを忘れていきます。忘れられてしまえば、次の選択肢からいつの間にか消えてしまうんです。

ここで大事なのは、売り込み続けることではありません。お客さんの日常に、ときどき自分のお店が目に入る状態を作っておくことです。

たとえば季節メニューの知らせや、雨の日の小さなサービスを届けること。来てくれたお客さんに、次回来るきっかけを1つ手渡しておくのもいいですね。

忘れさせない工夫は、そのままリピーターを増やす工夫でもあります。

LINE公式アカウント・Instagram・Googleマップを使って、来店の前からお客さんとつながっておく方法は、こちらの記事にまとめました。

2つの条件は、どちらが欠けても選ばれない

「選ばれる店になる条件」という見出しの図解で、「本能に刺さる」(焼きたてのピッツァの湯気を、男の子が目を閉じてかいでいる)と「忘れさせない」(夕方の帰り道の男の子が、明かりのともったお店を思い浮かべている)の2つの枠が「+」でつながっている。下の帯に「両方そろって思い出される」。

この2つの条件は、セットで初めて機能します。

本能に刺さる一皿があっても、忘れられていれば選ばれません。逆に、名前を覚えてもらっていても、思い出したときに「食べたい」という気持ちが動かなければ、お客さんはほかのお店に流れていきます。

条件1は「何を覚えてもらうか」、条件2は「どうやって覚えていてもらうか」です。先に決めるのは、条件1のほうです。覚えてもらう中身が決まらないまま発信を続けても、お客さんの頭には何も残らないからです。

飲食店のコンセプトは「誰の、どんな場面の一軒か」で決める

コンセプトは、思い出してほしい場面から作る

条件1の「本能に刺さるもの」を決めるとき、軸になるのがお店のコンセプトです。

飲食店のコンセプトとは、「誰の、どんな場面のための一軒なのか」をギュッと短い言葉にしたものなんですね。

たとえば、次の2つの場面を比べてみてください。

「ああ、疲れたな。なんか美味しいもの食べに行きたいな」と思ったとき

「思いもよらない収入があったから、親を連れてレストランに行こう」と考えたとき

同じ「レストランに行きたい」でも、求められるお店はまるで違います。1つ目は、ひとりでふらっと入れて、気取らずに元気の出る一皿があるお店。2つ目は、親を連れて行っても安心できて、少し特別な時間になるお店です。

全部の場面で選ばれようとすると、どの場面でも思い出してもらえないんです。だからこそ、コンセプトは「思い出してほしい場面」から作っていきます。

お客さんの悩みと、まだ誰も応えていないすき間からコンセプトを一文にする手順は、こちらの記事でくわしく書いています。

地域一番店は、ある場面で地域でいちばん先に思い出される店

地域一番店というと、地域でいちばん大きいお店や、いちばんお客さんが多いお店を思い浮かべるかもしれません。

小さなお店が目指すなら、意味を少し変えたほうがいいと僕は考えています。ある場面で、その地域のお客さんがいちばん先に思い出すお店。これなら、席が10席しかないお店でも目指せます。

経営を学ぶ中で、ブランディングは小さな会社のための戦い方だと教わりました。全国ではなく地域で、何でもではなく1つの分野で、「この分野なら、この店」になる。範囲を小さく決めるほど、一番になりやすくなります。

たとえば「商店街で、子ども連れでも気兼ねなく焼き魚の定食を食べられるお店」。範囲をここまで絞ると、比べられる相手はぐっと少なくなります。

選ばれる店づくりの始め方|4つの手順

「選ばれる店づくりの始め方」という見出しの図解で、チェックの付いた4つの項目「市場と競合と強みを調べる」「思い出してほしい場面を決める」「その場面の一皿を前に出す」「忘れさせない接点を続ける」が上から順に並んでいる。下の帯に「場面と一皿から始める」。

選ばれる店をつくる4つの手順をお話しします。

選ばれる店づくりの4つの手順
  1. 市場・競合・自分の店の強みを調べる
  2. 思い出してほしい場面を1つ決める
  3. その場面で「食べたい」が動く一皿を前に出す
  4. 忘れさせない接点を、続けられる数だけ持つ

手順1|市場・競合・自分の店の強みを調べる

最初にやるのは、調べることです。最低限、次の3つは押さえておきます。

市場:この地域で、どんな人が、どんな場面で外食しているか

競合:同じ場面で、お客さんがほかに選べるお店はどこか

自分の店の強み:お客さんが、うちを選んでくれている理由は何か

ここで大事なのは、表をきれいに埋めることではありません。お客さんの心の中、頭の中に入り込むために、お客さんの側から自分の店を見るのが本当の目的です。市場も競合も、自分の店の強みも知らないままでは、お客さんがどんな場面で何を求めているのか見えてきません。

自分の店の強みは、自分で頭をひねるより、いまのお客さんに聞くほうがずっと確かです。常連さん3人に「どうしてうちに来てくれているんですか」と聞いてみてください。お店が思っている強みと、お客さんが感じている良さは、ずれていることがよくあります。

もう少し細かく調べたいときは、調べる項目を5つに分けた5C分析という型もあります。

手順2|思い出してほしい場面を1つ決める

調べた情報から、お客さんに思い出してほしい場面を1つ決めます。

書き方は「誰が、いつ、どんな気持ちのときに」です。「仕事でくたくたになった平日の夜に、ひとりで、ちゃんとした野菜を食べたいとき」のように、様子が目に浮かぶまで書きます。

1つに絞るのは怖いかもしれません。でも、ほかのお客さんを断るわけじゃないんです。看板や発信で真っ先に伝える場面を決めるだけですから。

手順3|その場面で「食べたい」が動く一皿を前に出す

場面が決まったら、その場面で本能に刺さる一皿を選んで、いちばん前に出します。

前に出す場所は、お客さんがお店を調べるときに見るところです。Googleマップのお店の写真、ホームページの最初の画面、Instagramの最初に並ぶ投稿。そこに、決めた場面の一皿が、湯気や焼き目まで伝わる写真で並んでいるかを確かめます。

写真に添える言葉も、「こだわりの」「厳選した」ではなく、場面の言葉にします。「くたくたの夜に、野菜がたっぷり入った熱いスープ」のように、読んだ人が自分のことだと分かる言葉です。

地域のお店が、Googleの検索やAIに名前を出してもらう準備は、こちらの記事にまとめました。

手順4|忘れさせない接点を、続けられる数だけ持つ

最後は、お客さんにお店を忘れさせない接点を決めます。

LINE公式アカウント、Instagram、Googleマップの投稿、手書きの葉書。手段はたくさんあっても、全部やる必要はありません。発信が途中で止まると、「このお店、閉めたのかな」と思われてしまうこともあります。

週に1回でも、止まらずに続けられる接点を1つ持つ。最初はこれで十分です。

届ける内容は、手順2の場面と手順3の一皿に関係するものに絞ります。あれこれ話すより、同じ場面を何度も思い出してもらうほうが、お客さんの頭に残るからです。

実例|業種は違いますが、京都のシロアリ駆除業者ヤマト産業さん

飲食店とは違いますが、選ばれる会社になるために見せ方を作り直した事例があります。京都のシロアリ駆除業者、ヤマト産業さんです。

きっかけは、会社の移転とブランディングだった

ヤマト産業さんの仕事は、もともとほとんどが工務店やハウスメーカーからの依頼でした。取締役社長の中岡さんは、2020年に会社を移転するとき、ブランディングに力を入れたいと考えていたそうです。

中岡さんによると、移転の前のホームページは、開くと最初に舞妓さんの画像が出てくるものでした。伝わるのは「ヤマト産業という会社がある」ということだけだったそうです。

飲食店に置き換えると、看板に店の名前だけが大きく書いてあって、何のお店で、誰のためのお店なのかが分からない状態です。名前は目に入っても、思い出してもらう手がかりがありません。

リニューアルの前は、ホームページへの訪問が100件、問い合わせも月に1〜3件でした。

「誰に、何を、なぜ」を、デザインより先に言葉にした

中岡さんとの対談でも話したのですが、ブランディングというと難しく聞こえても、僕の考えはシンプルで、「誰に、何を、なぜ」です。誰に、何を、なぜ自分たちから買ってほしいのか。これを言葉にするのが先で、デザインはそのあとです。

ヤマト産業さんのときも、ホームページの見た目の話をする前に、シロアリの仕事のこと、お客さんがどんな気持ちで業者を探しているのか、ヤマト産業さんにしかない強みは何かをひとつずつ聞いていきました。この記事でいう、手順1の「調べる」です。

対談の最後に、ホームページの発注で迷っている方へ向けて、中岡さんはこう話してくれました。

かっこいいホームページを作りたいというのではなくて、本当に見ている人に選ばれやすいホームページを作るということであれば、ぜひぞろ屋さんをお勧めします。

何が言いたいかというと、ブランディングの出発点は、見た目のかっこよさではなく、見ている人に選ばれやすいかどうかです。飲食店でいえば、おしゃれな内装をつくる前に、お客さんに思い出してほしい場面と一皿を決めることなんです。

一般のお客さんからの問い合わせが増え、ほぼ全件が成約

リニューアル後、ホームページへの訪問は1,632件に達しました。

もともとは工務店やハウスメーカーとの取引中心だったのが、いまでは一般のお客さんから直接声がかかります。シーズン期は1日に2〜3件。そのほぼ全件が成約につながっています。

中岡さんいわく、お宅へ伺ったときにホームページを見てくれているお客さんが増えたのも、大きな変化だったそうです。

すごいですよね。家に上がる前から、お客さんの頭の中に、ヤマト産業さんのことがきちんと入っている。この記事の2つの条件でいえば、思い出してもらえる中身と、忘れられない見せ方が、そろった状態だと僕は見ています。

もし、移転のあとも「会社があること」だけを伝えるホームページのままだったら、一般のお客さんが家に上がってもらう業者を探すとき、ヤマト産業さんの名前は思い浮かばなかったと思います。

京都のシロアリ駆除業者、ヤマト産業の中岡さんとの対談は、動画でも見られます。

飲食店のブランディングで、よくある3つのつまずき

「何でも美味しい店」を目指してしまう

メニューを増やせばお客さんも増えそうに思えますが、増えるほど思い出してもらえる一皿はぼやけていきます。

条件1でいう、本能に刺さるものが散らばってしまうからです。メニューを減らす必要はありませんが、「この場面なら、この一皿」だけは1つに決めておきましょう。

値段を下げて選ばれようとする

選ばれたいからと値段を下げると、お客さんがお店を比べる物差しは、だんだん値段だけになっていきます。そうなると、もっと安いお店が近くにできたとき、お客さんはそちらへ移っていきます。値段で選んだお客さんは、値段で離れていくからです。

値下げする前に、思い出してほしい場面と一皿がお客さんに伝わっているか、見直してみてください。

強みを、お店の側だけで決めてしまう

お店の人が自信を持っている一皿と、お客さんが選んでくれている理由は、ずれていることがよくあります。厨房でいちばん手間をかけている一皿より、お客さんが何度も頼んでいる一皿のほうが、思い出してもらう入口になることもあります。

迷ったら、手順1に戻って、いまのお客さんに直接聞いてみてください。

自分のお店にしかない強みを言葉にする手順は、こちらの記事でくわしく書いています。

まとめ|選ばれる店は、本能に刺さり、忘れられない店

  • 飲食店のブランディングは、ある場面で、お客さんに真っ先に思い出してもらえる状態を作ること
  • 選ばれる店の条件は2つ。本能に刺さるものがあること、お店の存在を忘れさせないこと
  • 進め方は、調べる・場面を1つ決める・一皿を前に出す・忘れさせない接点を続ける、の4手順

業種は違いますが、京都のシロアリ駆除業者ヤマト産業さんは、ホームページへの訪問100件・問い合わせ月1〜3件だったところから、訪問1,632件、シーズン期には毎日2〜3件の問い合わせが入り、そのほぼ全件が成約するようになりました。会社があることだけを伝える見せ方から、見ている人に選ばれやすい見せ方に変えてからの変化です。

今日やることは1つだけ。お客さんに思い出してほしい場面を、「誰が、いつ、どんな気持ちのときに」の形で、紙に1行書いてみてください。書けたら、その場面でいちばん食べたくなる一皿の名前を、横に書き添えましょう。

本音を言うと、選ばれる店になる近道なんてありません。場面を決めて、一皿を磨いて、忘れられないように届け続ける。地味な積み重ねを続けたお店が、最後に地域で思い出されるお店になります。

お客さんをひとりの人間として、どこまで想像できるか。選ばれる店づくりは、そこから始まります。

思い出してほしい場面を決めるときは、近くのお店と並べて、どこがまだ空いているかが分かると決めやすくなります。お店の情報と、近くの同業のお店のURLを入れると、自分の店の立ち位置を図にしてくれる「ポジショニングマップ生成AI」を、公式LINEで無料でお渡ししています。登録したあと、「マップ」と送ってください。

出典

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